諏訪敦「眼窩裏の火事」
諏訪敦「眼窩裏の火事」は、府中美術館で開催されています。
会期 2022年12月17日(土)~2月26日(日)
(チラシはクリックで拡大表示になります)
展覧会の構成です。
第1章 棄民
死を悟った父が残した手記を手掛かりに・・・
敗戦直後、旧満州の日本人難民収容所で母と弟を失った、少年時代の父が見たものとは。
父を描いた《father》シリーズ
祖母をテーマにした《棄民》シリーズ
father 1966 パネルに油彩、テンペラ 佐藤美術館寄託
1996年、スペインに留学中だった諏訪は、父が脳腫瘍で倒れたとの報を受けて一時帰国します。
HARUBIN 1945 AUTUMN 2015/2021 パネルに鉛筆、顔料、水彩 個人蔵
第2章 静物画について
静物画にまつわる歴史を遡行し制作された作品の数々を展示。
作品の中には、陽炎のような揺らめきや輝くような光点が描かれたものがあります。これは諏訪が近年悩まされている、閃輝暗点という症状を写したものです。モチーフを凝視しキャンパスを熟視し眼を酷使すると、血流異常によってこうした視覚像が引き起こされるそうです。(解説から)
目の中の火事 2020 白亜地パネルに油彩 東屋蔵
2019年に諏訪は東屋から、現代の自社のガラス器を17-18世紀のヨーロッパ製のガラス器とともに描いてほしい、との依頼を受けます。
第3章 わたしたちはふたたびあう
人間を描くとはいかなることか?絵画にできることは何か?
諏訪は、歴史的な出来事や今は亡き人の肖像といった不可視な事象を描こうとします。
制作には長大な時間を必要とします。それは視覚と認識を深めるために必要な時間です。
描こうとする人物の取材が困難にさらされることもあります。
たどり着いたのは「描き続ける限り、その人が立ち去ることはない」という確信にも似た感覚であり「絵画を経由して対象との再会を果たす」ということでした。(解説から)
Mimesis 2022 キャンバス、パネルに油彩 作家蔵
Mimesis(模倣の意)舞踏家大野に触発され諏訪は絵画を、川口はパフォーマンスを展開しました。画中では川口の姿が幾重にも描かれています。(解説から)
―HPの解説ー
緻密で再現性の高い画風で知られる諏訪敦は、しばしば写実絵画のトップランナーと目されてきました。
しかしその作品を紐解いていくと彼は、「実在する対象を、目に映るとおりに写す」という膠着した写実のジャンル性から脱却し、認識の質を問い直す意欲的な取り組みをしていることが解ります。
諏訪は、亡き人の肖像や過去の歴史的な出来事など、不在の対象を描いた経験値が高い画家です。丹念な調査の実践と過剰ともいえる取材量が特徴で、画家としては珍しい制作スタイルといえるでしょう。彼は眼では捉えきれない題材に肉薄し、新たな視覚像として提示しています。
今回の展覧会では、終戦直後の満州で病死した祖母をテーマにしたプロジェクト《棄民》、コロナ禍のなかで取り組んだ静物画の探究、そして絵画制作を通した像主との関係の永続性を示す作品群を紹介します。
それらの作品からは、「視ること、そして現すこと」を問い続け、絵画制作における認識の意味を拡張しようとする画家の姿が立ち上がってきます。
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