典雅と奇想―明末清初の中国名画展
特別展 「典雅と奇想―明末清初の中国名画展」は、
泉屋博古館(六本木)で開催されています。
前期 2017年11月3日(金・祝)~11月19日(日)
後期 11月21日(火)~12月10日(日)
この展覧会は、静嘉堂文庫美術館で開催中の特別展「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」(10月28日~12月17日)との連携企画です。
静嘉堂文庫美術館では、明清時代の二大潮流、呉派と浙派の作品、そして日本人画家への継承を検証する展示でしたが、
こちらは明末から清への朝廷移行期に(動乱期に)活躍した画家という視点・・・・
前朝の人民として義を守り、新朝に仕えなかった「遺民」
隠遁生活を送った画家
明、清両朝に仕えた「弐民」
それぞれの画家人生から生まれた典雅な、そして奇想の作品に注目しています。
展覧会の構成は次の通りです。
Ⅰ文人墨戯
Ⅱ明末奇想派
Ⅲ都市と地方
Ⅳ遺民と弐民
Ⅴ明末四和尚
米万鍾 「寒林訪客図」
明・16-17世紀 橋本コレクション
呉彬 「渓山絶塵図」
明・万暦43年(1615) 橋本コレクション
呉彬は万暦年間に宮廷画家を務めていたとされ、明代の奇想派を代表する画家。
長大な画面に描かれた重力を無視するようにそびえる奇怪な山容表現は、古画の学習や実景の観察から生み出されたもので、マニエリスティックな造形感覚は明末の豊かで不安定な世相を象徴しているよう。
徐渭 「花卉雑画巻」(部分)
明・万暦3年(1575) 東京国立博物館
徐渭は、詩書画や戯曲に優れるも不遇で失意と狂気の放浪生活を送った。
にじみや、かすれを駆使した自由な筆致は激烈な表現から晩年は淡白で柔和な淡墨となる。妻を殺害した罪により六年間に及ぶ獄中生活をへた徐渭は55歳で釈放となる。「史甥」なる人物が酒と河蟹を持ち絵画を求めたのに応じたのがこの作品
重要文化財 八大山人 「安晩帖」
清・康煕33年(1694) 泉屋博古館
米万鍾 「柱石図」
明・17世紀 根津美術館
米万鍾は、呉彬とともに明代の奇想派を代表する画家。
友石、友隠の号からわかるように怪石趣味をもち、彼の収蔵する奇石を巻物に描かせたり、また、奇石だらけの庭「勺園」を築き、それも呉彬に描かせている。
龔賢 「山水長巻」(部分)
清・17、世紀 泉屋博古館
龔賢は崑山(江蘇省)の人。全体に均一な淡墨で山水が描かれているが人物を描くことはなく、山や雲や樹木または水辺と屋舎という少ないモチーフが白黒の最低限の色数によって描きだされ、幻想的な空間に寂莫たる山水景が出現している。
重要文化財 石濤 「黄山図巻」(部分)
清・康煕38年(1699) 泉屋博古館
HPの解説。
中国の明時代末期(16世紀後期-17世紀前期)は、反乱や飢饉など政治的経済的混乱から不安な時代が続き、ついには北方の異民族であった清の支配へと大きく社会が変動しました。明に仕えた画家たちは追われる中で絵を描く者や新たに清朝に仕えるなど、先の見えない時代の中で創造力を発揮したのです。
この明末清初(16世紀後期~18世紀初)の中国には、主流となった呉派を発展させた正統派の画家が活躍する一方で、彼らの典雅な山水表現に背を向けた異端の画家たちが現れます。呉彬はじめ徐渭や石濤、八大山人から清初の惲寿平など、これらの画家たちは非常に個性的で、人目を驚かすような奇想的ともいえる造形を生みだしました。彼らの作品は、中国絵画史の中では長く等閑視されてきましたが、近年の研究によってその造形的魅力が広く認識されはじめています。
本展は、当館のコレクションを軸として、他の美術館・博物館所蔵の名品優品をこれに加え、「典雅と奇想」という切り口で明末清初の中国絵画を見直し、歴史の変動期に生きた画人たちを紹介するものです。
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