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2023.07.14

私たちは何者?ボーダレス・ドールズ 渋谷区立松濤美術館

20230711

私たちは何者?ボーダレス・ドールズ 

会期 2023年7月1日(土)~8月27日(日)
前期:7月1日(土)~7月30日(日)
後期:8月1日(火)~8月27日(日)

渋谷区立松濤美術館

本展は、そんな日本の人形の一括りにはできない複雑な様相を、あえて「芸術」という枠に押し込めず、多様性をもつ人形そのものとして紹介することで、日本の立体造形の根底に脈々と流れてきた精神を問うものです。(HPの解説から)

良く練られた企画(内容)で興味津々で鑑賞してきました。

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(チラシ表)村上隆 Ko²ちゃん(Project Ko²) 1/5原型制作:BOME(海洋堂) 平成9( 1997)年 油性塗料、アクリル絵の具、グラスファイバー、鉄 個人


展示構成です。
(図録の解説を引用しています)

第1章 それはヒトか、ヒトガタか
人形、すなわち、ヒトガタ(ヒトのカタチ)とは何か、その問いと向き合うことからこの旅を始めよう。
日本人にとっての人形には、人体をただ単に写したものにとどまらず、生命が宿る第2のヒトやカミとして存在している一面がある。
そんな魂を宿すために作られた人形を紹介する。
展示資料:人形代、サンスケ、オシラサマ ほか
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人形代 平安京跡出土 平安時代前期 京都市指定文化財 京都市蔵

第2章 社会に組み込まれる人形、社会をつくる人形
ここでは、人形の他にも、宮廷社会で愛された御所人形や男児の健康や出世を願う武者人形といった社会に組み込まれ、社会を作った人形を紹介する。
展示作品:雛人形、御所人形、武者人形 ほか
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立雛(次郎左衛門頭) 江戸時代・18~19世紀 木、紙、胡粉彩色 東京国立博物館

第3章 「彫刻」の誕生、「彫刻家」の登場
ここでは、近代以降に理論形成していく「彫刻」に生き続け、受け継がれていく人形の造形性を紹介する。
展示作品:小島与一、森川杜園、平櫛田中、農民美術運動 ほか
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川路農美生産組合 伊那踊人形 1920~1930年代 木、着彩 上田市立美術館

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小島与一 三人舞妓 大正13(1924)年 陶、着彩 アトリエ一隻眼

第4章 美術作品としての人形 ―人形芸術運動
「彫刻」とは区別されることで「美術」の周縁に置かれた人形が「美術」のひとつとして地位を確立したのは昭和時代初期であった。この中心となったのが「人形芸術運動」と総称される人形作家たちの活動であった。
展示作品:久保佐四郎、平田郷陽、堀柳女 ほか

第5章 戦争と人形
戦時の重要な人形としてとりあげられるのは《慰問人形》だろう。この素朴な人形は、太平洋戦争時代に特攻隊などの戦地の兵士に送られたものであり、戦地に赴かないおもに少女たちによる手作りの人形だった。
展示作品:池田修三、高浜かの子、慰問人形 ほか

第6章 夢と、憧れと、大人の本気と
ここでは、身の回りに美的なものを置くことで、生活を豊かにするような意図を持った芸術家による人形や商業製品でありつつも少女たちのアイコンとして憧れの的となった人形を紹介する。
展示作品:竹久夢二、河村目呂二、中原淳一 ほか

第7章 まるでそこに「いる」人形 ―生人形
幕末から明治時代初期にかけて、市井の人々の生活の中にあった人形のひとつが、生人形であった。生人形が「美術」という分野で語られていくのは1990年代からであった。市井の人々の中にあった生人形は、現在的な視点で「美術」となり「博物館」「美術館」という場所で展示されることによって再認識されるようになる。
展示作品:安本亀八、松本喜三郎 ほか
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松本喜三郎 素戔嗚尊 明治8(1875)年 木、胡粉、布 桐生市本町四丁目自治会

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安本亀八(三代) 生人形 徳川時代花見上臈 明治時代・20世紀 木彫、桐塑、胡粉彩色、毛髪、紙張子 東京国立博物館

第8章 商業×人形×彫刻=マネキン
展示作品:荻島安二、向井良吉

第9章 ピュグマリオンの愛と欲望を映し出せ!
展示作品:ラブドール ほか

第10章 ヒトガタはヒトガタ
人形を巡る旅は、現代に生きる作家たちの人形で幕を閉じます。
展示作品:天野可淡、工藤千尋、BOME、松﨑覚、村上隆、四谷シモン
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BOME リセットちゃん 平成30(2018)年 レジンキャスト 株式会社海洋堂 


―HPの解説ー
日本の人形といったら、みなさんは何を思いおこすでしょうか。お雛様?呪い人形?それともフィギュアでしょうか?はたまた、生人形や蠟人形、マネキンも、日本の人形を語る上で欠かせないものでしょう。
このように日本の人形は、もはや、体系化することが難しいほどに多様な種類があふれているのです。
そして、日本の人形の歴史を振り返れば、民俗、考古、工芸、彫刻、玩具、現代美術と、実にさまざまなジャンルのボーダーラインを縦横無尽に飛び越えながらあり続けていることがわかります。分野を問わない、曖昧な存在を武器として生きながらえてきた唯一無二の造形物が人形といえるでしょう。
本展は、そんな日本の人形の一括りにはできない複雑な様相を、あえて「芸術」という枠に押し込めず、多様性をもつ人形そのものとして紹介することで、日本の立体造形の根底に脈々と流れてきた精神を問うものです。

何かに縛られることなく軽やかに境界を越えていく日本の人形は、普段、私たちが囚われている「美術」、あるいは「芸術」という概念にさえ揺さぶりをかけます。私たちは一体何を「芸術」とし、何を「芸術」ではないとしているのか。それは果たして正しいのか。人形をとおし「芸術」そのものを考える機会となるでしょう。

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