クリムト展 ウィーンと日本 1900
「クリムト展 ウィーンと日本 1900」は、
東京都美術館で開催されています。
会期 2019年4月23日(火)~7月10日(水)
本展は、クリムトの全体像を教えてくれるとてもよい展覧会です。
なかでも216×3438cmの原寸大複製《ベートーヴェン・フリーズ》は物語性とクリムトの個性が際立つ良い展示だと思いました。
苦しむ人間たちが黄金の騎士に、正面に描かれた「敵対する力」と戦うことを懇願します。
「敵対する力」巨人テュフォンとその娘たちゴルゴン三姉妹「病」「狂気」「死」「肉欲」「淫蕩」「不節制」「激しい苦悩」の擬人像が描かれています。クリムトの苦悩、葛藤が反映されています。
作品(物語)は、シラーの詩「歓喜の歌」を歌う天使たちでしめくくられます。
《ベートーヴェン・フリーズ》(部分)グスタフ・クリムト
1984年(原寸大複製/オリジナルは1901-1902年、216×3438cm)
ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
【クリムト展】《ベートーヴェン・フリーズ》CG映像
クリムト(1862〜1918年)の父は金工職人で2人の弟も画家と彫金師でした。ウィーンの工芸美術学校を卒業。芸術家カンパニーの経営を始めたクリムトは友人、弟エルンストと劇場装飾などの仕事を手掛けます。しかし、クリムトが30歳の時に父とエルンストが急死してしまいます。共同製作ができなくなったクリムトは、新たな創作活動を模索することになり、やがて「ウィーン分離派」を結成します。クリムトはエレンストの娘ヘレーネの後見人となり、病気がちだった母と妹2人と生涯共に過ごしました。
55年の人生、生涯独身であったクリムトには、多くの恋人との間に少なくとも14人の私生児がいました。
本展には、クリムト、家族、恋人の写真などが展示されています。
生涯のパートナーであったエミーリエ・フリーゲ(クリムトの弟エルンストの妻の妹)とはプラトニックであったとされてきましたが、近年そうではかったことが分かったそうです。
クリムトからエミーリエに宛てた書簡7通も示されています。(2人で写った写真、肖像画も展示されています)
《ヘレーネ・クリムトの肖像》グスタフ・クリムト1898年 油彩、厚紙
個人蔵(ベルン美術館寄託)
ヘレーネ6歳の時の肖像です。
展覧会の構成は次の通りです。
Chapter 1. クリムトとその家族
Chapter 2. 修業時代と劇場装飾
Chapter 3. 私生活
Chapter 4. ウィーンと日本 1900
Chapter 5. ウィーン分離派
Chapter 6. 風景画
Chapter 7. 肖像画
Chapter 8. 生命の円環
《ユディトⅠ》グスタフ・クリムト1901年 油彩、カンヴァス
ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
クリムトが初めて油彩画で金箔を使った作品。額はクリムトがデザインして、弟が作りました。
煌びやかな衣装をまとい妖艶な表情を見せるユディトと、ほんのわずかに描かれているホロフェルネスの首、この対比は凄いですね。
《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》グスタフ・クリムト1899年 油彩、カンヴァス
オーストリア演劇博物館
1897年のウィーン分離派結成の直前に構想された作品。
クリムトの風景画は正方形の作品がが多いようです。湖などで四角いフレームを翳しながら絵になる風景を探した様です。
《アッター湖畔のカンマー城III》グスタフ・クリムト1909/1910年 油彩、カンヴァス
ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
《 丘の見える庭の風景》グスタフ・クリムト1916年 油彩、カンヴァス
カム・コレクション財団(ツーク美術館)
輪郭線を描いて彩色する方法は、ゴッホの作品を参考にしたとの指摘もあるようです。
クリムトは「自分には関心がない。それよりも他人、女性に関心がある」と言い残しました。男性の肖像画は少なく、自画像はありません。
《オイゲニア・プリマフェージの肖像》グスタフ・クリムト 1913/1914年 油彩、カンヴァス
豊田市美術館
クリムトの後期肖像画の特徴を示す作品。
《赤子(ゆりかご)》グスタフ・クリムト 1917/1918年 油彩、カンヴァス
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
クリムトの子供を描いた作品の中でも、画家が晩年に手がけた作品。布の模様は日本の着物からインスピレーションを得ているとも考えられる。(キャプションを参考にしました)
クリムトにとっての生命の表現は、愛し合う男女や子を宿した女性のありのままの姿であり、老いて死にゆく人間の姿であった。
《女の三世代》グスタフ・クリムト1905年 油彩、カンヴァス
ローマ国立近代美術館
—HPの解説—
19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(1862-1918)。華やかな装飾性と世紀末的な官能性をあわせもつその作品は、いまなお圧倒的な人気を誇ります。没後100年を記念する本展覧会では、初期の自然主義的な作品から、分離派結成後の黄金様式の時代の代表作、甘美な女性像や数多く手掛けた風景画まで、日本では過去最多となる25点以上の油彩画を紹介します。ウィーンの分離派会館を飾る壁画の精巧な複製による再現展示のほか、同時代のウィーンで活動した画家たちの作品や、クリムトが影響を受けた日本の美術品などもあわせ、ウィーン世紀末美術の精華をご覧ください。
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