企画展「上田薫」
企画展「上田薫」は、
埼玉県立近代美術館で開催されています。
会期 2020年11月14日(土)~2021年1月11日(月・祝)
上田薫は、描く対象物の写真を撮って外形をトレースし、写真を見ながら彩色するという技法で制作しています。
展示映像から・・・
(この投稿の最後に張り付けた動画です)
「小学校以前からですね」
「他の事はできないけれども」
「絵だけ描かせておけば こいつは天才だって言われたぐらい」
「物心ついた頃 もう絵を描いていたんだよ」
「僕の絵はリアリズムじゃないんですよ」
「リアリズムの有名な絵描きが」
「私は天使は描かないと」
「なぜなら天使が見えないからだと言ったんですね」
「それと同じように 僕は目に見えないものを描いてきた」
「だから僕はリアリズムでないということは確か」
「僕は天使も見えないし」
「卵が落ちるところも見えない」
「クールベはリアリズムで」
「僕がスーパーリアリズムだってこと」
展覧会の構成は次の通りです。
第1章 「リアル」の前史
東京藝術大学卒業制作の《自画像》(1954年)から、自らの表現を模索していた1960年代終わりころまでの作品が展示されています。
第2章 スタイルの確立
対象をただひたすらリアルに描く。
キャンバスには背景もなく、対象と自らのサインだけ。
上田流リアリズムの出発点である、1970年代前半までの作品を展示。
「貝殻だけを描く」ことから始まりました。
第3章 「時間」を描く
リアリズム絵画に独自の境地を開いた上田は、多様なモティーフを次々と手がけていきます。1970年代には、溶けかかるアイスクリームやスプーンに水あめ、はちみつ、ジャム、生たまごシリーズなどの一連の作品を制作するようになります。
上田は「モチーフは最初物であったが、やがてそれは現象へと移っていく」と説明している。
《ジェリーのスプーンC》1990年 油彩、キャンバス 埼玉県立近代美術館蔵
《生たまごB》1976年 油彩・アクリル、キャンバス 東京都現代美術館蔵
《生たまごA》1975年 油彩・アクリル、キャンバス 群馬県立近代美術館蔵
第4章 「光」を描く
「時間」を描くことに成功した上田は、次のモティーフに泡やシャボン玉を選びました。
透過や反射、屈曲といった光の性質への関心は、コップやビン、液体、川の流れといった新たなモティーフにつながっていきます。
《あわD》1979年 油彩・アクリル、キャンバス
《シャボン玉O》1982年 油彩・アクリル、キャンバス
《コップの水G》1985年 油彩・アクリル、キャンバス 相模原市蔵
《午後の番組B》1991年 油彩・アクリル、キャンバス 神奈川県立近代美術館蔵
第5章 素描と版画
水彩画、パステル画、版画を中心に展示。
第6章 そして現在へ
2000年代以降の仕事、そして最新作を展示。
《サラダB》2007年 油彩・キャンバス 神奈川県立美術館蔵
《デンキュウ》2019年 油彩キャンバス
―HPの解説ー
上田薫(1928〜)は、写真を使って対象を精巧に描き出す画家です。殻からつるりと落ちてくる生玉子がリアルに描かれた彼の作品を、美術の教科書で見たことがある方も多いのではないでしょうか。
東京藝術大学で油彩を学び、主に抽象画を制作していた上田は、1956年に映画ポスターの国際コンクールで国際大賞を受賞したことをきっかけに、グラフィックデザインの世界へ足を踏み入れます。それからしばらく絵画制作からは離れますが、1970年に、対象そのものだけを写実的に描く表現 —本人曰く、制作に行き詰まったときに頭を空っぽにするための「クソリアリズム」— に目覚めます。
以後、上田は、ときにデザインの世界で学んだことを活かしながら、現実以上にリアルに見える作品を次々と生み出してきました。作品のモティーフの多くは、殻が割られた瞬間の生玉子、スプーンから流れ落ちそうなジャム、水の流れや空など、一瞬で姿を変えるものです。時間と空間とを切り取るその鮮烈な描写は、リアリズム絵画のなかに独自の位置を占めるものとして、高く評価されています。
本展では、これまでまとまった形で紹介される機会の少なかった上田薫の歩みを、大学卒業後から現在までの作品約80点とともに紹介します。時間の流れ、空間のひろがり、そして何気ない日常を驚きに変える上田流「クソリアリズム」の世界を、ぜひ心ゆくまでお楽しみください。
上田薫展関連映像「上田薫 制作と語り」(2020年春〜夏)
横須賀美術館
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