科博NEWS展示「さようならキログラム原器―「はかる」単位、130年ぶりの大改定」
トーハクの企画展を観た後、国立科学博物館に寄り道したら興味を惹かれる展示がありました。
科博NEWS展示「さようならキログラム原器―「はかる」単位、130年ぶりの大改定」
6月16日(日)までの展示です。
科博の企画に関連する放送をNHKはよく行いますが、この件について「又吉直樹のヘウレーカ なぜ単位はいるのだろう?」の中で取り上げていました。(5月29日放送。再放送5月31日(金)午前0時15分〜)予告動画はこちら
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色々と復習してみましたが、未だに今回の定義について理解しきれません。これも楽しいので、分かるまで頑張りますが自信ありません!
人工物は不変ではありません。絶対不変な定義(キログラムの定義にプランク定数)に130年ぶりに改定した所以ですね。
測定技術の進化が定義を変えます。
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2018年11月にフランスで開かれた第26回国際度量衡総会で、国際単位系(SI)の基本単位の定義変更が決まりました。新しい定義は今年5月20日から施行されます。
4つの単位の定義が同時に変更になります。
時代とともに単位も変わります。
長さや質量(重さ)など、さまざまな量を「はかる」には、基準となる「ものさし」が必要です。この「ものさし」は、国際的な研究協力を通じて少しずつ改定されてきた歴史があります。今回の改定は重要な「ものさし」であるキログラム、モル、アンペア、ケルビンという4つの単位の定義を同時に変えるもので、特にキログラムは約130年ぶりの見直しとなりました。
人工物から自然法則へ
キログラム原器 レプリカ(展示品をスマホで撮影)
中央にある金属製の円柱が1kgである。日本のキログラム原器の実物は、メートル原器とともに、産業技術総合研究所(茨木間つくば市)に保管されている。
日本からの貢献
「1キログラム」はこれまで、国際キログラム原器と言う人工物の質量で定義されていましたが、今回の改定により、基礎物理定数の1つである「プランク定数」を使った定義に変わりました。モル、アンペア、ケルビンの新しい定義もそれぞれ「アボガドロ定数」「電気素量」「ボルツマン定数」という基礎物理定数にもとづいています。このうちキログラムの定義間改定には日本の産業技術総合研究所が大きく貢献しました。
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理解するために・・・・
つまり、ブランク定数の不確かさがゼロになったからということにより、
プランク定数に基づく定義では、静止エネルギーと質量の関係式 E = mc2 を用いて、ある振動数 ν の光子のエネルギー (E = hν) と等しい静止エネルギーを持つ物体の質量を1キログラムと定義する。すなわち、
キログラムは周波数が {(299 792 458)2/6.626 069 57}× 1034 ヘルツの光子のエネルギーに等価な質量である。
h = 6.62607015×10−34 J s (一秒あたりのエネルギー)
アボガドロ定数とは、物質量 1 mol を構成する粒子(分子、原子、イオンなど)の個数を示す定数である。国際単位系(SI)における物理量の単位モル(mol)の定義に使用されており、その値は正確に 6.02214076×1023 mol−1と定義されている。
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1、特別な球を用意する
アボガドロ定数を正確に決めるには、極めて純度の高い物質を用意し、その密度を正確に求める必要があります。密度は質量÷体積で、質量は天秤で正確に決められるので、体積を正確に「はかる」ことが重要になります。このために用意されたのが、特別なシリコンを材料とする、ほとんど完璧な球体です。
単結晶シリコン球体 レプリカ(展示品をスマホで撮影)
極めて純度の高いシリコン(ケイ素)の単結晶を真球に精密研磨加工したもの。質量の単位「キログラム」の新しい定義の基礎になったブランク定数を測定するために、産業技術総合研究所で使用された。
2.体積をはかる
球の体積を求めるために、レーザー干渉計という装置を使い、直径を正確に測ります。球を回転させ、さまざまな方向から直径をはかり、平均直径から体積を計算します。温度がわずかでも変わると球が膨らんだり縮んだりしてしまうため、球体の温度を一定に保ち、その温度も正確にはからねばなりません。
(展示パネルから)
3.表面をはかる
球の表面は、シリコンが空気中の酸素と結びついた薄い膜で覆われています。膜の厚さはわずか数ナノメートルですが、アボガドロ定数を正確に求めるには、膜の部分を除いたシリコンのみの部分の密度をはからねばなりません。そのため特別な分析装置を開発して、膜を構成する物質の種類や膜の厚さをはかりました。
(展示パネルから)
4.問われる総合力
当初、アボガドロ定数を決定する研究は、産総研を含む8カ国の研究機関が参加した国際プロジェクトによって行われました。しかし、最終的にアボガドロ定数を十分な精度で求められたのは産総研とドイツの研究機関だけでした。「はかる」ことは、実は、様々な技術を駆使して行う高度な科学研究でもあるのです。
(展示パネルから)
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コメント
光応用センサー、精密測定に関する仕事をしていたことがあるので、ポスターを見てしまったら展示を見ずに帰るわけにはいきませんでした。工学系学生の第2外国語はドイツ語でしたね。今はどうなのでしょう?今回の改定の過程を見ても、精密加工、測定、基礎物理の総合力の結果ですね。この分野で日本は先端を走り続けることができるのでしょうか?NHK技研今年も行けません、残念!
投稿: 内田さんへ | 2019.06.01 04:12
大変面白い展示品を見て来られましたね。やはり日本とドイツは国民性が似ているので、この分野は得意ですね。昔ドイツ製の測定器(重くて頑丈で正確)を良く使いました。 私は今日NHK技研の一般公開を見てきました。
投稿: 内田 | 2019.05.31 22:24