没後40年 髙島野十郎展 ―光と闇、魂の軌跡
目黒区美術館で開催されています。
会期 2016年4月9日(土)~6月5日(日)
髙島野十郎作品展は、過去に何度か開催され、観てきましたが(三鷹、柏・・)、この巡回展は総集編ですね。
髙島野十郎の作品といえばロウソクを思い浮かべ、また、孤高の画家ということも印象にあると思います。
この展覧会に資料として、
旧制八高時代の同級生の娘にあてた手紙が展示されています。
制作に役立つだろうと送った彼女の気遣いの品を断りながら
「世の画壇と全く無縁になる事が小生の研究と精進です」と述べています。
生涯独身で熱心な仏教徒でもあった野十郎は写実を極め、作品を観る人に描く過程を想像させることで、描くことの意味を考えさせることで、何を伝えたかったのでしょうか?
描くことに対する、執念、誠実さを感じる展覧会でした。
以下、箇条書きで、簡単な経歴とともに・・・
福岡県久留米市の酒造家で裕福な家庭の四男として生まれた野十郎は、子供の頃から絵を描くのが好きでした。展覧会の初めに旧制高校の時に書いた油彩画が展示されています。
蓮華
明治37-42年頃 油彩・画布 個人蔵
秀才の野十郎は東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業しますが、画家への道を選択します。
本展には野十郎が描いた恩師の肖像画も展示されています。
外山亀太郎先生像
昭和16年 油彩・画布 東京大学大学院農学生命科学研究科 生産・環境静物専攻
坂本繁二郎の研究会参加などを経て、31歳で個展(赤坂の溜池)を開催します。
(現在確認できる最初の作品発表)
青木繁と高島野十郎の兄が友人であった関係で坂本繁二郎・・・?
野十郎は、兄から宗教的影響も受けていた。
絡子をかけたる自画像
大正9年 油彩・画布 福岡県立美術館
煙(夜の)
大正10年 油彩・板 個人蔵
その後、個展、グループ展などで作品発表を行い、40歳の時、北米パナマ経由で欧州に向かい、パリを中心に各国を訪れて、その地で描いた作品を残しています。
ノートルダムとモンターニュ通
昭和7年頃 油彩・画布 福岡県立美術館
約3年の滞欧後帰国し、故郷の久留米にアトリエを設け、個展を開いたりして過ごし、45歳で上京し北青山に住みます。
菊とリンゴ
昭和10年以降 油彩・画布 個人蔵
空襲で被災した野十郎は一時期福岡にある姉の嫁ぎ先で疎開生活を送ります。(55歳)
古池
昭和20-22年頃 油彩・画布 個人蔵
58歳で上京し北青山に住みます。
からすうり
昭和23年以降 油彩・画布 個人蔵
オリンピックの開催のための道路拡張工事で立ち退きを求められ、71歳の時、千葉県柏市にアトリエを設け移転します。
林径秋色
昭和36年 油彩・画布 個人蔵
桃とすもも
昭和36年 油彩・画布 個人蔵
今度はアトリエが宅地造成予定地となり、同市の茅葺小屋に転居(81歳)。
蝋燭
制作年不詳 油彩・板 個人蔵
月
昭和38年頃 油彩・画布 個人蔵
生涯独身の野十郎は野田市の養護老人ホームで85歳の人生を終えます。
(髙島野十郎は、生前1~数年おきに銀座資生堂、日本橋丸善などで個展を開催して、作品を発表しています)
展示構成は以下の通り。
第1章 初期作品
第2章 滞欧期
第3章 風景
第4章 静物
第5章 光と闇
資料
HPの紹介記事。
髙島野十郎(1890-1975)は「孤高の画家」「蠟燭の画家」として、NHK「日曜美術館」でも再三取り上げられるなど、近年多くの人々から注目を集めている洋画家です。
明治23(1890)年、福岡県久留米市に酒造家の四男として生まれた野十郎は、東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業。その後、念願であった画家への道を選び、敢然と歩みだしました。「世の画壇と全く無縁になることが小生の研究と精進です」とする野十郎は、独力で油彩技法の研究を重ね、会派や団体などには所属せず、家庭を持つことさえ望まず、自らの理想とする写実的な絵画を生涯にわたり追求し続けました。
野十郎の超俗的な画業は、生前には広く知られることはありませんでしたが、福岡県立美術館によって「再発見」され、その後は展覧会を重ねるにつれ、単なる再現的描写を超えた生命観あふれる精緻な写実表現、光と闇に込められた高い精神性が、ますます評価されています。
本展の巡回は髙島野十郎没後40年にあたる平成27(2015)年にスタートしました。孤高の画家・髙島野十郎の到達点とも言える「蠟燭」や「月」シリーズ、さらには「すいれんの池」や「からすうり」をはじめとする風景画や静物画など、代表作を数多く含む約140点を、五つの大きなトピックに沿ってご覧いただきます。また、近年新たに発見された作品、これまで紹介されたことのない作品、科学的調査による技法分析結果などもまじえ、人々の心と目を引き付けて止まない髙島野十郎の深遠なる絵画世界の全貌に迫る、「決定版」ともいえる展覧会となっています。
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