« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »

2023.03.28

戸谷成雄 彫刻

Img_20230328_0001 Img_20230328_0002

(画像はクリックで拡大表示になります)


「戸谷成雄 彫刻」は、
埼玉県立近代美術館で開催されています。

会期 2023年2月25日(土)~5月14日(日)

日本の現代美術を代表する戸谷成雄(1947~)の都道府県立の公立美術館としては約20年ぶりの個展です。

本展は3つのコーナーに分けての展示です。
・大学在学中から初個展までの作品
20230308_20230328161601

・代表作「森」「地霊」に至るまでの1970年代末から1980年代前半の作品変遷をたどります。
Img_1883

・1990年代から2000年代にかけて背策された「《境界》から」、「ミニマムバロック」、洞穴体」シリーズ、そして最新シリーズ「視線体」が一堂に会します。
20230311_20230328161801

この展覧会は撮影可(条件あり)です。
撮った写真をまとめてみました。



作品ごとの解説は会場内にはありません。
「戸谷成雄  彫刻 作品リスト」の解説を読みながらの鑑賞です。

20230301_20230328112201 
《器Ⅲ》1973年 木 愛知県立芸術大学
ベトナム戦争の悲惨な情報が飛び交う状況下で、何もすることができない自分自身ーいわゆる「見ざる、聞かざる、言わざる」的態度を内省した自画像です。(作品リストから)

20230307_20230328150001
《地下へⅡ》1984年 石膏、アクリル、ドローイング

20230302_20230328113501
《森の象の窯の死》 1989年 木、灰、アクリル 東京都現代美術館

Img_1873
 《森Ⅸ》2008年 木、灰、アクリル ベルナール・ビュッフェ美術館
1980年頃からチェーンソーで木の表面を刻んだり傷つけたりして、「森」シリーズの制作を始めました。
幼いころの戸谷さんは山の中の小さな村で育ち、森に対いて様々なイメージを持っていました。(会場パンフレットから)

20230304_20230328143301
《双影体Ⅱ》2001年 木、灰、アクリル 愛知県美術館
戸谷は2000年頃に「ミニマルバロック」という造語を生み出しました。ミニマルな直方体に複雑な襞が錯綜する本作は、中央を起点に鏡像的に造形が構築されています。(作品リストから)

20230305_20230328145201
20230306_20230328145301
《洞穴体Ⅲ》2010年 木、灰、アクリル 
表面に小さな穴が開いていて裏面に続いています。裏面の塊は人型をイメージして作られています。(会場パンフレットから)

―HPの解説ー
日本の現代美術を代表する彫刻家・戸谷成雄は愛知県立芸術大学で彫刻を専攻したのち、1970年代より本格的な活動を開始しました。彫刻というジャンルが批判や解体にさらされていく同時代の美術潮流のなかで、戸谷は彫刻の起源や古今東西の彫刻表現を探究し、彫刻とは何かを問い続けました。木材の表面をチェーンソーで彫り刻む「森」シリーズの発表を機に80年代から国内外で高く評価され、ヴェネチア・ビエンナーレ(1988年)をはじめ数多くの国際展に参加してきました。90年代より「《境界》から」、「ミニマルバロック」シリーズ、2000年代より「洞穴体」シリーズ、近年には「視線体」シリーズなど優れた作品を手がけ、精力的な活動を続けています。

本展では「森」シリーズなど代表作を含む約40点によって、半世紀にわたる実践を振り返ります。さらに「森」に至るまでの初期の模索にも焦点を当て、初公開となる卒業制作の人体彫刻や資料類をあわせて紹介し、戸谷成雄の創作の原点を検証します。



| | コメント (0)

2023.03.23

自然という書物 15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート

20230311_20230323184401 20230312_20230323184401

「自然という書物 15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」は、
町田市立国際版画美術館で開催されています。

会期 2023年3月18日(土)〜5月21日(日)

15世紀から19世紀までの西洋のナチュラルヒストリー(自然誌/博物学)とアート(美術/技芸)のつながりに注目し、人間が表してきた自然のすがた・かたち(画像)を展覧します。(HPから)

展覧会の構成は以下の通りです。
一部の作品が撮影可でした。
(画像はクリックで拡大表示になります)

