ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより
「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」展は、
横浜美術館で開催されています。
会期 2018年3月24日(土)~6月24日(日)
19世紀のイギリスでは、ヌードは古典文学や神話、聖書を題材とした歴史画でのみ、描くことが許されていました。
19世紀も後半になると、周辺の身近な人々のヌードを描くようになります。
20世紀に入ると、ヌードそのものを対象として描き、抽象表現も現れ、性と無意識という新たな領域(シュルレアリスム)にも挑戦しました。
政治的表現の一手段としてのヌード。
筆触、デフォルメ、構図による人体の物質性と内面性の表現。
移ろいゆく肉体とヌード。
永遠の画題、テーマであるヌードを社会的背景、美術史的視点、表現手法、画法・・・あらゆる視点で分かり易く展示しています。
油彩画を中心に、彫刻、写真、版画等130点の展示です。
本展ではロダンの《接吻》のみ撮影可です。
オーギュスト・ロダン《接吻》 1901-4年、ペンテリコン大理石
美術ナビのロダン接吻の秘密はこちらから
人気漫画家あべ美幸がヌード展のために描きおろしたロダン『接吻』の秘密。ロダン彫刻で”最もエロティック”な大理石像に秘められたストーリーを描きます。
展覧会の構成は次の通りです。
第1章 物語とヌード
フレデリック・レイトン 《プシュケの水浴》 1890年発表 油彩/カンヴァス
ビクトリア王朝の典型的なヌード。
ハーバート・ドレイパー イ 《カロス哀悼》 1898年発表 油彩/カンヴァス
ドレイパー イは、ラファエル前派の画家で海を舞台とした神話的作品を得意とした。
第2章 親密な眼差し
エドガー・ドガ 浴槽の女性 1883年頃 パステル/紙
「われわれは鍵穴を通して彼女たちを覗き見ている」と彼自身が語ったようにドガは日常生活の一瞬を捉えた自然な体勢の裸婦を多く描きました。
ピエール・ボナール 浴室 1925年 油彩/カンヴァス
浴槽にいる妻マルトを描いた連作の中で初めて全身像。
ボナールは、対象を観察しすぎることで第一印象から遠ざかることを避けるために目の前にいるモデルは描かず、記憶を頼りに描くことを好んだ。
オーギュスト・ルノワール ソファに横たわる裸婦 1915年 油彩/カンヴァス
アンリ・マティス 布をまとう裸婦 1936年 油彩/カンヴァス
第3章 モダン・ヌード
ヘンリー・ムーア 倒れる戦士 1956–57年(1957–60年頃鋳造) ブロンズ
戦いで傷つき弱った人間の死を前にした劇的な瞬間を描いている。
パブロ・ピカソ 首飾りをした裸婦 1968年 油彩/カンヴァス
マネのオランピアを参照したことが指摘されている。
モデルはピカソの2番目の妻ジャクリーヌ・ロックといわれる。
第4章 エロティック・ヌード
デイヴィッド・ホックニー 23、4歳のふたりの男子「C.P.カヴァフィスの14編の詩」のための挿絵より 1966年
エッチング・アクアチント/紙
イギリスで同性愛が違法だった時代に男性同士の親密な関係を描いた。
ターナーは風景を描くため旅行に携えたスケッチブックに観察と想像に基づいたエロチックなスケッチが残されている。
1850年代ターナーの名声を守るための遺産管理人によってこうしたデッサンの多くが消去されたが、近年その存在が明らかになり研究が進んでいる。
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー ベッドに横たわるスイス人の裸の少女とその相手「スイス人物」スケッチブックより 1802年 黒煙、水彩/紙
第5章 レアリスムとシュルレアリスム
ポール・デルヴォー 眠るヴィーナス 1944年 油彩/カンヴァス
スピッツナー博物館の展示物に触発された作品。
人体の骨格標本や横たわる女性のポーズも博物館の展示品からとられている。
本作は爆撃被害に遭っていた戦時中のブリュッセルで描かれており、画家は後に、本作についてヴィーナスの静謐さと当時の劇的な状況を意図したと述べている。
第6章 肉体を捉える筆触
ルシアン・フロイド 布切れの側に佇む 1988–89年 油彩/カンヴァス
長時間に及ぶモデルの観察を経て描かれる彼の作品には、画家とモデルとの間の心理的な緊張が反映されている。
第7章 身体の政治性
バークレー・L・ヘンドリックス ファミリー・ジュールス:NNN (No Naked Niggahs[裸の黒人は存在しない]) 1974年
油彩/カンヴァス
裸の黒人男性を伝統的なオダリスクに置き換え、それをシャツに描かれた白人女性が見つめるという構図で描き、黒人男性の身体に対する白人の恐怖感や性的固定観念に向き合った 。
理想化された黒人像ばかりを描いてきた当時の黒人芸術に対する挑戦でもあった。
第8章 儚き身体
シンディ・シャーマン 無題 1982年 タイプCプリント
HPから「展覧会概要」です。
ヌード――人間にとって最も身近といえるこのテーマに、西洋の芸術家たちは絶えず向き合い、挑み続けてきました。美の象徴として、愛の表現として、また内面を映しだす表象として、ヌードはいつの時代においても永遠のテーマとしてあり続け、ときに批判や論争の対象にもなりました。
本展は、世界屈指の西洋近現代美術コレクションを誇る英国テートの所蔵作品により、19世紀後半のヴィクトリア朝の神話画や歴史画から現代の身体表現まで、西洋美術の200年にわたる裸体表現の歴史を紐ときます。フレデリック・ロード・レイトンが神話を題材として描いた理想化された裸体から、ボナールらの室内の親密なヌード、男女の愛を永遠にとどめたロダンの大理石彫刻《接吻》[日本初公開]やシュルレアリスムの裸体表現、人間の真実に肉迫するフランシス・ベーコン、さらにはバークレー・L・ヘンドリックスやシンディ・シャーマンなど、現代における身体の解釈をとおして、ヌードをめぐる表現がいかに時代とともに変化し、また芸術表現としてどのような意味をもちうるのか、絵画、彫刻、版画、写真など約130点でたどります。
2016年のオーストラリアを皮切りにニュージーランド、韓国へと国際巡回する本展。待望の日本上陸です
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