安田靫彦展
安田靫彦展は東京国立近代美術館で開催されています。
会期 2016年3月23日~5月15日
会期中展示替えがあります。
作品単品は、度々見ていても、回顧展という形で全体像として見直すと、「素晴らしさが増幅する」という経験は度々あります。
この展覧会もそんな展覧会でした。
解説にある表現
「美しい線」、「澄んだ色彩」、「無駄のない構図」
納得ですね。
そして、意図する空気感が見事に伝わってきます。
衣服等々の模様のち密な描写、その色彩対比の見事さも注目です。
時系列での展示ですので、時代(世相)と作品という観点からも思いを巡らせることになります。
展覧会の構成は以下の通りです。
1章 「歴史画に時代性をあたえ、更に近代感覚を盛ることは難事である」1899-1923
2章 「えらい前人の仕事には、芸術の生命を支配する法則が示されている」1924-1939
3章 「昭和聖代を表象するに足るべき芸術を培ふ事を忘れてはならない」1940-1945
4章 「品位は芸術の生命である」1946-1978
HPの解説から・・・
《黄瀬川陣(きせがわのじん)》や《飛鳥の春の額田王(ぬかだのおおきみ)》など歴史画の名作で知られる安田靫彦(1884‐1978)。東京・日本橋に生まれ、日本美術院の再興に参画し、中核のひとりとして活躍しました。「美しい線」、「澄んだ色彩」、「無駄のない構図」……。日本画に対して誰もが抱くこのようなイメージは、すべて靫彦が作ったといっても過言ではありません。また、生涯かけて歴史画に取り組み、誰も描かなかった主題にゆるぎないかたちを与え、古典の香り豊かに表現したことも特筆されます。東京国立近代美術館では1976年に回顧展を開催しており、本展覧会はちょうど40年ぶりの開催となります。教科書や切手で見たあの有名作品から、初公開となる作品まで、100点を超える代表作を一堂に集める本展は、端正で香り高い靫彦芸術の魅力を再確認するまたとない機会となるでしょう。
また、94年の人生を生きた靫彦は、若くして亡くなった菱田春草や今村紫紅とさほど年も違わないながら、昭和戦前期のナショナリズムの高揚や戦後の価値観の激変を、身をもって経験しています。時代の大きな流れのなかで、靫彦は何をどう描いたか、そしてそれはどのように変わっていったのか。本展では、靫彦の生きた時代の問題も視野に入れながら、彼の画業をたどりたいと思います。
明治32年[15歳]
吉野訣別 伊豆市
写実性が顕著な作品。
明治41年[24歳]
守屋大連(もりやのおおむらじ) 愛媛県美術館蔵
良寛の肖像画も2点ありました。安田靫彦は良寛書が好きなんだそうです。
出雲崎の良寛堂は安田靫彦の設計ですね 。訪れた時に知りました。
大正9年[36歳]
五合庵の春 東京国立博物館
ユニークな風神雷神図ですね。ルーツはあるようです。
昭和4年[45歳]
風神雷神図 公益財団法人 遠山記念館
なんとも、美しい。
昭和12年[53歳]
花づと
頼朝と義経の視線は合いません、この空気感。
昭和15年/昭和16年[56-57歳]
黄瀬川陣 東京国立近代美術館
昭和22年[63歳]
王昭君 足立美術館
昭和31年[72歳]
伏見の茶亭 東京国立近代美術館
昭和39年[80歳]
飛鳥の春の額田王 滋賀県立近代美術館
昭和50年[91歳]
富士朝暾 京都国立近代美術館
安田靫彦は94歳ので亡くなりましたが、まさに素晴らしい日本画を描き続けた人生だったんですね。
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コメント
10代で既に完璧に近い画力を習得し、美意識の変遷、綿密な歴史的考察を重ね、今生きている時代の美しさの表現への昇華。回顧展ならではの素晴らしい展覧会だと思いました。
投稿: PlneWoodさんへ | 2016.05.15 01:58
昨日、本展を観て来ました。パンフも完売で盛況でした。熱心にメモを取りながら見入っている人も多かったです。線描の美に思わず息を飲みましたー。そして美は簡潔性にあり!匂い立つミューズ…。晩年には色彩感にも溢れてー。15,6才の頃から大人びた絵を描いた天才肌で、そこがパブロ・ピカソの歩む道とも似ているようなー。ピカソもキュビズム等を経て、盟友アンリ・マチスと共に簡略化したモダニズムへと突き進む…。日本画の画壇も印象派等の西欧絵画の衝撃も受容し、壁画や水墨画等の古典技法を踏襲しつつ腕を磨いていった。安田絵画の魅力も総合的に開かれたリアルさ。鉄線描とその慎重な構成力と大胆さは劇画世代の若者層にも共感を呼ぶ事だろう…。
投稿: PineWood | 2016.05.14 12:39