第1章 想像と現実のあわい―15、16世紀

第1節 神の視座から人間の眼へ
20230313_20230323180101
ハルトマン・シエーデル(1440-1514)著 《年代記》(ラテン語) 1493年7月12日刊 木版 明星大学
ニュルンベルクの歴史を記述した「年代記」は「天地創造」から始まり ます。父なる神は「手」だけで表されることも。最後は宇宙の頂点に座しています。その中心にある地上界は上下逆さに描かれており、読者ではなく神の視点から天地が正しく見えるようになっているのです。創造主を中心 としたキリスト教の世界観が反映されています。(キャプションから)

第2節 寓意と象徴
20230301_20230323112101
アルブレヒト・デューラー(1471-1528)『大受難伝』より《キリストの鞭打ち》1494年頃 木版
デューラーの描いたキリストの受難の場面にも毛むくじゃらの犬が描かれています。静かにこちらを見つめる犬の近くには、作者のモノグラム (組み 合わせ文字) が刻まれています。作者の存在を想起させる一種のキャラク ターとして、デューラーはこの犬を登場させたのでしょう。この犬と豊かな髪と髭をたくわえた自分の姿とを重ね見ていたのかもしれません。(キャプションから)

第3節 自然の蒐集ー植物
20230302_20230323113501
レオンハルト・フックス(1501-1566)著《植物誌》(ラテン語)バーゼル:ミヒャエル・イシングリン 1542年刊 木版、一部に手彩色 東京薬科大学

第4節 自然の蒐集ー動物
20230303_20230323114401
フェッランテ・インペラート(1550頃-1625頃)著《博物宝典》1集 ナポリ:コンスタンティーノ・ヴィターレ 1599年刊 木版
ナポリの薬種商インペラートは様々な自然物を蒐集していました。その品々は一部屋に保管されており、出品作はその様子を表わしたもの。 1599年にインペラートが刊行した博物誌を飾っていた木版画です。天井にまで展示された自然物は、種類によって正確に分類するというよりも、見栄えや装飾性に重きを置いた配置となっているようです。また語らう人々や愛玩犬の存在から、この部屋が一種の社交空間になっていた ことがうかがえます。(キャプションから)

第2章 もっと近くで、さらに遠くへ―17、18世紀

第1節 想像から経験へ
20230304_20230323130501
パシリウス・ベスラー(1561-1629)著《アイヒシュテットの庭園》 2葉 (初版1613年) エングレーヴィング、手彩色 コンサーズ・コレクション東京
ニュルンベルグの薬種商ベスラーは、アイヒシュテットの侯爵司教の造園と管理を任ぜられた人物でした。「アイヒシュテットの庭園」は、実際の 観察にもとづく描写とエングレー ヴィングによる迫真的な表現、そして丁寧かつ鮮やかな彩色、さらには紙面の大きさも相まって、目をひく植物画 となっています。(キャプションから)

第2節 キルヒャーの世界
20230305_20230323131901
アタナシウス・キルヒャー 著 《磁石、 あるいは磁気の術に ついて》 (ラテン語) 1654年刊(第3版、 初版1641年刊)  エッチング、エングレーヴィング、 木版 町田市立国際版画美術館
アタナシウス・キルヒャー著《シナ図説》(ラテン語) 1667年刊 エッチィング、エングレービング 町田市立国際版画美術館

第3節 ひろがる世界

第3章 世界を分け、腑分け、分け入る―18、19世紀

第1節 細かく、鮮やかに
20230307_20230323133901
ジョン・グールド(1804-1881)《キヌバネドリ科鳥類図譜》(英語) 1875年刊 リトグラフ、手彩色 放送大学附属図書館

第2節 世界を股に

第3節 自然を身近に
20230309_20230324104901
エルンスト・ヘッケル(1834-1919)《自然のが芸術形態》(ドイツ語)6点 ライプツイッヒ/ウイーン:書誌学研究所 1899~1904年刊 リトグラフ(多色) ポーラ美術館
ヘッケルはイタリアでの調査旅行で放散虫類の新種を発見し博物学者としての道を歩み始めます。

