特集 焼き締め茶陶の美―備前・信楽・伊賀・丹波―
「特集 焼き締め茶陶の美―備前・信楽・伊賀・丹波―」は、
東京国立博物館本館14室で開催されています。
会期 2019年9月18日(水) ~ 2019年12月8日(日)
トーハクが所蔵する備前、信楽、伊賀、丹波で焼かれた焼き締め茶陶を紹介する特集展示です。
22点の展示です。
備前
岡山県備前市伊部を中心につくられたやきもの。6世紀以降に始まった須恵器の技術を継承し、平安時代末頃に始まる「六古窯」の一つです。中世には壺、甕、擂鉢といった日用の器が量産され、室町時代後期に侘茶が広まると、信楽と共に最初の和物茶陶として茶席にとりあげられるようになりました。「緋襷(火襷)」「胡麻」「牡丹餅」といった窯の中で起こる様々な変化(窯変)が器に現れるのが特徴で、それらは「景色}と呼ばれ、見どころとして鑑賞されてきました。(本展キャプションからの引用です。以下同じ)
六古窯ー<和>の焼き物
反鉢(そりばち)炻器(セッキ)備前 高4.8 径33.8×29.3 江戸時代 17世紀
緋襷一重口水指 備前 安土桃山~江戸時代 16~17世紀 広田松繁氏寄贈
花入 備前 安土桃山〜江戸時代 16〜17世紀 松永安左ェ門氏寄贈
緋襷向付 備前 安土桃山〜江戸時代 16〜17世紀 等々力孝志氏寄贈
信楽
滋賀県甲賀氏信楽町を中心につくられたやきもの。常滑の技術をとりいれて平安時代末頃に始まる六古窯の一つです。中世には壺、甕、擂鉢といった日用の器が量産され、室町時代後期に備前とともに茶席にいち早く取り上げられるようになります。茶会記に初めて信楽焼が登場する天正11年(1542)4月9日『松屋久政茶会記』は、茶会記における和物茶陶の所見記事であり、ここでは信楽水指が用いられたことが印されています。
長石や石英といった白い粒を多く含んだ土でブツブとした器肌が特徴です。
一重口水指(ひとえぐちみずさし) 銘 柴庵(しばのいおり)陶器 信楽 高14.7 口径17.3 底径15.5 安土桃山時代 16世紀
広田松繁氏寄贈
袋形水指 信楽 江戸時代 17世紀 広田松繁氏寄贈
伊賀
三重県伊賀市(旧阿山町)を中心につくられたやきもの。開窯の時期は定かではありませんが、山を挟んで隣接する信楽の技術をもとに、安土桃山時代から茶湯道具を専門に焼く窯であったことが知られます。
信楽と似た赤い焼き上がりに、「ビードロ釉」と呼ばれる透明な緑の自然釉がたっぷりと掛かるのが特徴です。大きく歪みを加えてデフォルメされた形や、窯の中での火の当たり方による違いから生じる、表裏で全く異なる器肌など、「破格の美」と評される水指や花入れの名器が伝わります。
耳付袋形水指 伊賀 江戸時代 17世紀
丹波
兵庫県篠山市今田町を中心にやかれたやきもの。平安時代末頃に、常滑や渥美といった東海諸窯の影響を受けて開窯したと考えられています。六古窯の一つで、中世には壺、甕、擂鉢を主とした日用の器が量産されました。
茶陶は他の窯と比べて総じて少なく、茶会記に登場するのも江戸時代に入ってからと時期が下がります。茶人小堀遠州とのかかわりが知られ、遠州好みの丹波茶入れなどが伝わっています。
擂座花入(るいざはないれ) 丹波 江戸時代 17世紀
擂鉢形水指 丹波 江戸時代 17世紀 宮脇真理氏寄贈
ーHPの解説-
焼き締めとは、釉薬(うわぐすり)を掛けずに高い温度で焼かれるやきものです。平安時代末以来、壺、甕(かめ)、擂鉢(すりばち)といった日用の器が各地の窯で量産されました。室町時代後期からは、備前(びぜん)や信楽(しがらき)で作られた焼き締めが国産の陶器としては初めて茶の湯の器(茶陶)として茶席に取り入れられるようになります。それらはもともと茶陶として作られたものではありません。穀物や種子を貯蔵するための桶や壺などとして作られたものが、建水、水指(みずさし)、花入(はないれ)として取り上げられた、いわゆる「見立ての器」でした。やがて安土桃山時代から江戸時代の初めにかけて侘茶(わびちゃ)の美意識が深まり、各地で茶会が開かれるようになると、焼き締めの器も好まれ、他の窯でも茶陶としての創意性が加えられた多彩な器がつくられました。
焼き締めの最大の魅力は、土の素朴な味わい、豪放的な造形、そして窯の中で土と炎が偶然に生み出す変化にあふれた器肌です。茶陶においても、華やかな装飾が施されたものではなく、あえて麁相(そそう)なものに美が見出されました。こうした鑑賞眼は他の国には例を見ません。そこには技術的な変革によらず、独自の美を醸成させてきた日本陶磁の歴史があり、古くは縄文時代の造形美を見出したのと同じような日本独特の独創性に富んだ審美眼があるといえるでしょう。
この特集では、当館が所蔵する備前、信楽、伊賀(いが)、丹波(たんば)で焼かれた焼き締め茶陶を紹介します。産地ごとの土の色の違いや、器種・器形の多様性など、個性豊かな表現をぜひご堪能ください。
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