特別展 春日神霊の旅 -杉本博司 常陸から大和へ
今私は、私の遺作と位置付ける「小田原文化財団 江の浦測候所」に春日社を招魂をするにあたり、神護景雲二年、常陸から大和への旅の途次、心霊がこの地をお通りになった故事に思いを馳せ、この展覧会を企画することで、私の心の旅路をもたどれるのではないかと思う。この展覧会は私がいちばん見てみたい展覧会なのだ。(本展のチラシの「春日心霊の旅に寄せて」最終部分から)
春日神鹿像 鎌倉時代 公益財団法人小田原文化財団
春日若宮社伝来とされる木彫の春日神鹿像。発見時には本体部分のみが残存しており、杉本博司の発案により、現代美術家の須田悦弘氏が角、鞍、榊を補作し、すでに入手していた春日の宮の本地仏である可能性が高い文殊菩薩縣仏を取り付けている。杉本による立体鹿曼荼羅と言えよう。(本展解説より)
会場では、春日神鹿像の上に春日若宮曼荼羅(軸)が掛けられています。
春日若宮曼荼羅 鎌倉時代 小田原文化財団
春日神社のみを描く異例の春日曼荼羅。
(画像はクリックで拡大表示になります)
『特別展 春日神霊の旅 -杉本博司 常陸から大和へ』は、
中世歴史博物館 神奈川県立 金沢文庫で開催されています。
会期 令和4年1月29日(土)~3月21日(月・祝)
展覧会の構成は次の通りです。
序章 神々のすがたー杉本博司『華厳滝』と『那智滝』
第一章 春日社景・鹿曼荼羅と古神宝ー春日信仰の世界
第二章 鹿島立ちー常陸から大和へ
第三章 春日の神と仏ー貞慶・信円・明恵ー
第四章 春日若宮ー新たな神の出現ー
十一面観音立像 1躯 (前田青邨、白洲正子旧蔵)平安時代 小田原文化財団
十一面観音を本地仏とする祭神として代表的なものに白山神社と春日四宮売神があげられる。本像を白山神社または、春日神社の本地仏と想定するのも一案であろう(本展の解説から)
十一面観音の周囲に角柱の上に乗せた8基の『海景五輪塔』(杉本博司)が添えられています。
地蔵菩薩立像・春日神鹿像 鎌倉時代 個人蔵
白の春日神鹿像の背に地蔵菩薩が立ち、春日三宮天児屋根命の本地仏として造立されたもの(本展解説から)
春日権現記絵 巻十六解脱上人事 鎌倉時代 宮内庁三の丸尚蔵館 国宝
春日権現記絵は制作にあたり解脱上人貞慶による鎌倉時代前期の「御社験記」「笠置上人之旧記」を参考にしているとされることから収録される貞慶生前の説話の多くが、その記録を参考にした可能性が高い。一方、巻十六は「解脱上人事」として貞慶と春日信仰をめぐる説話が収録される。(本展解説から)
・須田悦弘作品『朝顔』が油注(竹製)にいけられていました。
その景色が素晴らしかったです。
油注;春日大社に多数奉納された燈籠に燈油を差すために使われた道具。
ーHPの解説ー
春日大社は神護景雲二年(768)に、奈良盆地の東に位置する御蓋山の麓に造営されました。その祭神は第一殿が武甕槌命、第二殿が経津主命で、それぞれ常陸国(現茨城県)鹿島神宮、下総国(現千葉県)香取神宮から降臨されたとされます(いわゆる「鹿島立ち」)。すなわち春日大社は平城宮鎮護の守護神ながら、東国とも大変所縁があります。また春日大社は藤原氏の氏神とされ、氏寺である興福寺と密接な関係を持ちながら、我が国の神仏への信仰の中核を成してきました。一方、鎌倉時代以降、東国仏教の拠点となった称名寺・金沢文庫には、膨大な仏教書である聖教が伝来しますが、その中には奈良ゆかり、とりわけ春日大社・興福寺に関するものが多数含まれており、両社寺の信仰を考えるうえで見逃せないものであることが知られています。 このたび神奈川県立金沢文庫では、小田原市に「江之浦測候所」を平成二十九年に開館した、公益財団法人小田原文化財団と共催し、東国所縁ともいえる春日信仰を紹介する展覧会を開催いたします。同財団は、世界的に著名な現代美術作家である杉本博司氏(文化功労者、高松宮殿下記念世界文化賞受賞)の文化活動を広く紹介する財団です。杉本氏は日本の歴史・文化にも造詣が深く、同財団には杉本氏によって収集された春日信仰を中心とする神道美術作品も多数所蔵されます。 本展覧会では、春日大社やゆかりの社寺のご宝物に加え、称名寺・金沢文庫、小田原文化財団の史料や作品も紹介することにより、実は東国所縁でもある春日大社への信仰を広くご紹介いたします。
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