第4章 デザイン、ピクチャレスク、ファンタジー

第1節 自然の形ーデザイン
20230312_20230323174601
アルフォンシュ・ミュシャ(1860-1939)《主の祈り》(フランス語) 1899年刊 リトグラフ(多色)、ヘリオグラビュール 栃木県立美術館
オーブリー・ビアズリー(1872-1896)画 トマス・マロリー(1408頃-1471)著《アーサー王の死》(英語)3冊 1893,94年刊 ラインブロック 町田市立国際版画美術館

第2節 自然の姿ーピクチャレスク
20230308
ジョン・マーティン(1789-1854)《フレッシュウオーター・ベイ》 1985年頃 油彩・キャンバス 郡山市立美術館

 20230311_20230323173001
ロバート・ジョン・ソーントン(1768-1837)編《フローラ神殿》(英語)14点 ロンドン:ロバート・ジョン・ソーンントン 1798~1807年刊 銅板 

第3節 自然を詠うーファンタジー
 20230310_20230323171901
エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)《フラワーブック》8点 1905年刊(原画1882~1898年)リトグラフ(多色)、手彩色 郡山市立美術館 

 

―HPの解説ー
「自然という書物」展は、15世紀から19世紀までの西洋のナチュラルヒストリー(自然誌/博物学)とアート(美術/技芸)のつながりに注目し、人間が表してきた自然のすがた・かたち(画像)を紹介する展覧会です。

 古くから人間は自然物や自然環境―動物や植物、肉眼では捉えることができない微小な生物、地球上の地勢や地質などを記録してきました。言葉と絵によって描写された自然の似姿の普及に、活字と版画などの印刷技術が大きな役割を果たしてきたことも特筆すべきでしょう。さらに自然は美術の霊感源となってきました。美術の表現手法が、自然の図解に用いられてきたことも見逃せません。

 ナチュラルヒストリーとアートのつながりによって西洋の紙上に築かれてきた、自然のすがた・かたちのビオトープ(生息空間)ともいうべき世界を、この機会にぜひご堪能ください。

 

| | コメント (0)

2023.03.19

未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品― 田中親美模 平家納経(模本)

未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品― 田中親美模 平家納経(模本)

トーハク本館 2室

展示期間 2023年2月28日(火) ~ 2023年4月9日(日)

 

平家納経 (模本)彩箋墨書ほか
田中親美模(1875~1975)摸
大正~昭和時代・20世紀、原本:平安時代・長寛2年(1164)
原本:国宝・厳島神社像

(画像はクリックで拡大表示になります)

20230201_20230318174301

20230202_20230318174401

20230205_20230318175401
 
20230203_20230318174601

20230204_20230318175501

20230206_20230318174601

20230207_20230318174701

20230208_20230318174701

Img_1808

20230211_20230318181501

20230210_20230318174801


ーHPの解説ー
国宝「平家納経」(広島・嚴島神社蔵)は、平清盛(1118 ~ 81)が平家一門と共に制作し、平安時代・長寛2年(1164)に嚴島神社へ奉納した『法華経』ほか全33巻の経巻です。そのほとんど全てに金銀箔が散らされ、極彩色の下絵や摺文様が施されていて、表も裏も豪華に荘厳された装飾経の代表作です。
大正9年(1920)、嚴島神社宮司の依頼を受けて、益田鈍翁や高橋箒庵など当時の財界人・数寄者が「平家納経」模本制作のための寄附をしました。そして、模本制作の第一人者である田中親美(茂太郎、1875 ~ 1975)が家族や弟子と協力して、5年の歳月をかけて見事に作り上げたのです。
これほどの装飾を一つ一つ写すことは、驚異的な技と言えるでしょう。また、親美は、原本の筆を動かす速さまで計算したかのように自然な筆遣いで経文を書写しています。平安時代に平清盛が結集した美意識の塊を、800年以上の時を超えて田中親美がすべて再現した至宝の一品です。

 

| | コメント (0)

2023.03.15

没後190年 木米 

20230303_20230315140701
会場のバナー
風門の中に王義之が満面の笑みを浮かべ風門の下の鵞鳥を眺めている。


没後190年 木米は、
サントリー美術館で開催されています。

会期 2023年2月20日(水)~3月26日(日)

20230301_20230315112601 20230302_20230315112601
(この画像(チラシ)はクリックで拡大表示になります)



