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2018.03.18

浜田知明 100年のまなざし展―戦争を経て、人間を見つめる

Photo


浜田知明 100年のまなざし展は、
町田市立国際版画美術館で開催されています。

会期 2018年3月10日(土)~4月8日(日)


浜田知明は2017年に100歳を迎えました。
浜田知明の創作活動の原点は戦争体験にあります。
戦争体験を伝える手段として選んだのが銅版画です。
「金属的な鋭い線とひやりとした感触」や明暗の深さに感情の表現を期待して。

そして、社会全般への眼差し、その中での個人の偶像も時にはユーモアをまじえて表現していきます。

この展覧会は初期銅版画から近年までの浜田作品を網羅するとともに、浜田と前後して銅版画による新しい表現を求めて活躍した関野準一郎、駒井哲郎、他数名の作品も併せて展示しています。

浜田は東京美術学校を卒業してすぐ召集されて、初年兵として22歳で中国大陸に渡りました。
通算5年間にも及ぶ兵役の後、表現方法を模索する中、1950年から、銅版画に取り組みました。


少年兵の頃、日々自殺を考えた浜田の自画像とも言える作品。
一人きりになれる唯一の時間である夜の歩哨の最中、銃口を喉元に当て引き金を足で引き自らの命を絶とうとする兵士が描かれている
ポロリとこぼれた涙は最後の人間らしさ。(キャプションから)
01
《初年兵哀歌(歩哨》1954年 エッチィング・アクアチント

07
《初年兵哀歌(便所の伝説》1951年 メゾチント

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1950年代後半になると社会へのまなざし・・・より広いまなざしで捉え作品に表現していきます。


08
《地方名士》1958年 エッチィング・メゾチント
中央と地方で二つのお顔を使い分ける人間の卑小さを風刺しています。
(※申し訳ありません、画像とタイトルが一致していなかったので、正しい画像に差し替えました。)

05
《群盲》1960年 エッチィング・アクアチント
当時の美術界にはアンフォルメル旋風が吹き荒れていた。何を描いたかわからないものを自分の目で見ず有難がる人々を皮肉った。
当時の美術会に対するアンチテーゼが込められている。(キャプションから)

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いっぽう1970年半ばからは、主題を個人の人間像に迫る、時にユーモラスナ造形が目立つようになります。

06
《ややノイローゼ気味》(銅版画集「曇後晴」収録) 1975年 エッチィング・アクアチント
ノイローゼになってから回復するまでの自らの体験をシリーズにした作品の中の一枚。


04
《夜》1988年 エッチィング・アクアチント
当時話題となった週刊誌の過熱報道やそれを楽しむ大衆の下品さが着想源の一つにあり、見えない世論とそれに踊らされる滑稽さを描いている。(キャプションから)


この展覧会の最終章では浜田の生涯のテーマである戦争体験という原点に立ち返り、浜田がつきつけてきた戦争体験と記憶をテーマとする作品を現代作家の作品とともに展示しています。

02
《ボタン(A)》1988年 エッチィング・アクアチント・手彩色
一部の指導者が世界を操る核と戦争の構造を表現しています。

戦前戦後を体験した画家の重たい示唆を受け止めながらの観賞になりました。

展覧会の構成は次に通りです。
1章 兵士のまなざし 刻み込んだ記憶 1951-1954年
2章 社会へのまなざし 「見えない戦争」を描く 1956-1974年
3章 人へのまなざし 愛しいかたち 1974-2002年
4章 新しい表現を求めて 1950年代の銅版画表現 
5章 記憶をつなぐ 時代を見つめつづけて 


HPの解説です。
「戦争の残酷さや悲惨さ、軍隊の野蛮さや愚劣さを描きたい」。戦争と軍隊の不条理に耐える初年兵としてこの強い意志を抱いたとき、浜田知明は21歳でした。そして、昨年100歳を迎えた画家が今なお抱え続ける原点の思いでもあります。通算5年に及ぶ過酷な従軍生活の後、27歳で終戦を迎え、中断を余儀なくされた画家の活動を再開。1950年、32歳で駒井哲郎や関野凖一郎らと交流しながら本格的に銅版画制作を開始し、戦争経験を糧に『初年兵哀歌』シリーズを生み出しました。

初年兵として抱えた心の痛みに留まらず、侵略者としての自己にもまなざしを向けたこのシリーズは、銅版画ならではの冷たいマチエールが印象的です。否応無く戦争に巻き込まれる人間の哀しみを、敵味方を超えて表現し、戦後日本の版画に新たな地平を開きました。
その後の浜田が描いたのは社会や人間、そして自分自身の諷刺です。鋭くユーモラスな主題と造形で社会の本質を突き、弱く愚かな人間への愛を作品にこめました。60代から手がける彫刻にも、造形の魅力が詰まっています。
本展では、寄贈により近年新たに収蔵した作品を中心に、初期から近年までの銅版画約90点と彫刻作品4点を当館所蔵品からご紹介。あわせて、浜田と前後して銅版画による新しい表現を追い求めた駒井哲郎、瑛九、浜口陽三、池田満寿夫らの作品も展示し、合計約150点をご堪能いただきます。
100歳を迎えようとしてもなお、深いまなざしで時代を見つめ続ける浜田の軌跡を追うことは、現代の私たちへの大きな問いかけとなるでしょう。


InternetMuseumの動画を追加しました。

町田市立国際版画美術館 浜田知明 100年のまなざし
1章 兵士のまなざし 刻み込んだ記憶 1951-1954年
2章 社会へのまなざし 「見えない戦争」を描く 1956-1974年
InternetMuseum



町田市立国際版画美術館 浜田知明 100年のまなざし
3章 人へのまなざし 愛しいかたち 1974-2002年
InternetMuseum



町田市立国際版画美術館 浜田知明 100年のまなざし
4章 新しい表現を求めて 1950年代の銅版画表現 
5章 記憶をつなぐ 時代を見つめつづけて 
InternetMuseum

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