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2013.04.29

ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り

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この展覧会は森アーツセンターギャラリーで3月9日〜5月19日まで開催されています。


アール・ヌーボーの象徴的存在として、ミュシャ、は人気があって見る機会も沢山あります。
少々食傷気味という方もおられるかもしれませんね。

過去にも似たような企画がなかったわけではありませんが、今回の展覧会は「第5章 パリ万博と世紀末」「第6章 ミュシャの祈り」に象徴的に見られるように、チェコ人として、スラブ民族としてのミュシャの人生に底通した祖国愛、信念を土台とした(重きを置いた)展示構成になっています。
ミュシャを一躍時の人にした、見慣れたあのサラベルナールのポスターにも新し発見があるかもしれませんよ。

ミュシャの画家としての人生、一人のチェコ人としての世界観を見つめ直す良い機会になるかもしれません。
次の言葉が今回の展覧会を象徴しているように思えます。
「彼にとっての成功とは、自分のためのものではなく、祖国のためのものだった」と・・・・

展示構成は以下の通りです。
第一章 チェコ人ミュシャ
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パレットを持った自画像 190年頃 油彩・カンヴァス


第2章 サラベルナールとの出会い
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ジスモンダ 1894年 カラーリトグラフ

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メデイア 1898年   カラーリトグラフ

第3章ミュシャ様式とアールヌーボー
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ショコラ・イデアル 1897年  カラーリトグラフ


第4章 美の探求
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夢想 1897年 カラーリトグラフ


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四季:冬 1900年 カラーリトグラフ


第5章 パリ万博と世紀末
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1900年パリ万国博覧会 オーストリア館 1900年 カラーリトグラフ


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百合の聖母 1905年 油彩・テンペラ カンヴァス

第6章 ミュシャの祈り
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希望の光 1933年 油彩・カンヴァス

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≪スラヴ叙事詩 第9番〈クジージュキの集会〉≫の大型習作 1916年頃 パステル・紙 

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1918‐1928 チェコスロヴァキア共和国独立10周年記念 1928年 カラーリトグラフ

HPの紹介文から

日本でも絶大な人気を誇るアルフォンス・ミュシャ(現地読みでは「ムハ」)の展覧会はこれまでも数多く開かれてきましたが、ミュシャ人気を支えているのはなんといっても数々の独創的なポスターや、美人画と花鳥画を合わせたような華やかなカラーリトグラフです(いわゆる「装飾パネル」)。つまりグラフィック・アーティストとしてのミュシャですが、1895年の新春公演のためパリ中に貼り出されたサラ・ベルナールのためのポスター《ジスモンダ》で、彼が彗星のようにデビューしたことはよく知られています。それまでは書物の挿絵のような地味な仕事をしていたミュシャがほとんどなんの前触れもなく《ジスモンダ》の華麗なミュシャに変身したのはある意味では謎ですが、以後、祖国に帰るまでのおよそ25年間、ミュシャはパリのアートシーンに君臨します。
ミュシャの芸術はアール・ヌーヴォーを抜きにしては語れず、アール・ヌーヴォーはミュシャを抜きにしては語れません。「ミュシャ様式」という言葉は装飾性豊かな彼個人の様式を指すと同時に、アール・ヌーヴォーの代名詞のようにも使われますが、本展では「ミュシャ」と聞いた時、誰もが思い浮べるようなポスター、リトグラフの名作に加え、紙ではなくシルクサテンに刷った本邦初公開の《四芸術》シリーズの他、ロンドンのミュシャ財団秘蔵の極めて質の高い作品が多数展示されます。
ミュシャにはグラフィック・アーティストとしての他、油彩画家としての顔もあります。ミュンヘンの美術アカデミーで油彩画の本格的な修業を積んだミュシャは、グラフィック・アーティストとして成功した後も画家としての野心を捨てることなく、油彩画を描き続けました。その最大の、最終的な成果が壁画的なスケールの大画面から成る《スラヴ叙事詩》ですが、油彩画は版画と違い「1点もの」であるため、これまでのミュシャ展でも散発的、限定的に紹介されてきた感はあります。今回は自画像や家族の肖像をはじめ、「画家」としてのミュシャにも焦点を当て、およそ30点の油彩が出品されます。
ミュシャにはこのほか、シェイクスピア劇などのための舞台衣裳・装置、アクセサリー、キャンディーボックスなどのデザイナーとしての顔、作品の数は限られていますが彫刻家としての顔、挿絵画家としての顔、あるいは写真家としての顔(彼の交友関係や私生活の記録として、またとりわけ《スラヴ叙事詩》の取材メモとしても興味深いものです)など、様々な顔があります。本展はこうしたマルチタレント的なミュシャの全貌を明らかにしていますが、これまでのミュシャ展ではとかくアール・ヌーヴォーの、ベル・エポックのミュシャに焦点が合い過ぎている感がありました。ロンドンのミュシャ財団からの提案もあり、本展ではパリ時代のミュシャのみならず、祖国に帰ってからの、あるいはチェコ人としての彼の生涯と思想にも焦点を当て、全体を6章で構成しました。
ミュシャには「アール・ヌーヴォーのプリンス」、「ベル・エポックの寵児」、「世紀末のサクセス・ストーリー」といったイメージがつきまとい、それはそれで間違いありませんが、同時に彼は彼の出自であるスラヴ民族の歴史と運命に深い思いを抱く熱烈なナショナリストでした。パリでの華やかな成功と名声に甘んじることなく、第一次大戦の勃発(1914年)とほぼ時を同じくして祖国に帰り、長らくハプスブルク帝国の支配下にあった祖国の復興に尽くし、貧しく恵まれない人々のためのポスターや、新生チェコの切手、紙幣などのデザインを(ノーギャラで)引き受けたのもその表れでした。本展の副題「パリの夢 モラヴィアの祈り」にもそれは反映していますが、ミュシャにはまたアール・ヌーヴォー風の彼の作品からは想像しにくい世紀末の象徴主義、これとも関係の深い神秘的、オカルト的なものへの関心、パリとプラハのフリーメイソンのメンバーとしての顔など、いくつかの「知られざるミュシャ」も存在します。
「ミュシャマニア」という言葉が生まれるほどのミュシャの絶大な人気が一過性のものでなく、今なお健在で、欧米や日本ばかりでなく、例えば最近台湾でも本格的なミュシャ展が開催されるなど、その人気、注目度が一層の広がりを見せているのも、彼の人と芸術のこうした幅広さ、奥行にあると言えるでしょう。ミュシャ財団から厳選された240点を超える出品作で構成される本展は、人間およびアーティストとしてのミュシャの全体像をご覧いただく貴重な機会となることでしょう。