江戸時代後期の京都を代表する陶工で画家、そして文人の木米の展覧会です。

展覧会の構成は次の通りです。(展示会場の解説、キャプションを引用しています)
第一章 文人・木米、やきものに遊ぶ
木米は十代の頃から偉大な文人高芙蓉のもとで篆刻などを習い、また古器物の鑑賞を好み文人としての修行を積みました。
・文人とは
木米が生きた時代の日本における文人とは、中国の文人の「詩書画三絶(詩と書と画が共に優れていること)」の世界に憧れを持ち、中国の学問や芸術の素養を身に着けた人たちです。彼らは独自の文人ネットワークを作り、全国規模で活発に交流しました。そして、お互いの個性を尊重しながら、思い思いに文人としての生き方を追求したのです。

20230312_20230315114001
《三彩鉢》 木米 一口 文化4~5年(1807~1808) サントリー美術館
黄・緑・紫で塗り分けられ、中国、清時代の景徳鎮窯の素三彩が手本と思われる。

20230313_20230315114101
《染付名花十友図三段重箱》 木米 一合 江戸時代19世紀 京都国立博物館
文人画の画題としても好まれた「名花十夜」という主題に基づき、重箱の表面に黒ずんだ染付で十種類の花を描く。

・木米金沢へ

・茶の湯のやきき物と木米

・木米の師、奥田潁川(1753-1811)

・潁川門下、仁阿弥道八(1785-1855)

・潁川門下、欽古堂亀佑(1765-1837)

・木米の轆轤の師岡田久太(?-1832)

・同時代の名工、永楽保全(1795-1854)

第二章 文人・木米、煎茶を愛す
煎茶流行の時代、木米は涼炉(湯を沸かす焜炉)や急須、煎茶碗などを作り、三十代の頃からすでに好評を得ていました。中国陶器を中心にいろいろな古陶磁器の要素うを自由に換骨奪胎する木米の「遊び」は、煎茶器にも遺憾なく発揮されました。

20230316
《金襴手花鳥文煎茶碗》 木米 五口の内 江戸時代19世紀 早稲田大学會津八一記念博物館(富岡重憲コレクション)
赤地金襴手の蓮池水禽文の煎茶碗とひとくちに言っても、木米は一揃えごとに茶碗の形を少しずつ変えながら制作しています。

20230314_20230315113901
《南蛮急須》 木米 一合 江戸時代19世紀 個人蔵
木米のいう「南蛮」とは、「茶碗における南蛮物と同様に焼締めの肌をもつ海外製のやきもの」であろうか。

・上田秋成

・文字を纏う煎茶器
木米は、表面にたくさんの文字を彫ったり描いたりした煎茶器を制作しました。文字の内容は、お茶を主題とした中国の詩、あるいは中国茶の名産地や歴史や茶器の伝記などです。こうした作品には、陶工であると同時に煎茶を愛好し若いころ篆刻を学び、そして読者を愛した木米という文人の個性が強く表れています。

20230317
《白泥詩文涼炉》 木米 一基 文政7年(1824) 個人蔵
涼炉の側面に茶詩を丁寧に彫刻している。


第三章 文人・木米と愉快な仲間たち
親友で画家の田能村竹田(1777-1835)のほか、儒学者の頼山陽(1780-1832)僧の雲華(1773-1850)蘭方医の小石元端(1784-1849)といった人々は、木米が晩年に親交した当代一流の文人でした。年若い彼らの中にあって、文字に通じた「識字陶工」として、博識で知的ユーモアにあふれた木米は、あたたかな尊敬の眼差しを向けられていたようです。

20230315_20230315132801
《木米喫茶図》 田能村竹田 文政6年(1823) 一幅 個人蔵
本作は、竹田が初めて木米に出会った時の様子を描いた木米の肖像画である。木米は急須をかけた涼炉を傍らに置き、小さな煎茶碗を両手に抱えほっと一息ついたような姿をしている。 

・木米の交友関係

第四章 文人・木米、絵にも遊ぶ
木米の絵画の特徴は、主題の大半を山水図で占めること、そして何より「為書」すなわち誰かのために書いた作品が多いことが挙げられます。為書のある作品は、いわば、その人物に宛てた木米の私信のようなものです。

