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「フォトジャーナリスト W.ユージン・スミスの見たものー写真は真実を語る」は、フジフィルム スクエアで開催されています。
会期 2021年11月5日(金)~25日(木)
京都国立近代美術館所蔵のW. ユージン・スミスの写真コレクション「アイリーン・スミス・コレクション」284点より、選りすぐりの名作約60点を展示し、ユージン・スミスの全仕事を凝縮したミニ回顧展になっています。
展覧会の構成は以下の通りです。
1941-1942 初期作品
1943-1945 第二次世界大戦
1948 カントリードクター
1949 アルベルト・シュヴァイツァー
1950 大英帝国
1950-1951 スペインの村
1951 助産婦
1955-1956 ピッツバーグ
1971-1975 水俣
(以下の画像(チラシ)はクリックで拡大表示になります)

(以下は、本展キャプションからの引用です。)
《楽園への歩み》1946年
(ユージン・スミスの展覧会によく展示される作品で、私も大好きな作品)
沖縄戦での負傷により入院後も自宅での療養生活を余儀なくなくされ、スミスは肉体的に写真家として復帰できないかもしれないという絶望の中にいた。しかい、それを救ったのが1940年に結婚した当時の妻カルメンとの間に生まれた子どもたちだった。裏庭で遊んでいた二人の子ども、ケヴィンとワニータが明るい場所へ歩みだそうとする瞬間をとらえたこの作品を、スミスは戦後はじめてシャッターを押した写真だと語っている。スミスが戦争での精神的ダメージから立ち直る第一歩、そして写真家としての復帰を記念する一枚となった。
《カントリー・ドクター:無題(負傷した子供とセリアー医師)》1948年
1947年、スミスは沖縄戦での負傷者により2年近い療養生活を経てようやく「ライフ」に復帰した。しかし肉体的に大きなハンデを負ったスミスはもはや戦場には行けず、新たな報道写真のスタイルを目指すことになる。
1984年、医療社会制度が政府の課題となっていた。アメリカでは、地方の医療環境の改善が求められていた。「ライフ」誌は実態を調査すべく、田舎の医師の日常についてのフォト・エッセイをスミスに依頼した。
《スペインの村:治安警備隊》 1950/51年
スペインがフランンコ独裁政権下でのファシスト体制であった1949年「ライフ」誌は表向きは、スペイン国内の食料供給を有利に進めるための取材だと申し入れていたが、スミスは「スペインの町に潜り込んで、フランコ体制がもたらす恐怖と貧困をレポートしたい」と考えていた。
フォトエッセイを芸術として完成させ《カントリー・ドクター》と並ぶスミスの名作となった。
《助産婦:無題》1951年
「ライフ」1951年12月3日号に掲載されたフォト・エッセイは大反響を呼び一般の読者からはたくさんの寄付が寄せられた。1953年その資金をもとにモード助産婦が待ち望んだクリニックの開設が実現いている。
《アルベルト・シュバイツァー》、コロラド州アスペン》1949年
近代的な医療を受けられないアフリカの人々を救おうと献身的に活動するシュバイツァーは世界的な名声を得ていたが、スミスが実際に見たのは、自分の理想を実現しようと苦悶する一人の老人の姿だった。
《水俣:無題(水俣湾の魚》1972年
本作は、スミスと当時の妻であるアイリーン・美緒子・スミスの共同プロジェクトである。二人は水俣に住み込み、地元の住民から受け入れられ、3年間にわたる取材を行う。水俣についてのフォト・エッセイ「排水管からの死の流れ」はライフ誌1972年6月2日号に掲載され、大きな反響を呼んだ。
ーHPの解説ー
FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)では、京都国立近代美術館所蔵の写真コレクション「アイリーン・スミス・コレクション」より、フォト・ジャーナリズムの歴史に大きな足跡を残したアメリカ人写真家 W. ユージン・スミスの作品展を開催いたします。
W. ユージン・スミス(1918-1978)は、1930年代から50年代、フォト・ジャーナリズム全盛の時代に『ライフ』誌をはじめとする数々のグラフ雑誌を舞台に活躍した伝説のフォトジャーナリストです。常に被写体の側に自分を置き、ヒューマニズムの視点で撮影された情熱的な写真は、報道写真のあり方を問い直し、多くの人々の心を揺さぶり続けてきました。「フォト・エッセイ」と呼ばれる、複数の写真と短い解説文によって誌面を構成する表現形式は、スミスの卓越した撮影技術やプリント技術、高い美意識によって芸術として完成され、《カントリー・ドクター》(1948年)、《スペインの村》(1950-1951年)、《慈悲の人シュヴァイツァー》(1954年)、《ピッツバーグ》(1955-1956年)など、多数の記念碑的な傑作が世に送り出されました。
スミスは日本とも縁が深い写真家です。取材パートナーであり伴侶でもあったアイリーン・美緒子・スミス氏とともに、1971年から3年にわたり熊本・水俣に移住し、有機水銀による公害の実情を取材した写真集『水俣』は、2020年に製作された映画『MINAMATA(原題)』(監督:アンドリュー・レヴィタス/主演:ジョニー・デップ/アメリカ/2020年、日本では2021年9月公開)の原話として、近年再び注目を集めています。
本展は、京都国立近代美術館の協力を得て、同館所蔵のW. ユージン・スミスの写真コレクション「アイリーン・スミス・コレクション」より、選りすぐりの名作約60点を展示するものです。同コレクションは、アイリーン・美緒子・スミス氏が厳選し、長年にわたり手元に保管してきた作品群で、全284点で構成されています。スミスの写真家としての活動の全容をほぼ網羅し、そのプリントの大部分が、スミス自身が手がけた貴重なもので、写真家ユージン・スミスの真の姿を伝える、内容、質ともに最高水準のコレクションとなっています。
スミス自身の手がけた重厚で美しいオリジナルプリントは、写真の原点を見つめ、写真の本質を改めて考えるきっかけを与えてくれることでしょう。京都国立近代美術館所蔵の「アイリーン・スミス・コレクション」が東京で公開されるこの希少な機会に、W. ユージン・スミスの真の姿をどうぞご覧ください。
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