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2013.06.23

夏目漱石の美術世界展

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この展覧会は東京藝大学術美術館で、5月14日~7月7日まで開催されています。
その後、静岡県立美術館に巡回します。(7月13日~8月25日)

展示風景(写真)は、主催者の許可をいただいて撮影したものです。


漱石文学は、学生の頃に坊ちゃんをはじめ数冊読んで、最近?(2~3年前)青空文庫で、『こころ』を読み返しました。でも、あまり熱心な読者ではありません。
しかし、この企画の視点はとても面白いですね。
漱石文学と美術・・・・考えもしませんでした。
まさに、チラシのコピー『みてからよむか』
今後、漱石の作品を読むと(読みながら)この展覧会の記憶が蘇ってくるでしょうね、きっと。

会場の展示作品には、相当する小説のの文章が引用されています、例えばこんなふうに・・・・

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ジョセフ・マロード・ウイリアム・ターナー《金枝》 1834年
坊ちゃんの一節。

「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの絵にありそうだね」と赤シャツが野だに云うと、野だは「全くターナーですね。どうもあの曲がり具合つたらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙って居た。

漱石の文学作品や美術批評に登場する画家、作品を可能な限り集めたこの企画展には伊藤若冲、渡辺崋山、ターナー、ミレイ、青木繁、黒田清輝、横山大観、他の作品展示されていて、そこに寄せる漱石の、それこそ、こころが伝わってきます。
また、「漱石もこんな絵を描いていたんだ~」何て言うのもこの展覧会の楽しみの一つです。

装丁、挿画展示コーナーでは漱石と親交のあった画家の作品も展示されています、時代の空気が伝わってきますね。

展覧会の構成は以下の通りです。
序章 「吾輩」が見た漱石と美術
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第1章 漱石文学と西洋美術
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右の作品
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《シャロットの女》 1984年

有りの儘なる浮世を見ず、鏡に映る浮世のみを見るシャロットの女は高き台にただ一人住む。活ける世を鏡の裡にのみ知る者に、面を合わす友のあるべき由なし。
『薤露行』


第2章 漱石文学と古美術
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新井経 酒井抱一作《虞美人草図屏風》(推定試作) 2013年
『虞美人草』に登場する、おそらく架空の存在であろう抱一画の屏風を小説の文面から推定試作した作品。


第3章 文学作品と美術 『草枕』 『三四郎』 『それから』 『門』
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ジャン・バティスト・グルーズ《少女の頭部像》18世紀後半 (右の作品)
グルーズ原作 和田英作模写《少女》 19-20世紀

二三日前三四郎は美学の教師からグルーズの絵を見せてもらった。其時美学の教師が、この人の画いた女の肖像はオプチュアス!な表情に富んでいると説明した。池の女の此時の眼付を形容するには是より外に言葉がない。

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写真に右の作品   佐藤央育 原口画伯作《森の女》(推定試作) 2013
作者が三四郎を読み返しながら、描いた推定試作。

第4章 漱石と同時代美術
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第5章 親交の画家たち


第6章 漱石自筆の作品
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小説『こころ』原稿


第7章 装丁と挿画
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2013.06.15

Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術

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この展覧会は横浜美術館で2013年4月13日(土曜)から6月16日(日曜)まで開催されています。
この展覧会も明日までです。 

政治、宗教、男女差別、領海、貧困、民族争い、生と死、表現方法は現代を生きる表現者にとっては色々あります。この展覧会では逼近の問題として取り上げている作品が沢山あります。
このような企画展も矢張り観ておくべきかと・・・・上手く説明できませんが。

HPの紹介記事です。


「Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術」は、東南アジアの8か国[シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア]25組の作家による、1999年以降の作品[立体、絵画、映像、写真ほか]28点をご紹介する展覧会です。歴史的事実に取材した古来の神々やキリスト教の聖人が登場するロベルト・フェレオによる祭壇、陶製のレンゲに親子の物語を描いたチャン・ユンチア、今ではその存在が消えつつある海の遊牧民を追ったザイ・クーニンの映像など、この他日本初公開の作品を含む東南アジアの多様な作品を紹介します。
「ジャングル」という言葉は、「無秩序な、文明化されていない」といった意味を持つサンスクリット語の「ジャンガラ」に由来するといわれます。都市化が進み、かつての密林とは異なる姿を見せる東南アジア。多様な文化や価値観が共存し、ジャングルさながらの密度と熱気を帯びた東南アジアの現代美術をご覧ください。


以下展示風景です。
一定条件のもと撮影可でしたので、iPhoneで撮ってきました。

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2013.06.12

現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ ロペス展

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この展覧会はBunkamuraザ・ミュージアムで4月27日~6月16日まで開催されています。
今週で終了です。