・絵の中に遊ぶ

20230311_20230315113101
重要美術品 《化物山水図》 木米 一幅 文政12年(1829) 個人蔵
文政12年10月、木米63歳の作。牡蠣の殻のような異様な山頂を、滝壺付近に座した高士が見つめている。木米自身が本作を「化物山水」と命名した。

 

ーHPの解説ー
江戸時代後期の京都を代表する陶工にして画家である文人・木米(もくべい・1767~1833)は、京都祇園の茶屋「木屋」に生まれ、俗称を「八十八」と言います。木屋あるいは氏の「青木」の「木」と、八十八を縮めた「米」に因んで「木米」と名乗りました。また、中年に耳を聾したことに由来する「聾米」のほか、「龍米」「九々鱗」「青來」「百六山人」「古器觀」などの号があります。
木米は、30代で中国の陶磁専門書『陶説』に出会い、これを翻刻しつつ本格的に陶業に打ち込みました。その作品は、優れた煎茶器から茶陶まで、多岐にわたります。熱心な古陶磁研究を土台に広い視野をもち、古今東西の古陶磁の美と美を、因習を越えて結びつけ新しい美をひらいていく創造性が木米のやきものにはあらわれています。
一方、木米がとりわけ50代後半から精力的に描いた絵画は、清らかで自由奔放な作風が魅力的です。その多くは友人への贈り物とした山水図であり、交友関係や木米自身の人柄を想像しながら鑑賞すると、より一層味わい深く感じられます。
さて、文人・木米を知る上で欠かせないものは、その壮大な遺言でしょう。「これまでに集めた各地の陶土をこね合わせ、その中に私の亡骸を入れて窯で焼き、山中に埋めて欲しい。長い年月の後、私を理解してくれる者が、それを掘り起こしてくれるのを待つ」と言ったと伝わります(田能村竹田『竹田荘師友画録』)。
本展では、当時の文人たちが憧れた木米の個性あふれる屈指の名品を一堂にご紹介いたします。木米の陶磁、絵画、交友を通して、その稀有な生涯と木米芸術の全貌に触れる貴重な機会となります。


| | コメント (0)

2023.03.10

ますむらひろしの銀河鉄道の夜―前編

ますむらひろしの銀河鉄道の夜―前編は、
八王子夢美術館で開催されています。

会期 2023年1月28日(土)〜3月26日(日)

20230301_20230309144201 20230302
(この画像はクリックで拡大表示になります)

宮沢賢治原作の『銀河鉄道の夜』は37歳で早世した宮沢賢治が執筆していた未完の作品です。病床でも推敲を続け、一次稿、二次稿、三次稿、四次稿とされる草稿が残されています。
南欧を思わせる街を舞台にした、少年ジョバンニとカムパネルラの物語。幼なじみの二人はケンタウム祭の夜、銀河鉄道で不思議な旅をします。

この展覧会では、漫画(猫をキャラクターとした)とともに宮沢賢治の原作から文章を抜粋して掲載しています。

1、午後の授業
ジョバンニと幼なじみのカムパネルラが学校で銀河について教わってます。答えを知りながらも二人はなぜか黙ってしまいます。

20230306

2、活版所
放課後ジョバンニは活版所に向かいます。ここで、印刷する文字をひとつひとつ並べる仕事をしているのです。

3、家
ジョバンニは病気のお母さんと二人で暮らしています。漁師のお父さんはしばらく帰っていません。

4,ケンタウルス祭の夜
今日はお祭りの日です。街に出ると、ザネルたち意地悪なクラスメートがジョバンニをからかいます。

20230303
ジョバンニは、口笛を吹いているようなさびしい口付きで檜のまっ黒にならんだ町の坂を降りて来たのでした。

20230305
その真ん中に円い黒い星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。ジョバンニはわれを忘れて、その星座の図に見入りました。
 
20230301_20230309144201
(この画像はクリックで拡大表示になります)
いちばんうしろの壁には、空じゅうの星座をふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図がかかっていました。
ほんとうに、こんなような蠍だの勇士だの空にぎっしり居るのだろうか
ああ、ぼくはその中をどこまでも歩いてみたいと思ったりして、しばらくぼんやり立って居ました。

