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2015.07.25

ヘレン・シャルフベックーー魂のまなざし

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6/2〜7/26 今週末で終了です。
東京藝術大学美術館(上野)


ヘレン・シャルフベックは3歳のときに事故で左足が不自由になり杖の生活になります。家庭教師に学び育つなか、絵の才能を見出され、奨学金でパリに渡ります。パリでは、マネ、セザンヌ、ホイッスラーなどの画家の影響を受けます。フィンランドに帰国後は、教師をしながら製作を続けますが、母の介護のためヘルシンキの郊外の街に移り住み絵画製作を続け、独自の世界を作ります。若き日と50歳を過ぎての失恋、晩年は一人、ホテルで製作を続けました。
晩年の、静物画と自画像には心動かされました。
失恋から立ち直りつつある精神的自画像とされる「快復期」の少女の眼差しが印象に残ります。


展覧会の構成は以下の通りです。
第1章 初期:ヘルシンキ―パリ
第2章 フランス美術の影響と消化
第3章 肖像画と自画像
第4章 自作の再解釈とエル・グレコの発見.
第5章 死に向かって:自画像と静物画

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雪の中の負傷兵  1880年 油彩、カンヴァス
フィンランド国立アテネウム美術館
この作品でよってパリ行きの奨学金を手にしました。

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日本の花瓶にはいったスミレ 1890年 油彩カンヴァス ユレンベリ美術館

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《快復期》(1888年)は、1889年のパリ万博で銅メダルを獲得し、現在は国立アテネウム美術館を代表する作品。
失恋(一方的な婚約破棄)から立ち直りつつある精神的自画像とされる。


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《お針子(働く女性 )》 1905年 油彩、カンヴァス アテネウム美術館
パリで若い画家たちの尊敬を集めていたホイッスラーの灰色と《黒のアレンジメント(母の肖像)》をイメージソースとしたといわれる作品。


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赤いりんご 1915年 油彩、カンヴァス アテネウム美術館

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黒い背景の自画像  1915年油彩、カンヴァス アテネウム美術館


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諸島から来た女性 1929年 油彩、カンヴァス アテネウム美術館

晩年のシャルフベックはスウェーデンの療養付ホテルで2年間を過ごし、自画像や静物画を描いた。
その作品の変容には心が動かされます。
展覧会の第5章(最終章)は、 この画家の究極のリアリズムを感じさせます。


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黒いりんごのある静物 1994年 油彩、カンヴァス ディドリクセン美術館


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自画像 光と影 1945年 油彩、カンヴァス ユレンベリ美術館

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2015.07.20

没後30年 鴨居玲展 踊り候え

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5/30〜7/20
東京ステーションギャラリー(丸の内)で今日までです。

「手にデッサンのタコが出来ていないのは画家ではない」という画家としての姿勢を 保ち続けた鴨居の絵は、違和感なく、直球で、すんなりと、その情感が伝わってきます。
最終章のデッサン作品にも注目です。

本人曰く「鴨居の画業の初期とは37~38歳でそれ以前の作品はほとんどつぶしてしまった」と・・・
この展覧会では、19歳の時に描いた自画像に始まり、鴨井の作風が確立するまで(南米滞在中のメキシコ人画家ラファエル・コロネルの作品と出会い、安井賞受賞)
スペイン、パリ時代各地で出会った社会の底辺に生きる人々に自らを投影し描き上げた作品。
帰国後の描き続けることへの葛藤の日々、そして57歳での自死まで、ほぼ時系列で展示構成されています。

展示構成は以下の通りです。
第1章 初期〜安井賞受賞まで
第2章 スペイン・パリ時代
第3章 神戸時代  一期の夢の終焉
第4章 デッサン


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夜(自画像)1947年 油彩、カンヴァス 笠間日動美術館蔵
制作時19歳、「自画像の画家」 と称された鴨井の最初期の自画像。
若いころ、鴨居は宮本三郎に師事しています。


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赤い髪 1959年 ガッシュ、パステル、紙
鴨居は、油彩に行き詰まりを感じます。
日本画壇を抽象美術が席巻した時代、油彩の制作に苦悩し、ガッシュやパステルで月を題材によく描いた。