写実と言っても、その表現方法は多種に亘りますよね。
ロペスは、何しろ10年以上という長い時間をかけても、未だ手を加えると言う制作期間の長い作家です。
その作風は、平面、立体作品を問いません。
チラシ(2種類あり)に使われている、《グランピア》は、7年間、夏の朝の6時代に同じ場所で描きつずけたと言う作品です。
7年間のその場の空気が描き込まれているわけです。

決して、写真をなぞったような作品ではありません。

作品《トーレス・ブランカスからのマドリード》などは、よく見ると微細に書き込んだ部分と、そうでない部分が見てとれ、それが上手く調和して、重量感?さえ感じさせます、その制作過程、マチュエールにも注目です。

映画「マルメロの陽光」見のがしていました。
TSUTAYAに行ったけど、在庫なしで借りることが出来ませんでした、Youtubeにはあったけど・・・・

映画に登場する「マルメロの木」も展示されています。


HPの紹介記事です。

今日のスペイン美術を代表する作家アントニオ・ロペス(1936~)は、その卓越した技術と観察力によってリアリズムを追求しながら独自の世界を描き出しています。また、マルメロを描く作家自身の姿を撮った映画『マルメロの陽光』(監督:ビクトル・エリセ)は、日本でも公開され話題を呼びました。ロペスは10年を経てもなお絵筆を入れるほど、制作期間の長い作家であり、そのため寡作家として知られています。
本展では、ロペスの日本初の個展として、初期の美術学校時代から近年までに手がけた油彩、素描、彫刻の各ジャンルの代表作を厳選して紹介します。

展覧会の構成は以下の通りです。
●故郷
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《花嫁と花婿》 1995年 油彩・キャンヴァス 国立ソフィア王妃芸術センター蔵

●家族
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《夕食》 1971-80年頃 油彩・板 カルメン・ロペス氏蔵


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《マリアの肖像》 1972年 鉛筆・紙 マリア・ロペス氏蔵


●植物
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《マルメロの木》 1992年 油彩・キャンヴァス フォクス・アペンゴア財団蔵

●マドリード
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《トーレス・ブランカスからのマドリード》 1874-82年 油彩・板 マルボロ・インターナショナル・ファイン・アート蔵


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《グラン・ピア》 1974-81年 油彩・板 個人蔵

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《グラン・ピア》を制作中のロペス 1978年

●静物
●室内
●人体
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《子どもたちの頭》 1996年以降 石膏、他 作家蔵

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2013.06.08

桂ゆき-ある寓話

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この展覧会は東京都現代美術館で4月6日~6月9日まで開催されています。
明日までです。


大正、昭和、平成を生きた作家の作品は懐かしさと新しさが交錯しているようで楽しいですよね。
戦前戦後を女性画家として自由奔放な作品世界を展開した桂ゆき、生誕百年記念展です。

展示は十代のときに手がけた植物スケッチ等々で始まります。
1930年代に試みた漆絵やコラージュ、ユーモアあふれる地獄絵などを展示。
1940年代から50年代にかけて、街に出てスケッチをするなど、社会の現実と向き合い、第五福竜丸がビキニ環礁で被爆した1954年には《人と魚》などを発表。
児童文学の挿絵も描き寓話的な作品を手掛ける。
19566年から1961年まで、パリ、中央アフリカ、ニューヨークへの長い旅に出て、スケッチ・ブックや写真機を手に、多様な環境のなかで暮らす人びとを取材、旅行記も出版していなす。展示会場にはスライド写真も放映されています。
1960年代半ば以降に多量に描かれた動物寓話の作品、この作品群がとても楽しかった。
同時期に手がけた沢山の本の装丁、挿画も沢山展示は、時代が反映されていて楽しいです。
1985年には、紅色の絹で女性の日常を取り巻く道具や持ち物を覆うインスタレーションを発表します。
この辺の発想、アイデアが女性アーティストらしい。

展覧会の構成は以下の通りです。
1 初公開となる初期の実験的な作品
2 社会との距離
3 長い旅
4 動物寓話
5 紅絹の道具たち

開催趣旨(HPから)


1935年にコラージュによる個展を開いた桂ゆき(1913年−1991年)は、およそ60年にわたり創作活動を展開した、戦前と戦後を繋ぐ女性芸術家のパイオニア的存在です。本展は、活動の拠点であった東京での初めての包括的な個展として、生誕百年を記念して開催されるものです。

