本阿弥光悦の大宇宙
本阿弥光悦の大宇宙
会期 2024年1月16日(火) ~ 2024年3月10日(日)
東京国立博物館
本阿弥光悦は、1558年に刀剣三事(研磨、浄拭〈ぬぐい〉、鑑定)を家職とする室町以来の名門に生まれました。
桶狭間の戦い(1560年)の二年前です。
戦乱の時代を生きた光悦・・・
大坂夏の陣(1615年)の後に家康から高峯の地を拝領しました。(1616年家康没)
光悦が亡くなったのは1637年、島原の乱が始まった年です。
光悦は、熱心な日蓮法華宗の信者でもありました。
「一生涯へつらい候事至てきらひの人」で「異風者」(『本阿弥行状記』)
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国宝 舟橋蒔絵硯箱 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵
張りきった袋のように膨らむ甲盛りの形状において、本作は他とか区別した位置にある。格の高い金地の器面を横断する厚めの鉛板、光悦の書風を示す銀文字とともに「光悦蒔絵」を代表する、圧倒的な存在感を示している。(キャプションから)
本阿弥光悦坐像 伝本阿弥光甫作 江戸時代・17世紀
光悦の顔は、とりわけ耳朶が大きく、目を細め笑顔のように見える。本像の裏面には「似相州星降梅造之光悦像」とあり、日蓮聖人(1222~82)の伝承で知られる「星降梅」の木によって本像が造られたという。(キャプションから)
展覧会の構成です。
第一章 本阿弥家の家職と法華信仰ー光悦芸術の源泉
・本阿弥家と名物刀剣
・「花形美」と「忍ぶ草」の意味
重要美術品 短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形美 志津兼氏 鎌倉~南北時代・14世紀
光悦の指料と伝わる唯一の刀剣。兼氏は正宗の高弟といわれる美濃国(岐阜県)の名工。希少な在銘作で精美な地鉄に躍動的な刀文を焼きいれる。金象嵌の花形見は、能の花筐に由来すると考えられる。(キャプションから)
(刀装)刻鞘変り塗り忍ぶ草 蒔絵合口腰刀 江戸時代・17世紀
「短刀銘兼氏金象嵌花形美」の拵。刻鞘を朱漆で刷毛目塗とし、さらに金蒔絵で忍ぶ草を全体に飾る。この華やかで印象的な意匠は、刀身に金象嵌された花形美の意味と関連していると考えられる。(キャプションから)
・本阿弥光悦ゆかりの地
・鷹峯と本阿弥家の位置関係
『法華経』 第8巻・巻首
開経「無量義経」結経「観普賢経」とあわせて10巻一具が完備する。本経を光悦が寄進した経緯を記した寄進状によれば「三蹟」で知られる小野道風(894~966)による写経という。(キャプションから)
第二章 謡本と光悦蒔絵-炸裂する言葉とかたち
謡や和歌、連歌などを含む文芸を通じて培われた言葉と図像は、当時の人々にどのようにして受け止められたのか。斬新な形態にいたる造形の流れと、謎めいた図像を読み解く豊饒な文学世界からあらためて「光悦蒔絵」の姿を照射する。(本展解説パネルから)
・謡本の絵
・嵯峨本
・光悦と漆芸
・蜂須賀家の旧蔵品
・五十嵐家
第三章 光悦の筆線と字姿ー二次元空間の妙技
多彩な表情をみせる筆線と字姿を通じて能書とうたわれた光悦の生身の表現力をご覧いただきたい。
飛び渡る鶴を金銀泥で描いた料紙に、平安時代に選ばれた三十六歌仙の和歌を書写した一巻。鶴の動きや群れの密度にあわせて巧みな散らし書きを見せ、俵屋宗達筆とされる下絵とともに光悦の書を代表する名品。(展示会場パネル解説から)
重要文化財 鶴下絵三十六歌仙和歌巻 本阿弥光悦筆/俵屋宗達下絵 江戸時代・17世紀 京都国立博物館蔵
・蓮の下絵と光悦の法華信仰
・光悦の書状にみる書風の変遷
・平安古筆と唐紙
・光悦の筆遣いと墨の表現
第四章 光悦茶碗ー土の刀剣
光悦の作陶は、元和元年(1615)に徳川家康から鷹峯を拝領して以来、本格化したと考えられている。一碗一碗かたちや釉調が異なり、それぞれに際立った個性を放つが、緩急の効いた削りや土の質感を活かした独特の施釉に、刀の世界に生きてきた光悦ならではの、鋭敏な意識をうかがうことができる。(本展解説パネルから)
・茶碗の革新 樂家初代長次郎
・今を映す茶碗ー三代道入と光悦
重要文化財 銘 時雨 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 愛知・名古屋市博物館蔵
抑制された形で引き締まって見える。総体に漂う静けさと緊張感を初冬特有の時雨模様にたとえたのであろう。数寄者として知られる森川如春庵(1887~1980)はこれをわずか16歳で手にした。光悦茶碗を代表する名品である。(キャプションから)
重要文化財 赤樂茶碗 銘 加賀 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 京都・相国寺蔵
―HPの解説ー
本阿弥光悦(ほんあみこうえつ・1558〜1637)は戦乱の時代に生き、さまざまな造形にかかわり、革新的で傑出した品々を生み出しました。それらは後代の日本文化に大きな影響を与えています。しかし光悦の世界は大宇宙(マクロコスモス)のごとく深淵で、その全体像をたどることは容易ではありません。
そこでこの展覧会では、光悦自身の手による書や作陶にあらわれた内面世界と、同じ信仰のもとに参集した工匠たちがかかわった蒔絵など同時代の社会状況に応答した造形とを結び付ける糸として、本阿弥家の信仰とともに、当時の法華町衆の社会についても注目します。造形の世界の最新研究と信仰のあり様とを照らしあわせることで、総合的に光悦を見通そうとするものです。
「一生涯へつらい候事至てきらひの人」で「異風者」(『本阿弥行状記』)といわれた光悦が、篤い信仰のもと確固とした精神に裏打ちされた美意識によって作り上げた諸芸の優品の数々は、現代において私たちの目にどのように映るのか。本展を通じて紹介いたします。
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