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静止した刻 1986年 油彩、カンヴァス 東京国立近代美術館蔵
安井賞受賞作。南米滞在中にメキシコ人画家ラファエル・コロネルの作品と出会い、影響を受け、その後の作風の方向付け になった。
(本人は否定)


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教会 1976年 油彩、カンヴァス ひろしま美術館蔵
人物以外の鴨居のテーマは「教会」です。スペインンの田舎に行っている時、一番、強く感じたのは『何故、自分は神を持っていないのか』ということでした。

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私の村の酔っ払い(A) 1973年 油彩、カンヴァス 笠間日動美術館所蔵
スペインのラ・マンチャ地方にあるバルデペーニャスに移り住んで人生最良の時を過ごした鴨居は、終生のモチーフをいくつも見出した、。


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蛾 1976年 油彩、カンヴァス
パリ時代の鴨居の画面はスペイン時代のそれと異なり、やや淡く、色数を増やして、明るくなってゆく。

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裸婦 1982年 油彩、カンヴァス
1997年帰国して、新たに向き合った画題の一つが裸婦であったが思うように描けず、葛藤と焦燥感に苛まれた。


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1982年 私 1982年 油彩、カンヴァス
クールベの《画家のアトリエ》の構図を模したとされる作品。哀楽をともにしたモデルたちに囲まれた鴨居自身の半開きの口は「これ以上何が描けるのか」と、声なく叫ぶようで痛々しい。


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勲章 1985年 油彩、カンヴァス 笠間日動美術館所蔵
自死するおよそ半年前に描かれた作品。

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踊り候え 1979年 パステル、紙

HPの解説

人間の内面を見つめ、自らの心魂をキャンヴァスに描き出した鴨居玲。その東京では25年ぶりとなる回顧展を開催します。
金沢で生まれた鴨居玲(1928-1985)は、新聞記者の父の転任に伴い、子どものころから転校を重ね、一所に留まらない性分から、南米・パリ・ローマ・スペインを渡り歩きました。各地で出会った社会の底辺に生きる人々をモティーフに作品を制作しますが、そのいずれもが自身を投影した自画像ともいわれます。
ときに、ユーモアに溢れ、芝居っ気たっぷりに、人を煙に巻くかと思えば、絶望感にとらわれ、酒に溺れ、自殺未遂を繰り返す。繊細でひたむきな破滅型の人生が、そのまま暗く沈んだ重厚な画面に、劇的な姿となって表わされています。そして、人の心の奥底に潜む暗部を注視し、己れの内なる孤独と苦悩を吐露しながら、心身を削るように描かれた作品は、見る者の胸に迫り、強く訴えかけてきます。
没後30年にあわせて開催する本展では、10代の自画像から遺作まで、57年の生涯で残された油彩の代表作をはじめ、素描、遺品など約100点を一堂に展示し、今もなお、多くの人を惹きつけてやまない鴨居玲の崇高な芸術世界をご紹介します。


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2015.07.12

観てきた展覧会備忘録(6/29〜7/5)

美術館などのHPは随時更新されますので予めご理解ください。
タイトルをクリックするとHPにジャンプします。

⚪︎没後30年 鴨居玲 踊り候え

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5/30〜7/20
東京ステーションギャラリー(丸の内)

人間の内面を見つめ、自らの心魂をキャンヴァスに描き出した鴨居玲。その東京では25年ぶりとなる回顧展を開催します。
没後30年にあわせて開催する本展では、10代の自画像から遺作まで、57年の生涯で残された油彩の代表作をはじめ、素描、遺品など約100点を一堂に展示し、今もなお、多くの人を惹きつけてやまない鴨居玲の崇高な芸術世界をご紹介します。
(HPから)

「手にデッサンのタコが出来ていないのは画家ではない」というのが鴨居の画家としての姿勢ということです。
流麗な線描はその表れですね。
哀愁をおびた、ユーモラスな人物像はとても魅力的で、作品に出合った瞬間ひきつけられます。
晩年の作品、「私」「出を待つ(道化師)」は晩年の苦悩を象徴的に表しているようで胸を打ちます。

学生時代に宮本三郎に師事し、デッサンの重要性を叩き込まれたそうです。
現在、国立近代美術館の常設展示室で開催されている「誰がためにたたかう?」に宮本三郎の戦争画が展示されています。自由が丘には宮本三郎記念館があります。こちらを観てくるのもいいかと・・・
 

