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2020.02.04

ニューヨークが生んだ伝説の写真家「永遠のソール・ライター」

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ニューヨークが生んだ伝説の写真家「永遠のソール・ライター」展は、
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されています。


会期 2020年1月9日(木)~3月8日(日)


日常の街並みの中に暮らす人々と、その景色を、巧みな構図と独特の色彩感覚で切り取った写真は「ソール・ライターの個性」が明らかです。
2017年にこのミュージアムで開催された回顧展は、ジャポニズム、新印象派、ナビ派との関係性などを取り上げてその芸術性に主眼を置いた企画だったと記憶していますが・・・
今回はソール・ライターの仕事全般と「家族」「愛した女性」などにも焦点を当てての展示です。
約8万点のカラー写真をはじめとする作品の大半を整理することなく世を去った写真家の「発掘作業」は今も続けられています。
本展ではセルフポートレートをはじめ、世界発公開を含むモノクロ・カラー写真、カラースライド等の作品展示でソール・ライターの魅力、仕事を再検証しています。

展覧会の構成は以下の通りです。
Part Ⅰ ソール・ライターの世界
1.Black&White
2. カラー(1)
3. ファッション
4. カラー(2)
Part Ⅱ ソール・ライターを探して
1. セルフ・ポートレート
2. デボラ
3. 絵画
4. ソームズ
5. その他
 

ユダヤ教の聖職者の父の下に生まれたソール・ライターは、神学校へ通いますが、その生活に馴染めず、次第に絵を描くことに喜びを見出すようになっていきます。
12歳の頃になると、母親に買ってもらったカメラで、家族の中で最もライターの理解者だった、妹のデボラを撮るようになります。今でも多くのポートレートが残されており本展にも「デボラ」のコーナーが設けられています。
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《デボラと一緒のセルフポートレート》1940年代、ゼラチン・シルバー・プリント

1946年、23歳になったライターは、画家になることに大反対する父親の理解を得られぬまま、神学と決別、ピッツバーグを離れニューヨークに向かいました。

1940年代後半のアメリカは、抽象表現時代。
写真を応用した様々な実験的作品を創作していたプセット=ダートとの親交を通じて、撮影から暗室作業まで一連の写真術を習得し、ソール・ライターは、表現メディアとしての写真の潜在力にも目覚めていきました。

画家だけでは生計が成り立たなかったライターを救ったのが写真でした。
ライターの写真に興味を持ったファッション誌のアートディレクターに定期的に雑誌への写真掲載を依頼されるようになります。
そしてニューヨーク五番街に写真スタジオを設けるようになります。
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ソール・ライター《『Harper's BAZAAR』》 1959年2月号、発色現像方式印画

ファション写真の仕事で広がった交友関係のなかで、写真家とモデルとして出会い、絵画を通じて接近し、ソール・ライターの人生に大きな影を与えたのがソームズ・バントリーでした。
晩年のライターの成功を見ることなくソームズは亡くなりました。
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ソール・ライター《ソームズ・バントリー》 1950年代、発色現像方式印画
 
もともとファッション写真などの「商業写真」に大きな興味の無かったライターは、1981年に5番街のスタジオを閉鎖し、以後イースト・ヴィレッジのアパートで自分のためだけに作品を創造する隠遁生活へと入っていきました。

「私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。」

「私は無視されることに自分の人生を費やした。それで、とても幸福だった。無視されることは偉大な特権である。」

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ソール・ライター《薄紅色の傘》 1950年代、発色現像方式印画

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ソール・ライター《バス》2004年頃、発色現像方式印画

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ソール・ライター《黄色いドット》 1950年代、発色現像方式印画

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ソール・ライター《高架鉄道から》 1955年頃、発色現像方式印画

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ソール・ライター《帽子》 1960年頃、発色現像方式印画

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ソール・ライター《無題》撮影年不詳 発色現像方式印画

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ソール・ライター《セルフ・ポートレイト》 1950年代、ゼラチン・シルバー・プリント

 

—HPの解説—
2017年、Bunkamura ザ・ミュージアムで日本初の回顧展を開催し、大きな話題を呼んだ写真家ソール・ライター(1923-2013)。 1950年代からニューヨークで第一線のファッション写真家として活躍し、1980年代に商業写真から退いた後、世間から突如姿を消しました。ほとんど知られていなかった写真家の展覧会がこれほどの反響を巻き起こした背景には、画家として出発し、天性の色彩感覚によって「カラー写真のパイオニア」と呼ばれた個性と才能がありました。約8万点のカラー写真をはじめとする作品の大半を整理することなく世を去った写真家の「発掘作業」は今もなお、現在進行形で続けられています。 本展では、ニューヨークの膨大なアーカイブから、世界初公開作品を含むモノクロ・カラー写真、カラースライド等の作品をはじめ、豊富な作品資料やデジタル技術を駆使して、知られざる一面を紐解きながらソール・ライターの更なる魅力をご紹介します。

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