西洋の木版画 500年の物語
「西洋の木版画 500年の物語」は町田市国際版画美術館で開催されています。
会期 2020年9月26日(土)~11月23日(月)
日本の木版画とは異なる展開をとげてきた西洋の木版画。その500年の歴史を120点の作品で紹介する展覧会です。
(撮影可能です(条件あり))
展覧会の構成は次の通りです。
(本展配布小冊子の文章を引用しています)
Ⅰ木版画のはじまり
ヨーロッパで木版画が作られるようになったのは14世紀末といわれます。
版画の発展に必要な紙が13世紀後半にイタリアで漉かれるようになり、15世紀にはいるとヨーロッパ各地で生産が進んだことによって、木版画の制作も発展していきました。
「ライオンの刺を抜く聖ヒエロニムス」1450年頃 木版 手彩色
世界に3部しか残っていない初期木版画で、刷った版画の上から絵の具を用いて手で色彩を施しています。
15世紀なかばにグーテンベルクが発明した活版印刷により、書物の出版は飛躍的に増大します。
文章と一緒に版に挿絵を組み込んで印刷される様になりました。
シェーデル《年代記》より1493年刊 木版
Ⅱデューラーの登場
15世紀末のアルブレヒト・デューラーの登場で木版画の歴史上最初の頂点を迎えます。
アルブレヒト・デューラー《黙示録》より〈四人の従者〉1498年頃 木版
下絵制作と彫りの分業が進んでいました。デューラーも彫りにかかわった可能性が指摘されています。
大衆的な刷り物「民衆版画」も登場します。
「聖ステパノ」16世紀後半~17世紀初頭 木版 手彩色
聖人が殉教するまでを絵と文字で説明しています。
Ⅲ小口木版
18世紀後半、に小口木版の技法を確立したのがイギリスのビューイックです。
トマス・ビューイック《英国鳥類誌》より 〈カワセミ〉 1797年刊 小口木版
19世紀には本や新聞の図版などで広く用いられました。
ギュスターヴ・ドレ《新曲 煉獄編》より 1868年刊 小口木版
1860年代にイギリスの刷師エドマンド・エヴァンスが小口木版の多色刷りを実用化しました。
リチャード・ドイル 『妖精の国で』より 1870年刊 木口木版(多色)
小口木版と出版;
19世紀には本や新聞の図番などで小口木版は広く持ち入れれましたが、
19世紀も後半になって写真技術を利用した印刷技術が登場すると、小口木版は急速にすたれていくことになります。
Ⅳ近代から現代へ
19世紀を通して印刷技術が発展をとげると、版画は図像の印刷という実用的な役割を失い、その存在を改めて問われることになりました。
木版画が美術表現として見直されるのは1880年代末のことで、その契機となったのは日本の浮世絵版画でした。
フェリックス・バロットン《街頭デモ》1893年 木版
ポール・ゴーギャン《ノアノア》1893-94年 木版
ヴァシリィ・カンデンスキー《響》より1913年刊 木版(多色)
この美術館の配布資料「版画の技法 用語解説です」
会場内でも解説パネルが掲示されています。
(クリックで拡大表示になります)
| 固定リンク
コメント
町田市立国際版画美術館の所蔵品は、他の美術館の企画展でも度々出品されていて、よく見かけます。
豊富な所蔵品の証左です。
家から近い事もあって(車で行くのですが)企画展はここ10数年全て観ています。
版画に特化した美術館はここだけですので・・・
一度行ってみてはいかがでしょうか?
投稿: 内田さんへ | 2020.10.18 20:58
来年の企画展が楽しみです。是非観に行きます。1月:「草間彌生」 7月:「浮世絵風景画―広重・清親・巴水 三世代の眼」
投稿: 内田 | 2020.10.18 20:22