⚪︎金沢の町家‐活きている家作職人の技‐展

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6/4~8/22
LIXILギャラリー(京橋)

職人技の継承に努力されている方々には敬意を感じます。
私の子供のころは、我が家の建て替え等で大工さんの作業を見る機会も多かったので、この展示で新しい発見はもちろんあるのですが、懐かしい感じで見てきました。若い方々には新鮮に映るでしょうね。


⚪︎「クリエイションの未来展」第4回 伊東豊雄展 「ライフスタイルを変えよう -大三島を日本で一番住みたい島にするために-」

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6/4~8/22
LIXILギャラリー(京橋)

伊東さん、忙しいでしょうね、あちこちで地域おこし、ユニークな建物設計・・・必然的に展覧会等々で頻繁に見る機会があります。
地域活性化に協力、参加している人々のインタビューも別室で放映されています。
見ていて、わくわくしてきました・・・行ってみたいな~。


⚪︎着想のマエストロ 乾山 見参!

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5/27〜7/20
サントリー美術館

この企画展が新日曜美術館(NHK)で詳しく紹介され、勉強になりました。
ということで、知り得た知識で、復習しようと再訪しました。専門家の解説はありがたい!

⚪︎シンプルなかたち展:美はどこからくるのか
(終了しています)

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4/25〜7/5
森美術館

この企画展が気に入っていたのと、MAM初回企画展示をじっくり観る目的で再訪しました。


⚪︎MAMスクリーン 001 ビル・ヴィオラ初期映像短編集
(終了しています)
〜7/5
森美術館
70年代後半~80年代前半の初期映像5作品を約1時間で放映。

上映作品

1. 歯と歯のあいだ(1976年)9分10秒

2. 映りこむ池(1977-79年)7分

3. 日の老いたる者(天地創造の神)(1979-81年)12分21秒

4. ヴェジタブル・メモリー(1978-80年)15分13秒
5. 聖歌(1983年)11分30秒
製作年代を考えると、致し方無いのですが、解像度の低い映像で少々魅力に欠けますが、ビル・ヴィオラの製作意図は一貫しているな〜と思わせる1時間。チョット長かった・・・

⚪︎MAMリサーチ001「グレイト・クレセント:1960年代のアートとアジテーション――日本、韓国、台湾」
(終了しています)
〜7/5
森美術館


2013年に香港のオルタナティブ・スペース「Para Site(パラサイト)」で展示された企画を再構成したものす。
1960年代、それぞれ異なる道を歩みはじめた各地域で、欧米から輸入されたモダニズムではなく、自分たちのリアルな表現を模索した反体制的、反芸術的な活動を、比較検証する試みです。

出品作家:張照堂(チャン・チャオタン)、チェ・ブンヒョン、莊靈(チュアン・リン)、キム・グリム、ハイレッド・センター、黄華成(ホヮン・ホヮチェン)、ジョン・ガンジャ、カン・クッジン、小野洋子、ゼロ次元、
(HPから)

時代背景が自身の人生と重なる部分も多く、懐かしく、かつ考えさせられた企画展。
小野洋子のこのビデオは頻繁に登場すな〜、若い世代が、政治に敏感に反応し、行動したあの頃。
当時の東アジアの政治的、社会的状況と若者たちの意思表示とその方法、翻って年齢を重ねた今の自分と、社会の関係はは?若者たちは?


◯国立新美術館に寄り道して公募展をチラ見・・高校生の作品の完成度の高さに驚き・・
(終了しています)

⚪︎高校生国際美術展

⚪︎公募30回 日本水墨院展

⚪︎陶芸文化振興財団 陶芸教室 陶芸財団展 陶芸展 公募展

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2015.07.03

観てきた展覧会備忘録(6/22〜6/28)

美術館などのHPは随時更新されますので予めご理解ください。
タイトルをクリックするとHPにジャンプします。

⚪︎錦絵誕生250年 フィラデルフィア美術館浮世絵名品展
春信一番!写楽二番!