5、天気輪の柱
ジョバンニはひとりで、天気輪という柱のある丘を登ります。野原を見渡すと汽車の音が聞こえてきました。

20230304
もう時間だ行こう
こんなにしてかけるなら、もう世界中だってかけれると、ジョバンニは思いました。

6、銀河ステーション
ジョバンニは、いつのまにか小さな列車に乗っていて、すぐ前の席で窓の外を見ていた子供はカムパネルラでした。

20230307
(この画像はクリックで拡大表示になります)
気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っている小さな列車が走り続けているのでした。ほんとうにジョバンニは夜の軽便鉄道の小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。


7、北十字星とプリオシン海岸
立派な十字架を通り過ぎて海岸近くの停車場に着きました。二人が降りると、そこでは学者が化石の発掘をしています。

8、鳥を捕る人
車室に戻った二人のとなりに座ったのは鳥をつかまえる商売をしている人でした。鶴や白鳥などのいろいろな鳥です。

9、ジョバンニの切符
車掌がやってくると、鳥を捕る人とカムパネルラはすぐに切符を取り出します。ジョバンニは切符を持っていたのでしょうか。

 

「ジョバンニとカムパネルラをのせた銀河鉄道の旅は続く」
というコメントで、この展覧会は終了ですが・・・
後編の開催の予定はいまのところないそうです。(平成5年度の予定にはない)


ホワイエ奥の部屋に置かれたパネルは撮影可です。
(以下の画像はクリックで拡大表示になります)
20230313
ジョバンニとカムパネルラ

20230314
ジョバンニとカムパネルラ

20230315
ケンタウルス祭の夜の街

20230311
ケンタウルス祭の夜の街

20230312_20230309152801
天の川、天気輪?、ジョバンニ

ーHPの解説ー
『銀河鉄道の夜』。宮沢賢治の数々の作品の中でもひときわ輝く謎めいた孤高の名作に、漫画界の異才ますむらひろしが挑み、大作『銀河鉄道の夜・四次稿編』(原作・宮沢賢治、作画・ますむらひろし)が生まれました。信仰と大地と共に生きた宮沢賢治と独特のファンタジーと猫のキャラクターで知られる漫画家ますむらひろし、それぞれの世界観が交錯し、昇華された美しくも切ない物語が読者の心に降り注がれます。
ますむらひろし最新作の『銀河鉄道の夜・四次稿編』は、全4巻・約600頁からなり、本展覧会では、そのうち既刊の第1巻・第2巻の漫画生原稿と創作資料、メモ、ラフスケッチなどを展示し、ますむらひろしによる「銀河鉄道の夜」の世界を紹介します。

 

| | コメント (0)

2023.03.07

映画『ココ・アヴァン・シャネル』

”マリー・ローランサン が描いた《マドモアゼル・シャネルの肖像》 1923年 オランジュリー美術館蔵”は、
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の、
マリー・ローランサンとモードでも展示されています。

この作品のエピソードは、ローランサンの展覧会では度々紹介されてきました。

シャネルは本作の出来上がりに満足せず、描きなおしを要求した。
ローランサンンも譲歩しなかったため、シャネルは本作を受け取ることはなかった。
「シャネルはいい娘だけどオーヴェルニュの田舎娘よ。あんな田舎娘に折れてやろうとは思わなかった」とローランサンは・・・

さて、シャネルを扱った映画は何本かあります。
その中で私が過去に観たのは『シャネル&ストラビンスキー』

『シャネル&ストラヴィンスキー』予告編
ストラヴィンスキーの才能にほれ込んだシャネルは、自分の別荘に彼と家族を住まわせることに・・シャネルとストラビンスキーの恋を描く。

2009年製作/119分/フランス
原題:Coco Chanel & Igor Stravinsky
配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ


そして、先月『ココ・アヴァン・シャネル』をAmazon primevideoで観ました。

田舎のナイトクラブからパリへ、そして世界へ──コネクションも財産も教育もない孤児院育ちの少女が、世界のシャネルになるまでの物語。

"ワーナー ブラザース 公式チャンネル"の予告編です。

2009年製作/110分/フランス
原題:Coco avant Chanel
配給:ワーナー・ブラザース映画

映像化されたシャネルのイメージに、どのような感想を持つか?ですね。

| | コメント (0)

2023.03.04

マリー・ローランサンとモード

202302001
「マリーローランサンとモード」は、
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されています。

