野口哲哉「this is not a samurai」
野口哲哉「this is not a samurai」は、
ポーラミュージアムアネックスで開催されています。
会期 2022年7月29日(金)~9月11日(日)
鎧兜をモチーフに人間の内面性や多様性を問いかける人気美術家野口哲哉の作品は、様々な展覧会でよく見かけます。
ここ、ポーラミュージアムアネックスでも2018年の夏に『野口哲哉 〜中世より愛をこめて〜』が開催されました。
~~野口さんは次のように述べています~~
つい最近まで、人はある条件下では肉体を損耗させないように鎧兜を着ていました。それは死を飾る為ではなく、 生きて帰る為の工夫です。
生還をすべく人の命を護り続けた外殻は、状況に応じて様々に姿を変えつつ、 やがて攻撃手段に対応できなくなり衰退しました。
この人工的に発生した4000年に及ぶ進化のシュミュレーションは、自然界での生物淘汰の法則と不思議な符合を見せています。
鎧兜の事を、環境が人に与えた殻だとするならば、 人は束の間、 外殻を得て特異な進化を見せていたという事になります。
それはまるで海に生きる海老や蟹のように。人間に備わった生存本能に起因するこの現象は、人々をまったく奇妙な姿へと変えてしまいました。
人が外骨格化するという事実は僕の好奇心を掻き立て、僕はアートの視点からそれを再構築したいと強く願うようになりました。(展示会場のパネル解説から)
楽しい作品と添えられたコメントに「にんまり」「しんみり」です。
(画像はクリックで拡大表示になります)
Small sweet passion ~南北朝の花~ 2018 ミクストメディア
よく考えると、私たちは人生の大半を無表情で過ごしています。もっとよく考えると「喜怒哀楽」はごく限定的に表れる感情で、人は 悲しくも楽しくもないニュートラルな感情で毎日を暮らしている事に気が付きます。名前のない表情や、名前のない感情は、人という広大な器を満たす重要な要素だと、僕には感じられます。
Shoulder bag and Sneaker and SAMURAI 2013 ミクストメディア
THE MET 2020 ミクストメディア
POLA Dot or snowball ~青地白丸紋入小袖着用男性坐像~ 2020 アクリル・ボード
Someone's Portrait -the snow dots 2022 紙 アクリル絵具
黒糸で威したる具足の上に、縹の地に白星並べたる大印を袖に打つなり。人びと此れをみて夏の雪星とて、敢えて向かい近づく者なし。
シャネル侍着甲坐像 2009 ミクストメディア
The gradation -河津伊豆守佑邦像 2014 ミクストメディア
Talking Head 2010 ミクストメディア
WOODEN HORSE 2020 ミクストメディア 高松市美術館蔵
Man in the egg 2021 ミクストメディア
デンマークの巨匠、アルネ・ヤコブセンによって考案されたエッグ・チェアーは、人を包み込む卵のイメージの源泉です。
Grand Helm & Cheap Japanese 2019 ミクストメディア
deep sleep 2016 ミクストメディア
Convex mirror 凸画鏡の画像 2020 アクリル・ボード
『月と太陽が互いを照らすように、喜びと悲しさの両方を僕は見つめていきたいです。
ご覧お疲れさまでした。』と書いてありました。
展示会場風景(部分)
―HPの解説ー
野口哲哉は、鎧兜をモチーフに人間の内面性や多様性を問いかける美術作家です。2021年の巡回展をはじめとした国内外での展示開催や海外ブランドとのコラボレーションなど、その活躍は多岐に渡り、見る人に感情を押し付けないニュートラルな作風はあらゆる世代や国籍の人々に広く受け入れられています。
野口は樹脂や化学繊維といった現代的な素材を使って作品を制作しています。それは鉄や漆などの素材、あるいは鎧兜といったモチーフに付きまとう、「こうあるべき」という原理主義的な事柄に対する、野口独自のアイロニーでもあります。
鎧武者だけではなく、人間が誰しも持つ暴力性や生々しさ、現代人だけではなく、どの時代の人間も持つ優しさや美しさ、野口の作品は心地よい緊張感と静かなユーモアが交錯する、新しい形の現代美術と言えます。
本展では、野口の作品の中から代表作の立体や平面など約 40 点と、本展のために制作された新作も併せて展示します。
作品に込められた優しさと悲しさ、人間への好奇心にあふれた世界を紹介します。
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