特別展 茶の湯の名碗「高麗茶碗」
特別展 茶の湯の名碗「高麗茶碗」は、
三井記念美術館で開催されています。
会期 2019年9月14日(土)〜12月1日(日)
(展示替えあり)
喫茶の茶碗は、長く唐物に頼っていましたが、室町時代末期、日本独特の侘の茶風が広がるとともに新しく見出されたのが高麗茶碗です。
「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部ー美濃の茶陶」がもてはやされたのも同じ経緯によるものなんですね。
高麗茶碗は日常の器の中から「茶の湯のために見立てられた茶碗」」と「日本向けに焼かれた茶碗」に大別されます。
日本向け焼かれた高麗茶碗の中で、釜山の倭館運営に当たった対馬藩が寛永16年(1639)からおよそ70年間、倭館内で焼いた焼物を「御本」といいます。
この展覧会の解説にありますが「素朴さと大らかさ」その作行き・・観飽きることのない作品が並んでいました。
歴代の数寄者を渡り歩いた経緯なども、とても興味深く、楽しめました。
第一章 見立てられた高麗茶碗
江戸時代末期に完成し今日に至るまで伝わる、見立てられた茶碗は16種類ほどに分けられます。一般的にに知られる名称は三島、刷毛目、粉引(こひき)、井戸、蕎麦、斗々屋、熊川(こもがい)、割高台(わりこうだい)などですが、さらに井戸茶碗を大井戸、青井戸、小井戸、小貫入(こかんにゅう)というような作行の違いに寄って細かく呼び分けられています。
三島茶碗 二徳三島(見込) 16世紀 三井記念美術館
千利休と袋師二徳所持と伝えられる茶碗。北三井家旧蔵(キャプションを参考にしています、以下同じ)
蕎麦茶碗 銘花曇 16世紀 個人蔵
蕎麦茶碗の特徴は、腰に丸い膨らみが付き口縁に向かって開いた姿である。
大井戸茶碗 有楽井戸 16世紀 東京国立博物館
小井戸茶碗 枡屋井戸 16世紀 三井記念美術館
青井戸の優品として知られている。青井戸の特徴がみられるものの、むしろ小井戸の姿であることから本展では小井戸と紹介している。
紅葉呉器茶碗 16世紀 個人蔵
第二章 日本向けに焼かれた高麗茶碗 Ⅰ
慶長年間には日本各地の窯で和物の茶陶(美濃・備前など)が焼かれるようになり、流行します。この時期に請来した、日本向けに焼かれた高麗茶碗の御所丸、彫三島、伊羅保、金海などは見立てられた高麗茶碗と比べると明らかに趣が異なります。
御所丸茶碗 古田高麗 16〜17世紀 個人蔵
内蓋表に「古田高麗」とあり古田織部所持と伝えられている。数名の数寄者を経由したのち鴻池家に伝わった。
狂言袴茶碗 銘浪速筒 17世紀 東京国立博物館
彫三島茶碗 17世紀 三井記念美術館
彫三島には本手と平茶碗があり、この茶碗は本手に類する。見込みや外側に花文や檜垣文を施し、施釉している。
第二章 日本向けに焼かれた高麗茶碗 Ⅱ
御本立鶴茶碗 銘千歳 17世紀 個人蔵
伊羅保片身替茶碗 千種伊羅保 17世紀 個人蔵
千種伊羅保といわれる茶碗は二碗伝世しており、この茶碗は千種宰相所有とされている茶碗である。茶釉と白釉が片身替りに掛けられているが、作行きは伊羅保に似ている。
絵半使割高台茶碗 17世紀 藤田美術館
半使茶碗は、朝鮮通信使に同道した通訳が、日本の好む茶碗を対馬藩に持ち渡ったものです。(リーフェレットから引用)
—HPの解説ー
茶の湯の茶碗は、産地によって唐物茶碗、高麗茶碗、和物茶碗などと呼び分けられています。唐物茶碗は中国、高麗茶碗は朝鮮半島、和物茶碗は日本で焼かれた茶碗です。日本に中国から喫茶法が伝わって以来、喫茶の茶碗は長く唐物に頼っていましたが、室町時代末期、日本独特な侘びの茶風が広がるとともに新しく見いだされたのが高麗茶碗です。高麗茶碗という名称が記録に初見されるのは、天文6年(1537)のことですが、わずか50年の後、侘茶が大成された天正年間(1573~1591)には、唐物茶碗に替わって高麗茶碗が大いに流行し、和物茶碗とともに茶の湯の茶碗の主流となります。
高麗茶碗と呼ばれてはいますが、この種の茶碗が焼かれたのは高麗時代ではなく、朝鮮時代です。今日に伝わる高麗茶碗の数は和物茶碗におとらず、また作行きも多様です。そうした高麗茶碗を三種類に大別すると、時代を追って次のようになります。
1. 朝鮮半島各地の窯で日常品として焼かれた器が茶の湯のために見立てられた茶碗。多くは16世紀に焼かれた茶碗類です。
2. 16世紀末から17世紀初め頃、日本向けに焼かれたと思われる茶の湯の茶碗。
3. 17世紀から18世紀中頃まで、対馬藩の贈答品として釜山の倭館内で焼かれたもの。「御本」の名称で親しまれています。
高麗茶碗は時代によって、あるいは焼かれた経緯によって作行きは多様ですが、一貫して和物茶碗とは異なる特質をそなえています。素朴さと大らかさです。次頁に各種の特質を少し詳しく紹介いたします。この特別展を介して高麗茶碗ならではの魅力をお楽しみいただけたらと思います。(なお展示期間が制限されている作品が多く、会期中に展示替えをいたします。)
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