シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才
シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才は、
国立西洋美術館で開催されています。
会期 2017年2月28日(火)~2017年5月28日(日)
「天才といわれる芸術家は、その作品が十代で既に認められて、そして早世」というイメージがありますが、シャセリオーはまさに、
10代の初めに師アングルに入門を許され「いずれ絵画のナポレオンになる」と言わしめた早熟の天才で、37歳の時に没しています。
シャセリオーは、活躍したパリではなくカリブ海の旧植民地生まれで、父親の不在、師との葛藤が、
オリエンタリズム、エキゾチックな画家と言われる素養を育んだのだとも・・・
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アングルがローマへ旅立ち、パリに残された16歳のシャセリオーが手がけた自画像。
シャセリオーは自分の容姿を好んでいなかったし、周囲の人々もそう感じていたようですが、粋な魅力があり、その振る舞いは優雅だったようです。(自画像も写真もほとんど残していないそうです)
《自画像》
油彩・カンヴァス 99×82cm 1835年 ルーヴル美術館
やがて、シャセリオーは、新たな芸術表現を探求したロマン主義の動きを吸収していく中で、イタリア旅行で文化・芸術に触れるなどの経験が、師との決裂をもたらしました。
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シャセリオーが残した肖像画は、家族や友人たちを描いたものが殆どで、その作品から画家の交友関係や私的な生活の様子を垣間見ることができます。
当時のパリの社会生活を彷彿とさせる肖像画の、その人物表現力、画力には・・・シャセリオーの真骨頂を見る思いがしました。
《カバリュス嬢の肖像》
油彩・カンヴァス 135×98cm 1848年 カンペール美術館
カバリュスは、当時のパリで最も美しい女性に数えられた一人で、医師の娘だそうです。
画面全体を同系の色調に統一して、パールのグラデーションのようなドレスに端正な面立ちはとても魅力的です。
「フランス人の容姿ではないのでは?」という向きもあるようで・・・・
《ドサージュの肖像》
油彩・カンヴァス 99×82cm 1850年 フランス外務省
モデルはフランスの外交官として各国を渡り歩き、七月王政期(1830-1848年)には長く外務省の政務長官を務めたエミール・ドサージュ伯爵です。(HPから)
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イタリア旅行後、
シェイクスピアやバイロン、ラマルティーヌなどの文学を重要な着想源として、抒情に満ちた新たな物語画の世界を色彩豊かに創造していきます。(HPから)
この様な傾向は、世紀末象徴主義の画家とされるモローやルドンらの作品へとつながります。
《アポロンとダフネ》
油彩・カンヴァス 53×35cm 1845年 ルーヴル美術館
ギュスターヴ・モロー
《アポロンとダフネ》
油彩・カンヴァス 53×35cm 制作年不詳 パリ、ギュスターヴ・モロー美術品
《気絶したマゼッパを見つけるコサックの娘》
1851年 油彩・板
ストラスブール美術館(ルーヴル美術館より寄託)
《泉のほとりで眠るニンフ》
油彩・カンヴァス 137×210cm 1850年 CNAP(アヴィニョン、カルヴェ美術館に寄託)
モデルは名高い高級娼婦アリス・オジーです。奔放で気性の激しいこの美女に画家は翻弄された末、2年で関係は終わりました。(HPから)
展示会場には隣にクールベの裸婦画、また破局の原因となったシャセリオーの初期の女性肖像画も展示されています。
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1846年5月、マルセイユ経由でアルジェリアに旅立ち、7月諸初頭までコンスタンティーヌやアルジェに滞在します。
この旅は、シャセオリーの後期作品の画風に大きな影響を与えました。
オリエント、東方地域の人、風景に取材した作品は、後の画家(例えば印象派の画家)にも見られますね。
《コンスタンティーヌのユダヤの娘》
油彩・カンヴァス 52.5×40.3cm 1846-1856年 エティエンヌ・ブレトン・コレクション
《雌馬を見せるアラブの商人》
油彩・板 40.5×54.5cm 1853年 ルーヴル美術館(リール美術館に寄託)
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アルジェリア旅行を挟んで1844年から48年にかけて取り組んだシャセリオーの代表作品とされる会計検査院のの大階段の壁画は、パリコミューンの騒乱で焼かれてしまい、断片だけが残り美術館に保存されています。この作品は独力で描いた壁画としては19世紀フランスで最大のもののひとつに数えられるそうです。
1853年から53年にかけてサン=ロック聖堂の礼拝堂壁画を制作。
間もない、1856年に37歳で急逝しています。
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展覧会の構成は以下の通りです。
Ⅰアングルのアトリエからイタリア旅行まで
Ⅱロマン主義へ 文学と演劇
Ⅲ画家を取り巻く人々
Ⅳ東方の光
Ⅴ建築装飾 寓意と宗教主題
展覧会場の風景
以下の画像は「展覧会主催者からの提供の公式写真」です。
HPの解説。
本展はフランス・ロマン主義の異才テオドール・シャセリオー(Théodore Chassériau 1819-1856)の芸術を日本で初めて本格的に紹介するものです。アングル門下の異端児テオドール・シャセリオーは、10代の初めに師に入門を許された早熟の天才ですが、ロマン主義の潮流の中でしだいにアングルの古典主義を離れ、独特のメランコリックな情熱と抒情を湛えた作品世界を作りあげていきました。アルジェリアを旅して彼の地の人々や風物を色彩豊かに描いたシャセリオーはオリエンタリスム(東方趣味)の画家にも数えられます。しかしカリブ海のスペインの旧植民地に生まれ、父親不在の寂しさや師との芸術的葛藤を抱えつつ独自の芸術の道を模索したこの画家自身が内面に異邦的(エキゾティック)なるものを持っていました。神話や聖書、シェイクスピア文学の一場面にせよ、東方主題にせよ、あるいは人々の肖像にせよ、いずれの作品にも漂う「エキゾティスム」こそがシャセリオー芸術の本質であり、観る者の心に響きます。
今日ではフランス・ロマン主義を代表する画家に数えられるシャセリオーですが、37歳で早逝したことや代表作の壁画が破壊されたこともあって正当な評価が遅れ、フランスでも回顧展の開催は1933年と2002年を数えるのみです。本展では、ルーヴル美術館所蔵品を中心に、絵画約40点、水彩・素描約30点、版画約10点、写真や資料などによってシャセリオーの画業全体を紹介するとともに、師や仲間、そしてこの画家から決定的な影響を受けたギュスターヴ・モローやピュヴィス・ド・シャヴァンヌらの作品約20点もあわせて展示し、ロマン主義から象徴主義への展開、そしてオリエンタリスムの系譜のなかでその芸術の意義を再考します。今回の展覧会は、フランスでもその作品をまとめて見る機会が少ないシャセリオーの作品世界に触れる絶好の機会となることでしょう。
19世紀フランス・ロマン主義の異才 『シャセリオー展』2/28から上野・国立西洋美術館【TBS】
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シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才|migle(ミグル)
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