夏目漱石の美術世界展
この展覧会は東京藝大学術美術館で、5月14日~7月7日まで開催されています。
その後、静岡県立美術館に巡回します。(7月13日~8月25日)
展示風景(写真)は、主催者の許可をいただいて撮影したものです。
漱石文学は、学生の頃に坊ちゃんをはじめ数冊読んで、最近?(2~3年前)青空文庫で、『こころ』を読み返しました。でも、あまり熱心な読者ではありません。
しかし、この企画の視点はとても面白いですね。
漱石文学と美術・・・・考えもしませんでした。
まさに、チラシのコピー『みてからよむか』
今後、漱石の作品を読むと(読みながら)この展覧会の記憶が蘇ってくるでしょうね、きっと。
会場の展示作品には、相当する小説のの文章が引用されています、例えばこんなふうに・・・・
ジョセフ・マロード・ウイリアム・ターナー《金枝》 1834年
坊ちゃんの一節。
「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの絵にありそうだね」と赤シャツが野だに云うと、野だは「全くターナーですね。どうもあの曲がり具合つたらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙って居た。
漱石の文学作品や美術批評に登場する画家、作品を可能な限り集めたこの企画展には伊藤若冲、渡辺崋山、ターナー、ミレイ、青木繁、黒田清輝、横山大観、他の作品展示されていて、そこに寄せる漱石の、それこそ、こころが伝わってきます。
また、「漱石もこんな絵を描いていたんだ~」何て言うのもこの展覧会の楽しみの一つです。
装丁、挿画展示コーナーでは漱石と親交のあった画家の作品も展示されています、時代の空気が伝わってきますね。
展覧会の構成は以下の通りです。
序章 「吾輩」が見た漱石と美術
第1章 漱石文学と西洋美術
右の作品
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《シャロットの女》 1984年
有りの儘なる浮世を見ず、鏡に映る浮世のみを見るシャロットの女は高き台にただ一人住む。活ける世を鏡の裡にのみ知る者に、面を合わす友のあるべき由なし。
『薤露行』
第2章 漱石文学と古美術
新井経 酒井抱一作《虞美人草図屏風》(推定試作) 2013年
『虞美人草』に登場する、おそらく架空の存在であろう抱一画の屏風を小説の文面から推定試作した作品。
第3章 文学作品と美術 『草枕』 『三四郎』 『それから』 『門』
ジャン・バティスト・グルーズ《少女の頭部像》18世紀後半 (右の作品)
グルーズ原作 和田英作模写《少女》 19-20世紀
二三日前三四郎は美学の教師からグルーズの絵を見せてもらった。其時美学の教師が、この人の画いた女の肖像はオプチュアス!な表情に富んでいると説明した。池の女の此時の眼付を形容するには是より外に言葉がない。
写真に右の作品 佐藤央育 原口画伯作《森の女》(推定試作) 2013
作者が三四郎を読み返しながら、描いた推定試作。
第4章 漱石と同時代美術
第5章 親交の画家たち
第6章 漱石自筆の作品
小説『こころ』原稿
第7章 装丁と挿画
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