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2022.05.28

彫刻刀が刻む戦後日本―2つの民衆版画運動 工場で、田んぼで、教室で みんな、かつては版画家だった

彫刻刀が刻む戦後日本―2つの民衆版画運動
工場で、田んぼで、教室で
みんな、かつては版画家だった

会期 2022年4月23日(土)~7月3日(日)

町田市立国際版画美術館

この美術館ならではの企画展といってもいいかもしれません。
民衆版画運動の大きなな流れを、政治・社会との関連も含めて丁寧に検証しています。
それぞれの作家の位置づけも改めて確認できました。

(以下の画像はクリックで拡大表示になります)

ーHPの解説ー
戦後日本で展開した2つの民衆版画運動を紹介します。1つは中国の木版画運動の影響で版画による社会運動と版画の普及を目指した戦後版画運動。もう1つは、全国の小中学校教員が学校教育のなかで版画を広めた教育版画運動です。約400点の豊富な作品と資料を展示し、これまであまり知られることのなかった版画史の一側面に光を当てます。
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展示構成は以下の通りです。
1章 中国木刻のインパクト 1947-
中国美術を範とする戦後版画運動は、近代化以後、西洋美術に学んできた日本美術界の中で特異な美術運動となりました。(展示解説から)
1-1 焼け野原の神戸と東京から
1-2 日本で紹介された中国木刻
1-3 中国木刻の巡回展と版画運動の芽生え

2章 戦後版画運動 時代に即応する美術 1949-
日本版画運動協会は1949年10月に中国文化研究所内で設立されました。
彼らの制作背景には、平和を求めると同時に主権を回復したものの米軍基地が拡張し文化も急激にアメリカ化が進むなど、日本の自主性や独立性が回復しないことへの抗議の思いがありました。(展示解説から)
2-1 日本版画運動協会設立
2-2 プロレタリア美術、漫画から版画へ
2-3 労働運動の中へ、農民運動とともに
2-4 平和を求めて
1952年「血のメーデー事件」
太平洋ビキニ環礁沖水爆実験・第五福竜丸事件

3章 教育版画運動と「生活版画」 1951-
日本版画運動協会の会員も教育版画運動に協力していきます。彼らも社会を揺るがす事件や争議の現場に出かけて製作するだけでなく、生活の中の喜びや身近な場で起こった問題を問う作品を発表していくようになります。(展示解説から)
3-1 作文と版画で描くリアリズム
3-2 2つの民衆版画運動の交差「生活」とリアリズム

4章 ローカルへ グローバルへ 版画がつなぐネットワーク
教育版画は当初はプロの作品に付随して海外に紹介されましたが、日本教育版画協会の活動が軌道に乗ると、独自で国際交流を行っていきます。さらに日本を代表する美術教育団体のひとつとして、国際会議にも参加しました。
また、日中国交正常化後。1980年代に日本と中国を行き来しやすくなると、作家や教育の人的交流が活発化していきます。(展示解説から)
4-11950年代 草の根の文化運動
4-2 海外との交流 中国との交流 1950年代前半
4-3 1952年 ニューヨークとアメリカでのネットワーク
ソ連展
平和を運ぶ「白い鳩」 

5章 ライフワークと表現の追求 
日本版画運動協会に加わっていた作家の多くは、1950年代前半よりも政治と距離を持つようになります。さらに運動体で共通のテーマを持ち事件を追いかけるよりも、作家同士のネットワークを追及していくようになっていくのです。(展示解説から)

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鈴木賢二《母と子》1961 木版・紙   《署名》1960 木版・紙

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小口一郎《鉱毒に追われて》1974 木版・ポスターカラー・紙 小口一郎研究会
1 治水か破水か 2 移住民の出発 3 股を没する雪の中を 4 馬鈴薯を植えつけたが

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小野忠重《工場》1950 木版・紙 町田市立国際版画美術館蔵

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油井正次《日本人は日本のコメで》1992 木版・紙 個人蔵

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小林貴巳子 私たちの先生を返してー実践女子学園の斗いー 1964 木版・紙 大嶋裕子氏蔵

6章 教育版画運動の開花 1950年代-90年代
これまで顧みられることの少なかった教育版画に刻まれた光景は、時代と社会を写す鏡であり、教師と子どもたち両者の視点が合わさった集合体が見た「もう一つの戦後日本」といえるでしょう。(展示解説から)
6-1 日本の子どもたちに版画を
6-2 全国の版画文集・民話版画集・絵本・紙芝居
6-3 共同制作に描かれた地域と子どものこころ

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東京都府中市立府中第八小学校6年生20名《新宿西口駅前》1970 木版・紙
府中市立府中第八小学校

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神奈川県川崎市東大島小学校 版画クラブ5年生6名 石田彰一 《日本民家園》
1974 木版・紙 川崎市立東大島小学校
 
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東京都東久留米市神宝小学校卒業生有志23寧(指導:細田和子) {『は生きている(キッズゲルニカ国際子ども平和壁画)』1999木版・ロール紙 細田和子氏蔵 

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8点組作品のうち、
《天馬と牛と鳥が夜空をかけていく》
《大きな花の太陽から花が降る》
宮崎駿監督作品『魔女の宅急便』の劇中画にインスピレーションを与えた作品だそうです。(画像の上)

青森県八戸市湊中学校養護学級約15名(指導:坂本小九郎) 『虹の上を飛ぶ船・総集編(2)

※5章、6章は一部の作品を除いて撮影可です。(条件あり)


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