美人画の時代―春信から歌麿、そして清方へ―
美人画の時代―春信から歌麿、そして清方へ―は、
町田市立国際版画美術館で開催されたいます。
会期 2019年10月5日(土)~11月24日(日)
前期:10月5日(土)~10月27日(日)
後期:10月29日(火)~11月24日(日)
版画美術館としての面目躍如というところでしょうか、保存状態が良く、素晴らしい浮世絵美人画が揃いました。
詳しい解説もあって、浮世絵美人画が誕生してから、時代を経て昭和に至るまで連綿と伝えられ、変遷してきたのか?
そして、それぞれの絵師の個性と魅力を堪能できる良企画展です。
展覧会の構成は次の通りです。
1章 “美人画の時代”の系譜
1節 錦絵のはじまり
浮世絵版画は当初の単色の墨摺りからはじまり、徐々に彩色摺りの技術が発展してゆきます。明和期(1764〜72)には、いよいよ錦絵(多色刷りの木版画)が誕生しました。この時期に浮世絵を牽引したのが鈴木晴信(1725?〜70)です。春信が没した後もしばらくは流行が続きました。
鈴木春信「鞠と男女」明和4年(1767)頃、中判錦絵 千葉市美術館
春信は物語の一場面を切り取ったかのような男女の恋の場面を美しく描き出しました。
2節 リアルを求めて
華奢な春信様式の美人が流行した明和期を経て安永期(1772〜81)に入ると人物表現に変化が生まれます。長身で肉好きの良い人物像が主流となり、よりリアリスティックな表現が求められるようになりました。
3節 花開く黄金期
天明期(1781〜89)鳥居清長はかつての春信様式の美人像から完全に抜け出し「江戸のビーナス」と称される、八頭身の健康的な人物像を発表します。いわゆる「黄金期」の始まりです。
鳥居清長「隅田川渡し船」天明7年(1787)頃、大判錦絵三枚続、山口県立萩美術館・浦上記念館蔵
清長の特徴の一つにパノラマ画面の美人画があります。登場人物を屋外に連れ出し四季の風景と共に男女の群像を描きました。
4節 輝ける黄金期
喜多川歌麿、東洲斎写楽、鳥文斎栄之、歌麿、栄之の門人たちも多数活躍した時代、輝ける黄金期です。
喜多川歌麿「婦女人相十品 文読む女」寛政4-5年(1792-93)頃 大判錦絵 太田記念美術館
歌麿は寛政4〜5年頃にこうした白雲母摺りの半身像を発表している。このような浮世絵は当時の人には斬新に映った。
この浮世絵のみ撮影可です。
喜多川歌麿「当世好物八景 はなし好」享和元-2年(1801-02)頃 大判錦絵 町田市立国際版画美術館蔵
「当世好物八景」は、「はなし好」「さわき好」のほか「出好」「子供好」「さけ好」「たのしみ好」「馳走好」の8図揃え。この頃の歌麿は、従来の大首絵から発展し、二、三人を一画面に納めた作品に多く取り組みました。
2章 浮世絵美人画をめぐる三つの視点
1節 誰を描いているのか — 個性の表現
歌麿の時代には役者絵ですでに定着していた「似顔表現」を用い、名前のある人物の個性を描き出そうという意識が生まれました。
2節 俗か雅か — 肉筆画から紅嫌いまで
肉筆画の多くは特定の受容者を対象に制作され、大名など貴人の依頼に応じたものもありました。また、版画においても天明ー寛政期に、あえて色彩を抑えて水墨画のような趣を出した「紅嫌」と呼ばれる作品が作られました。
勝川春章「竹林七妍図」寛政元-4年(1789-92)絹本着色 東京藝術大学蔵
竹林の七賢人を七人の美人に見立てて竹林中に配した作品です。
3節 女か男か — 役者絵から春画まで
(春画コーナーは18歳未満入場不可です。ご丁寧にも、椅子に置かれた図録の春画の頁にも白紙を挟んでクリップで止めてあり、18歳以下は見てはいけない旨書かれていました)
憧れの的となった女形の「役者絵」なども展示されたいます。
喜多川歌麿「歌まくら」天明8年(1788)大判錦絵12枚組折帖 浦上満氏蔵
3章 わたしたちの浮世絵黄金期
1節 明治の江戸回顧 — 歴史の中の黄金期
2節 大正・昭和の美人画 — 黄金期の面影
鏑木清方「道成寺」昭和3年(1928)絹本着色 練馬区立美術館像
清方は、鳥文斎栄之の絵が好きでした。勝川春章、喜多川歌麿の模写も展示されていて、清方が黄金期の浮世絵からも学んでいたことがわかります。
ーHPの解説ー
数々のスター絵師が活躍した、18世紀後半の浮世絵界。天明・寛政(1781-1801)を中心とするこの時期は、いつからか浮世絵史の「黄金期」として親しまれてきました。その中心となったのが、人物を美しく活き活きと描いた「美人画」です。鈴木春信(1725?-70)以降、礒田湖龍斎(1735-?)、勝川春章(1743-92)、鳥居清長(1752-1815)、喜多川歌麿(1753?-1806)、鳥文斎栄之(1756-1829)ら、個性豊かな絵師が次々と登場し、理想の美人像を追い求めました。
描かれたのは評判の遊女や町娘、若衆と呼ばれる若い男性、愛情あふれる母子や恋人たちの姿。さらに憧れの的でもあった女形の「役者絵」や、人間の性愛を時に美しく描いた「春画」にも美人表現がみられます。
本展は、この「美人画の時代」の軌跡を、約230点の版画、版本、肉筆画で辿るものです。時を経て、天明・寛政が「黄金期」として高く評価されてゆくなか、鏑木清方や上村松園ら近代の画家たちが往時の美人画に想を得ていたことにも目を向けます。「黄金期」の美人画とは何だったのか―、その普遍的な魅力を、現代のわたしたちの視点を通して考えます。
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