開館20周年記念展 初期浮世絵展 −版の力・筆の力−
開館20周年記念展 初期浮世絵展 −版の力・筆の力−は千葉美術館で開催されています。
会期 2016年1月9日(土)~2月28日(日)
浮世絵の展覧会は専門館も含め頻繁に開催されていますが、初期浮世絵に特化した展覧会は意外となかった様な気がします。そういう意味でも、とても勉強になり、また楽しい企画展です。千葉市美術館の企画展は、視点がいいですね。
浮世絵の始祖と位置付けられる菱川師宣、続く、杉村治兵衛の墨摺絵入本、墨摺筆彩、紙本着色屏風、肉筆画に浮世絵の始まりを思い。
初代鳥居清倍、連なる鳥居派絵師の墨摺に丹を筆彩する丹絵、荒事の役者絵には迫力を感じます。
懐月堂安渡が率いた懐月堂派の肉筆画の立美人図、この印象深いパターン化した図像は、もうお馴染みですね。
安く大量にという意図が働いているんですね。
特定の客層を相手にした宮川派の作品も魅力的です。
浮世絵版画のアイデアマン奥村正信は、やつし絵(見立て絵)柱絵、紅絵、洋画の遠近法を取入れた浮絵(中途半端さもまた妙味に思えてくるから面白い)等で新分野を開拓し人気を集めた。
そして紅刷り絵から多色刷りの錦絵へ・・・・・大好きな鈴木春信の浮世絵数点で、この企画展の締めくくりです。
内容豊富な図録もいいですよ。
展覧会の構成は以下の通りです。
プロローグ 浮世の楽しみ −近世初期風俗画
1 菱川師宣と浮世絵の誕生 −江戸自慢の時代
2 荒事の躍動と継承 −初期鳥居派の活躍
3 床の間のヴィーナス −懐月堂派と立美人図
4 浮世絵界のトリックスター −奥村政信の発信力
5 紅色のロマンス −紅摺絵から錦絵へ
HPの解説から。
新興都市江戸に暮らす人々が、太平の世に自信と愛着を深めていく17世紀後半、浮世絵の始祖と位置付けられる菱川師宣(?-1694)が活躍を始めます。流行の衣裳に身を包む美人たち、人々を熱狂させた歌舞伎、そして江戸における日々の愛すべき暮らしなど、今に生きる楽しみを積極的に肯定する浮世絵は、時代を謳歌する気分とも相俟って、高い人気を得ることになりました。浮世絵は、木版画として広く人々に普及しましたが、量産による値段の安さ、また当世の流行を即時に取り入れた木版画制作の速さという特徴が、庶民に至るまで気軽に絵を楽しむことができるという世界でも稀な文化状況を育んだのです。一方で肉筆画、すなわち日本絵画の伝統的な技法で描く屏風や掛軸、絵巻物などの形式でも制作され、富裕層の需要も満たしていたのです。
どのように浮世絵は生まれ、発展し、なぜ近代に至るまでの高い人気と需要を継承できたのでしょうか。本展覧会では、大英博物館、シカゴ美術館、ホノルル美術館をはじめ海外からの里帰り品を含めた版画・肉筆画の名品約200点により、浮世絵草創期の世界を紹介、版と筆それぞれの表現の魅力を探ります。新しい都市の活況を伝え、時代のダイナミックな動きに呼応して、素朴ながらも力強い存在感を発揮した初期浮世絵の美を十分ご堪能いただけることでしょう。
近世初期風俗画から菱川師宣前後の浮世絵誕生の状況、鳥居清信(1664-1729)や鳥居清倍(生没年不詳)が歌舞伎絵界に圧倒的な地位を築く初期の鳥居派、浮世絵界のトリック・スター奥村政信(1686-1764)や石川豊信(1711-85)の多様な活躍、そして高度な多色摺木版画技法、すなわち錦絵が誕生する鈴木春信(1725?-70)の登場までを通観する、日本初の総合的な初期浮世絵の展覧会です。
菱川師宣 角田川図 絹本着色 1幅 延宝7年(1679)
千葉市美術館蔵
杉村治兵衞 「遊歩美人図」 貞享期(1684-88)頃
シカゴ美術館蔵
初代鳥居清倍 「金太郎と熊」 正徳期(1711-16)頃
ホノルル美術館蔵
懐月堂安度 「立美人図」 宝永・正徳期(1704-16)
千葉市美術館蔵
5 鈴木春信 鞠と男女 中判錦絵 明和4年(1767)頃
千葉市美術館蔵
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