会期 2023年2月14日(火)~4月9日(日)
※3月7日(火)休館

1月31日に営業を終了した東急百貨店本店土地の再開発計画に伴う、
4月10日以降のBunkamuraの活動について

20230201_20230227182801 20230202_20230227182901
20230203_20230227182901 20230204_20230227183001
(この画像(チラシ)はクリックで拡大表示になります

狂騒(レザネ・フォル)の時代のパリ
第一次世界大戦による未曽有の破壊と殺戮を経た後の1920年代のパリは、後に「レザネ・フォル(狂騒の時代)」と呼ばれた。この熱気渦巻くパリに確かな足跡を残した二人の女性がいた。マリー・ローランサンとガブリエル(ココ)シャネルである。

展覧会の構成は以下の通りです。
第一章 レザネ・フォルのパリ
・ローランサンとパリ社交界の女性たち
20230211_20230301171401
マリー・ローランサン 《マドモアゼル・シャネルの肖像》 1923年 油彩/キャンヴァス オランジュリー美術館
シャネルは本作の出来上がりに満足せず、描きなおしを要求した。
ローランサンンも譲歩しなかったため、シャネルは本作を受け取ることはなかった。
「シャネルはいい娘だけどオーヴェルニュの田舎娘よ。あんな田舎娘に折れてやろうとは思わなかった」とローランサンは・・・

20230215
マリー・ローランサン 《ピンクのコートを着たグールゴー男爵夫人の肖像》 1923年頃 油彩/キャンヴァス パリ、ポンピドゥー・センター
ニューヨークの銀行家の一人娘であったエヴァ・ガバートは、ナポレオン・グールゴー男爵と結婚しパリの社交界の中心人物となった。
この肖像画を気に入り、すぐさまもう一点を注文。その作品がマリー・ローランサンの出世作となった。

202302133
マリー・ローランサン 《黒いマンテラをかぶったグールゴー男爵夫人の肖像》 1923年頃 油彩/キャンヴァス パリ、ポンピドゥー・センター

・エティエンヌ・ド・ボーモン伯爵の舞踏会

・シャネルを身にまとう社交界の女性たち



第2章 越境するアート
・ローランサンとバレエ・リュス「牝鹿」
ローランサンの作品さながらのバレー「牝鹿」 ニジンスカ、ブーランクら多彩な個性が終結
20230221_20230301180101
マリー・ローランサン 《牝鹿と二人の女》 1923年 油彩/キャンヴァス ひろしま美術館

・シャネルとベレエ・リュス「青列車」
コクトー、ピカソ、シャネルによる当時の流行を詰め込んだ浜辺のバレー「青列車」

・ローランサンと装飾美術

・ローランサンとニコル・グルー

・アール・デコ博 1925

第3章 モダンガールの登場

・1910年代:ポワレからシャネルへ
20230225_20230302175101
ジョルジュ・ルパップ 《ポール・ポワレの夏のドレス 『ガゼット・デュ・ボン・トン』誌より》 1913年 ポショワール、紙 島根県立石見美術館

・シャネルの帽子店

・ローランサンと帽子の女たち
202302223
マリー・ローランサン 《羽根飾りの帽子の女、あるいはティリア、あるいはタニア》 1924年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館

・1920年代:モダンガールの誕生
20230226_20230302175601
ガブリエル・シャネル 《デイ・ドレス》 1927年頃 神戸ファッション美術館

・1930年代:フェミニンへの回帰

・1930年代のローランサン


エピローグ:蘇るモード
エピローグのみ撮影可でした。
(以下の画像はクリックで拡大表示になります)
20230223_20230301181801
マリー・ローランサン 《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》 1922年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館

20230224_20230301182301
(中央)カール・ラガーフェルド、シャネル 2011年春夏 オートクチュールコレクションより
《ピンクとグレーの刺繍が施されたロング・ドレス》
2011年 パリ、パトリモアンヌ・シャネル
1983年から30年以上にわたりシャネルのデザイナーを務めたカール・ラガーフェルド(1933-2019)
2011年の春夏オートクチュール・コレクションでは、ローランサンの色使いから着想を得たことをラガーフェルド自信が公言しています。


| | コメント (0)

« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »