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2013.06.08

桂ゆき-ある寓話

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この展覧会は東京都現代美術館で4月6日~6月9日まで開催されています。
明日までです。


大正、昭和、平成を生きた作家の作品は懐かしさと新しさが交錯しているようで楽しいですよね。
戦前戦後を女性画家として自由奔放な作品世界を展開した桂ゆき、生誕百年記念展です。

展示は十代のときに手がけた植物スケッチ等々で始まります。
1930年代に試みた漆絵やコラージュ、ユーモアあふれる地獄絵などを展示。
1940年代から50年代にかけて、街に出てスケッチをするなど、社会の現実と向き合い、第五福竜丸がビキニ環礁で被爆した1954年には《人と魚》などを発表。
児童文学の挿絵も描き寓話的な作品を手掛ける。
19566年から1961年まで、パリ、中央アフリカ、ニューヨークへの長い旅に出て、スケッチ・ブックや写真機を手に、多様な環境のなかで暮らす人びとを取材、旅行記も出版していなす。展示会場にはスライド写真も放映されています。
1960年代半ば以降に多量に描かれた動物寓話の作品、この作品群がとても楽しかった。
同時期に手がけた沢山の本の装丁、挿画も沢山展示は、時代が反映されていて楽しいです。
1985年には、紅色の絹で女性の日常を取り巻く道具や持ち物を覆うインスタレーションを発表します。
この辺の発想、アイデアが女性アーティストらしい。

展覧会の構成は以下の通りです。
1 初公開となる初期の実験的な作品
2 社会との距離
3 長い旅
4 動物寓話
5 紅絹の道具たち

開催趣旨(HPから)


1935年にコラージュによる個展を開いた桂ゆき(1913年−1991年)は、およそ60年にわたり創作活動を展開した、戦前と戦後を繋ぐ女性芸術家のパイオニア的存在です。本展は、活動の拠点であった東京での初めての包括的な個展として、生誕百年を記念して開催されるものです。

触覚に根ざしたコルクや布などのコラージュ、油絵具による細密描写、そして戯画的な表現を桂が並行して展開したことは、独自の絵画のあり方を示すものとして戦前より瀧口修造や藤田嗣治等から注目されてきました。また戦後は、社会や人への透徹した眼差しと寓意表現を通して、ユーモアに溢れた、多層的な読み取りを可能とする作品を制作しています。旅と文学により培われた、あらゆるものを相対化する思考に支えられたその仕事には、前衛と日常、批評と笑い、日本の民俗的なものと西洋近代の普遍的なものを複眼的に捉える姿勢が貫かれているのです。それは、寓話の脇役から主人公を眺めること、制作した絵を90度回転させること、対象に被膜を纏わせることなど、ちょっとした視点の操作によって、今まで当たり前に捉えてきたことに再考を促すものでした。

本展は、独自の寓意表現を通して、人とモノ、生き物を、その境界を越えて自由に行き来させた桂の作品世界を、絵画の代表作、そして初出品の作品や本の仕事などによって紹介し、欧米の前衛とは別の文脈で育まれた創作の意味を多角的に検証するものです。あらゆるものから自由な態度を貫いた桂の仕事。本展はその複雑で奥深いユーモアに触れる絶好の機会となるでしょう。

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《無題》 1930 油彩・カンヴァス

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花田清輝著 冒険と日和見」 (1971年創元社刊) 装画、カット 

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ベラ・ヘルド原作 木島始 文 「びちこちゃんおけっこん」 (1971年 福音館書店刊) 原画 アクリル・紙

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《無題》(部分) 水彩、鉛筆/紙 

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《抵抗》 1952年 油彩・カンヴァス

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《人と魚》 1954年 油彩・カンヴァス

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《無題》 1985年 赤絹 、綿

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《おいも》 1987年 油彩・カンヴァス

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《作品》 1938-1939年頃 油彩・カンヴァス

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