触覚に根ざしたコルクや布などのコラージュ、油絵具による細密描写、そして戯画的な表現を桂が並行して展開したことは、独自の絵画のあり方を示すものとして戦前より瀧口修造や藤田嗣治等から注目されてきました。また戦後は、社会や人への透徹した眼差しと寓意表現を通して、ユーモアに溢れた、多層的な読み取りを可能とする作品を制作しています。旅と文学により培われた、あらゆるものを相対化する思考に支えられたその仕事には、前衛と日常、批評と笑い、日本の民俗的なものと西洋近代の普遍的なものを複眼的に捉える姿勢が貫かれているのです。それは、寓話の脇役から主人公を眺めること、制作した絵を90度回転させること、対象に被膜を纏わせることなど、ちょっとした視点の操作によって、今まで当たり前に捉えてきたことに再考を促すものでした。

本展は、独自の寓意表現を通して、人とモノ、生き物を、その境界を越えて自由に行き来させた桂の作品世界を、絵画の代表作、そして初出品の作品や本の仕事などによって紹介し、欧米の前衛とは別の文脈で育まれた創作の意味を多角的に検証するものです。あらゆるものから自由な態度を貫いた桂の仕事。本展はその複雑で奥深いユーモアに触れる絶好の機会となるでしょう。

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《無題》 1930 油彩・カンヴァス

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花田清輝著 冒険と日和見」 (1971年創元社刊) 装画、カット 

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ベラ・ヘルド原作 木島始 文 「びちこちゃんおけっこん」 (1971年 福音館書店刊) 原画 アクリル・紙

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《無題》(部分) 水彩、鉛筆/紙 

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《抵抗》 1952年 油彩・カンヴァス

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《人と魚》 1954年 油彩・カンヴァス

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《無題》 1985年 赤絹 、綿

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《おいも》 1987年 油彩・カンヴァス

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《作品》 1938-1939年頃 油彩・カンヴァス

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2013.06.01

牧野邦夫 ―写実の精髄―展

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この展覧会は練馬区立美術館で4月14日~6月2日まで開催されています。
明日までですね。

数年前に茅ヶ崎美術館の講演会で牧野邦夫を知りました。
牧野邦夫は茅ヶ崎美術館の開設に関わっています。
それ以来、何時か企画展覧会が開催されるといいなと思っていました。
今回、練馬美術館で大規模な回顧展が開催され、早速行ってきたのですが、今頃の投稿です。

会場にこんな言葉が展示されていました

絵を描く時、一番強い表現は写実だと思っています。写実とは大体ドラクロア以前の描き方の事を私は言っています。それが感動するのです。で、私はこの表現方法を学ぼうとしています。

レンブラントに憧れ、師に「一日12時間以上描かなければ歴史に残る画家にはなれない」と言われ、画壇の潮流に流されることなく写実を追求した牧野にとって、絵を描く事が生きることだった。

レンブラントが自画像を多く残したように、牧野も自画像を多作した。
そこには、やがて細密描写に幻想的なモチィーフが加わっていきます。

そして、レンブラントに30年遅れをとっていると思っていた牧野は50歳の時、未完の塔の制作に取り掛かる。
十年に一層づつ描き90歳で完成させるという・・・・・しかし61歳の時、病にたおれます。
キャンバスから突き出た先頭は石膏と油絵具で出来ているそうです。

展覧会の構成は以下の通りです。
Ⅰ自我の中の夢想 ―牧野レンブラントを目指す(1950~1965年)
Ⅱ滞欧以後の牧野 ―透徹した写実と幻想(1966から1975年)
Ⅲ官能と霊魂 ―精密描写は止まらない(1975~1986年)

HPの紹介記事

牧野邦夫(1925~86年)は、大正末に東京に生まれ、1948年に東京美術学校油画科を卒業しますが、戦後の激動期に次々に起こった美術界の新たな潮流に流されることなく、まして団体に属して名利を求めることなどからは遠く身を置いて、ひたすら自己の信ずる絵画世界を追求し続けた画家です。
高度な油彩の技術で、胸中に沸き起こる先鋭で濃密なイメージを描き続けた牧野の生涯は、描くという行為の根底に時代を超えて横たわる写実の問題と格闘する日々でした。レンブラントへの憧れを生涯持ち続けた牧野の視野には、一方で伊藤若冲や葛飾北斎、河鍋暁斎といった画人たちの系譜に連なるような、描くことへの強い執着が感じられます。また、北方ルネサンス的なリアリズムと日本の土俗性との葛藤という点では、岸田劉生の後継とも見られるでしょう。
生前に数年間隔で個展を開くだけだった牧野の知名度は決して高いものではありませんでしたが、それは牧野が名声を求めることよりも、自分が納得できる作品を遺すことに全力を傾注した結果でしょう。
本展は、1986年61歳で逝去した牧野の30余年にわたる画業から生み出された珠玉の作品約120点を紹介するものです。


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未完の塔

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海と戦さ 1975年

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武装する青年 1972年

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雑草と小鳥 1986年

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