版画×写真 ― 1839-1900
「版画×写真 ― 1839-1900」は、町田市立国際版画美術館で開催されています。
会期 2022年10月8日(土)~12月11日(日)
19世紀初めに登場して急速に発展していった写真と、写真の登場によって大きな影響を受けた版画。
両者の深い関係とエピソードを、当時のカメラ ・関連機材の展示を交えて分かりやすく丁寧に解説した版画美術館ならではの企画展です。
本展は一部の作品を除いて撮影可です。
(画像はクリックで拡大表示になります)
展覧会の構成は次の通りです。
I章 写真の登場と展開
Ⅰ-1.写真以前とタゲレオタイプ
カメラ・オブスクラ 横浜市民ギャラリーあざみ野
写真用カメラの原型となった光学装置。
ジョン・アダムス・ホイップル キャロライン・オルムステッドの肖像 1885 タゲレオタイプ 横浜市民ギャラリーあざみ野
1枚しか撮影できず傷つきやすいタゲレオタイプは、額縁や布張りのケースに入れて保管された。
タゲレオタイプは、カメラ・オブスクラに映る画像を金属板に定着させる写真術。
オノレ・ドーミエ 『ことわざと格言』第3図 我慢はロバの取柄 リトグラフ 国立西洋美術館
二人の男性がタゲレオタイプカメラを構えている。ロバは愚か者、愚鈍で強情な人間のたとえで、露光時間がとんでもなく長い初期のタゲレオタイプを皮肉ている。(キャプションから)
Ⅰ-2.カロタイプから湿版方式へ
ナダール氏のスタジオでの日本遣欧使節団(ナダール氏の写真に基づく)
1862.4.26『モンド・イリュストレ』誌掲載 小口木版 個人蔵
江戸幕府使節団のパリ訪問を報じる記事の図版。
ナダール《第1回幕府遣欧使節団》1862 鶏卵紙 東京写真美術館
Ⅱ章 実用と芸術をめぐる争い
Ⅱ-1.複製という役割
ジャン=ロベール・プチ 原画:フランソワ・ブーシェ 手足をのばした裸婦 18世紀 クレヨン法エッチィング
ラインンのプリンス・ルパート 原画:ピエトロ・デラ・ヴァッキア 旗手 1658 メゾチィント
Ⅱ-2.写真は芸術か?
ギュスターヴ・ル・グレイ 1856-59 鶏卵紙 東京都写真美術館
海と空をそれぞれ個別に撮影し、二つのネガを組合わせて撮影した。(キャプションから)
ロベール・ドマシ― ヴィーナスの愛 c.1900(1983のプリント) プラチナプリント 横浜美術館
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 写真家セスコー 1896 リトグラフ 国立西洋美術館
Ⅲ章 競い合う写真と版画
Ⅲ-1.肖像:プライベートとパブリック
アンリケル=デュポン 原画:ポール・ドラルーシュ パストレ侯爵 1838 エッチィング
j.ヴァンネルソン ネイラー夫妻 c.1850 タゲレオタイプ 横浜市民ギャラリーあざみ野
作者不詳 ネイラー夫妻の肖像 19世紀前半 ミニアチュール、手彩色 横浜市民ギャラリーあざみ野
オノレ・ドーミエ 写真を芸術の高みにまでひきあげるナダール 1862.5.25『ブールヴァール』紙掲載 リトグラフ 国立西洋美術館
Ⅲ-2.風景:記憶と芸術
ルイ・アタラン サン・ジョルジュ・ド・ボシェルヴィル修道院柱廊の廃墟
Ⅲ-3 報道:主観と客観
ベルタル(シャルル・アルベール・ダルヌー) クールベ君 1871.4.30『グルロ』紙掲載 リトグラフ、手彩色 大佛次郎記念館
シャルル・マルヴィル パリ市庁舎(コミューン後) 1871 卵黄紙 東京都写真美術館
―HPの解説ー
写真の発明は世界を大きく変えました。とりわけ大きな影響を受けたのが、何世紀にも渡ってイメージを写し伝えるという同じ役割を担ってきた版画です。
19世紀の版画と写真の関係は、これまで対立ばかりが語られてきました。しかし大量印刷ができず撮影に長い時間を要すなど技術的に不十分な点が多かった初期の写真には、版画によって支えられる部分も多く、両者は補いあう関係でもありました。やがて写真が技術的にめざましく発展していくなかで、両者は競いあいさまざまな表現を生み出していくことになります。
本展は世界初の写真術であるダゲレオタイプが公表された1839年を起点に、写真の技術が向上し印刷技術として実用化されていく19世紀末まで、版画と写真が支えあい競いあった関係を探るものです。ヨーロッパを中心に、版画と写真に加え、カメラや撮影機材をはじめとする関連資料180点を紹介いたします。
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