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6/20〜8/16(展示替えあり)
三井記念美術館(日本橋)
本展はアメリカ・フィラデルフィア美術館が所蔵する4000点以上の浮世絵コレクションから150点の名品を厳選し、日本で初めて紹介するものです。
錦絵誕生以前の鳥居派の役者絵などの初期浮世絵をはじめ、錦絵草創期の鈴木春信の作品が特に充実し30点が揃うほか、一筆斎文調、勝川春章の役者絵や美人画、そして浮世絵黄金期の鳥居清長、喜多川歌麿、希少な東洲斎写楽の大首絵が10点、加えて葛飾北斎、歌川広重の風景画から上方浮世絵まで、浮世絵を代表する絵師たちの名品が揃い踏みし、浮世絵の歴史が学べるようなラインナップでご紹介いたします。(HPから)

春信の状態の良い作品を纏めて観る事が出来たのは収穫でした。
この展覧会のお勧めです。
一茎の芦に乗って川を渡る紅色の衣を着た女性を描いた鈴木春信 「 やつし芦葉達磨」は背景に浮き立つ女性が何とも言えない・・
清長の八頭身美人も好きだけど!
春信のこじんまりとした佇まいはいい。
写楽、歌麿の大首絵、上方の絵師の作品の展示もあります、北斎、広重も・・・
浮世絵の技法、歴史、変遷などの復習にも良いかもしれませんよ。
状態の良い作品が揃っていてハズレなしです。


⚪︎没後180年 田能村竹田 展

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6/20〜8/12
出光美術館(丸の内)
江戸時代の中頃、池大雅(いけのたいが)や与謝蕪村(よさぶそん)らによって大成された日本の文人画は、その後も中国への憧れを抱きつづけた文人たちによって継承され、幕末には大いなる発展をみました。その代表的な一人として、田能村竹田(たのむらちくでん 1777~1835)がいます。
竹田の眼が捉えた微細な光と彩り、そして生命あるものへの愛――。 本展では、没後180年を回顧し、出光コレクションが誇る名作を18年ぶりに特集展示いたします。他に類をみない繊細な感性をもって、秀逸な作品を数多く描き出した独自の世界、その魅力と実像に迫ります。(HPから)

文人画ってチョット苦手なイメージがあったのですが、
賛、等々の解説が丁寧で、作品理解を助けてくれました。
田能村竹田の人となりがよく分かります。
竹田作品はみじかに感じられるところも多くて、とてもいいですね。
出光美術館のコレクションは本当に多種多様ですね〜


⚪︎No Museum, No Life?―これからの美術館事典  国立美術館コレクションによる展覧会

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6/16〜9/13
東京国立近代美術館(竹橋)
本展は、国立美術館5館の合同展です。独立行政法人国立美術館は、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館の5館で構成され、2001年4月に発足して今年で15年目を迎えました。これら5館が協力して行うこのたびの展覧会は、2010年の「陰翳礼讃」展(国立新美術館)に続き2度目の開催となるものです。実に幅広い5館のコレクションから、ルノワールやロダンなどの作品はもちろん、私たちの常識に鋭く問いをつきつけるような現代の作品もご紹介します。(HPから)

美術館そのものをテーマにして、A〜Zまで36のテーマに分けて構成されています。
建築、美術館、収蔵、照明、裸体、オリジナル、保存修復、台座、額・・・・という具合に美術館に関わるあらゆる事象を網羅し、辞典風に纏めて展示しています。勿論作品そのものも170点展示されています。美術館の歴史、経済裏表まで、興味津々、2ヶ所を除いて撮影可です。

⚪︎事物-1970年代の日本の写真と美術を考えるキーワード

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5/26〜9/13
東京国立近代美術館(竹橋) ギャラリー4(2F)

この展覧会では、中平に加え、当時、同じく事物と写真をめぐるユニークな思考を重ねていた大辻清司の仕事を軸に、同時代の美術も視野に入れながら、事物と写真をめぐる当時の状況を考えます。(HPから)

中平卓馬は、「アレ・ブレ・ボケ」スタイルを否定し、事物をきちんと捉える「植物図鑑」的な写真を標榜するにあたって、アジェとエヴァンズの写真に大いに触発されました。
「要するに予断を捨て、判断を停止して、まっすぐに事物をみつめよという簡単なことだった」と、中平は記しますが・・・
事物と写真との相関関係について、大辻清司、篠山紀信、アジェ、エバンスの作品、議論を通して、同時代の「もの派」美術家の作品も含めて考察しています。
写真と撮る行為と事物そして表現としての作品・・・考えさせられました。

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