吉村芳生 超絶技巧を超えて
「吉村芳生 超絶技巧を超えて」展は、
東京ステーションギャラリーで開催されています。
会期:2018年11月23日(金・祝)-2019年1月20日(日)
僕は小さいころから非常にあきらめが悪かった。しつこくこだわってしまう。僕はこうした人間の短所にこそ、すごい力があると思う。
私の作品は誰にでもできる単純作業である。
・・・・私は小手先で描く。
上っ面だけを写す。
自分の手を、目を
ただ機械のように動かす。
あとはえんえんと
作業が続くだけである。
写真を模写する(ドローイング 写真)シリーズは、以下の過程で制作されます。(気の遠くなるような作業ですね)
自身が撮影したモノクロ写真を拡大して紙焼きにし、上から鉄筆で格子状にマス目を引く、つぎに、ひとマスごとの濃淡を10段階に分け0から9の数字を記入する。
写真の真っ暗な部分には一番暗いトーンとなる9の文字が鉄筆で刻まれる。
写真に記した数字をもとに、今度は、まっさらな方眼紙へ数字のみを書き写す。
吉村の目と手によるアナログ作業によって写真がデジタル化されていく。
数字を書き写した方眼紙を下敷きに、透明フィルムを上から重ね・・ひとマスずつの数字に従い「4の場合は斜線を5本引く」といった機械的なルールにそって描くことで、写真の濃淡がモザイクの様に再現される。
《ジーンズ》1984年 インク・フィルム 個人蔵
《SCENE85-8》1985年 鉛筆/紙、東京ステーションギャラリー蔵
1985年以降吉村は制作拠点を東京から郷里山口県の徳地へと移す。
郷里の環境によるものなのか・・・徐々にモノクロから色彩豊かな作品を多く描くようになる。
学校の講師をしながらの生活で、「売り絵」を描く必要からとも・・・・
《無数の輝く生命に捧ぐ》2011-13年、色鉛筆/紙 個人蔵
本作制作の動機は東日本大震災で、吉村は花のひとつひとつが亡くなった人の魂だと思って描いたという。
自画像は吉村のライフワークのようなもの。
生涯描き続け膨大な作品を残しました。
《新聞と自画像2008.10.8毎日新聞》2008年 鉛筆・色鉛筆他/紙 個人蔵
吉村は「新聞は社会の肖像」で「自画像と同じ」と語ります。
新聞も自画像も拡大転写しています。
本展は、吉村芳生の全貌を62件600点以上の作品により3 部構成で紹介しています。
・ありふれた風景
・自画像の森
・・百花繚乱
中国・四国地方以外の美術館では初めて開催される吉村芳生の個展です。
開催概要(HPより)
超絶技巧?そんな単純な言葉で説明することはできません。延々と17メートルにわたって描かれた金網、1年間毎日描き続けた365枚の自画像、1文字1文字をすべて書き写した新聞紙――。吉村芳生(1950-2013)が生み出した作品は、どれも超絶リアルでありながら、見る者の度肝を抜く凄味を感じさせます。本展は東京初となる回顧展で、初期のモノトーンによる版画やドローイング、後期の色鮮やかな花の作品、生涯を通じて描き続けた自画像など、600点を超える展示品によって吉村の全貌を伝えます。ただ上手いだけの絵ではない、描くこと、生きることの意味を問い直す真摯な作品の数々を、ぜひその眼で目撃してください。
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