クールベと海 展― フランス近代 自然へのまなざしは、
パナソニック汐留美術館で開催されています。
会期 2021年4月10日(土)~ 6月13日(日)
クールベは22歳の時に初めて見たノルマンディの海景を繰り返し描きました。
「ついに海を見た地平線のない海を。それはとても奇妙なものであった」
本展はクールベの連作「波」を中心に、クールベが1865年以降に集中的に描いた海景画のなかから11点を最終章で展示しています。
第1章では、故郷であるスイスの国境に近いオルナンの土地の風景を描いた作品を展示。同時代の風景画家の作品も併せて展示しています。
第2章は、故郷で狩猟もしていたクールベの自然の中の動物を描いた作品が展示されています。同時代のバルビゾン派が描いた動物の作品を合わせて展示してクールベの個性を見ていきます。
第3章は、クールベ以前の海景画として18世紀から19世紀にかけての自然への眼差しの転換期に描かれた作品を展示しています。
第4章は、クールベと同時代を生き互いに影響を受けた、また影響を与えたであろう画家の作品を展示しています。治療の一環として考えられるようになる海水浴、社交場としての海の風景(当時の水着など)も紹介しています。
全展示を通して、クールベの政治的、画家としての姿勢・活動も解説されています。
画家として社会的な地位を得た晩年。パリコミューンのさなかある事件の首謀者として投獄され、多額な賠償金を課せられます。
スイスに亡命した クールべは賠償金返済に追われながら描き続けますが58歳で人生を閉じます。
第1章 クールベと自然―地方の独立
ギュスターヴ・クールベ 《フランシュ=コンテの谷、オルナン付近》 1865年頃 油彩・カンヴァス 茨城県近代美術館
本作は画家の生まれ故郷織るオルナン近郊の村を描いたものである。石灰石質の白っぽい岸壁を背景に、村の真ん中を流れるルー川に沿って並ぶ家々がそのまま描かれたいる。岩肌の表現にはパレットナイフが用いられており、この土地特有の岩のマティエールを見事に表現している。また、本作に見られる明るく軽やかな筆触は、この頃画家が交流を持った印象派の画家たちの影響によるものだろう。(キャプションから)
第2章 クールベと動物―抗う野生
ギュスターヴ・クールベ 《狩の獲物》 1856-62年頃 油彩・カンヴァス 個人蔵
クールベが1857年のサロンに出品した狩猟画の唯一の縮小版。分け前として猟犬に獲物の一部を与える前の儀式を表したものだと思われる。この儀式では、仕留められる動物を讃えるための曲がホルンで演奏される。ここでは、野生の動物が獲物でありながらも敬意を示すべき存在として表されている。中央の木に寄りかかる狩人にはクールベの自画像との類似が指摘されている。(キャプションから)
第3章 クールベ以前の海―畏怖からピクチャレスクへ
第4章 クールベと同時代の海―身近な存在として
クロード・モネ《アヴァルの門》油彩・カンヴァス 島根県立美術館
ギュスターヴ・カイユボット《トュールーブルの別荘》1882年 東京富士美術館
ウジェーヌ・ブーダン 《浜辺にて》 油彩・カンヴァス 個人蔵
第5章 クールベの海―「奇妙なもの」として
ギュスターヴ・クールベ《波》1870年 オルレアン美術館
本作は、クールベが1870年のサロンに出品した《嵐の海(波)》(オルセー美術館)の縮小ヴァリエーションである。前景には岸辺に打ち上げられた小舟が観者の視線を集めるように置かれている。中景には、岸に打ち付けられて白く泡立つ波がパレットナイフによって質感豊かに描かれている。後景継には、鮮やかな青の空色が雲の合間から覗き見え、画面全体を明るく照らしている。(キャプションから)
ギュスターヴ・クールベ《エトルタ海岸、夕日》1869年 新潟県立美術館・万世島美術館
1986年のエトルタ滞在時に描いた一連の「海の風景画」連作の中でも、クールベはこの地の特徴的な断崖をモティーフとした作品を8点ほど描いており、本作はそのうちのひとつ。本作で断崖は左端に、その先端部分のシルエットのみが描かれ、画面の中央には水平線に沈みゆく太陽が、陽光のオレンジやピンクに染まる水面や雲とともに描かれている。クールベの「海の風景画」連作は、モネにも大きな影響を与えた。(キャプションから)
ーHPの解説ー
9世紀フランスを代表するレアリスムの巨匠ギュスターヴ・クールベ(1819−1877)。あるがままの現実を描くことで、既存の政治や美術制度に敵対的な態度を表明した一方で、故郷フランシュ=コンテ地方の大自然や動物、22歳の時に初めて目にしたノルマンディーの海を繰り返し描き、その鋭い洞察力や高い技術力が評価されました。
本展では、こうしたクールベの風景画家としての側面に焦点をあて、とりわけ画家が1860年代以降に集中的に取り組んだ「波」連作を中心に紹介します。さらに、クールベ以前より表象されてきた畏怖の対象としての海、同時代の画家ブーダンやモネが描いたレジャーとしての海もあわせて展覧し、海との距離がより身近なものとなった当時において、レアリスムの巨匠クールベが捉えた海の風景画の特異性を探ります。
出品作品は、国内作品にフランスのオルレアン美術館が所蔵する《波》も加わった、約60点の作品によって構成されます。同時代の画家たちが描いた海景画の中でも、とりわけ「奇妙」に映るクールベの、迫力ある海の描写をご堪能ください。
Internet Museum
パナソニック汐留美術館「クールベと海展 -フランス近代 自然へのまなざし」
最近のコメント