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2013.04.20

空想の建築 ―ピラネージから野又穣へ―展

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この展覧会は、町田市立国際j版画美術館で4月13日~6月16日まで開催されています。

ピラネージの作品を初めて観たのはこの美術館です、描かれた壮大な空間にたちまち魅了されてしまいました。
この美術館では過去に何度も展示され、観てきましたが飽きることはありません。
そして、野又穣の作品も瞬間的に人の目を引き付ける不思議な力がありますよね。

まあ二人の名前が並ぶと観に行かないわけにはいきませんよね。

但し、二人の作品展ではありません。

展示構成は以下の通りで、コウズミアヤ、阿部浩の作品コーナーも含め建築に纏わる過去現在の作家による空想の世界をたっぷりと楽しませてくれます。

Ⅰ.空想の古代 Part1 エジプトへの憧憬
  『<エジプト誌>古代編』

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デンデラ、大神殿柱廊内部(古代篇第4巻30葉) 

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メンフィスのピラミッド、南東から見たスフィンクスとピラミッド(古代篇第5巻11葉)

  ピラミッド幻想 ―阿部浩
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二本の棒または透明なピラミッド 1985年

Ⅱ.脳内に構築せよ、空想の伽藍を ―コイズミアヤ
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未知の信仰のための空の器(瞑想) 1998年

  
Ⅲ.空想の建築、その系譜 ―紙上の建築家たち
  1.ルネサンスからバロックそして近代へ

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原画:ピュ-テル・ブリュゲール(父) 版刻者:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン
放漫(「七つの大罪」より)

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ジュゼッペ・ガッリ・ダ・ビビエーナ(著・画)
『建築と遠近法』より「ポーランド大太子にしてザクセン選帝候太子の婚礼の儀の演劇の場面」

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クロード・ニコラ・ルドゥー(著・画)『芸術的見地から熟考された建築』


  2.物語を紡ぎだす幻想の建築
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惑星の部屋(№5) エリック・デマジエール 『バベルの図書館』より


  3.幻想の建築劇場
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過激『オセロ』第一幕 カール・フリードリッヒ・シンケル『舞台装置図集』より


  4.近代都市の幻想 ―魔都出現
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ヒュー・フェリス(著・画)『明日のメトロポリス』

Ⅳ.空想の古代 Part2 ―ピラネージの見た夢―壮大なローマ
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ハドリアヌス帝廟の巨大な地下土台(第4巻Ⅸ)

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火葬場の遺構の景観(第3巻Ⅳ)


Ⅴ.逍遥せよ、空想の建築の森を ―野又穣
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世界の外に立つ世界‐1 Nowhere-1 1993年

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都市の肖像  Babel 2005  2005年

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視線の変遷‐31 Points of View-31 


HPの解説から

絵画、立体、版画 … さまざまなかたちで人は現実には存在しない建築を創造してきました。本展では、遥か古代ローマに思いを馳せ、その空想的復元を版画として結実させたジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージや、壮麗なバロック的空間を描いた<紙上>の建築家たち、考古学的調査と想像力を駆使して古代エジプトの建造物を描いた18世紀末の絵師たち、そして今まさに創作活動を展開している現代の美術家までをとりあげます。それにより、空想によって構築された建造物の面白さ、美しさを探ります。世界を空想の建築というかたちで目に見えるものにしようとした人々の系譜が浮かび上がることでしょう。


 昨年25周年を迎えた国際版画美術館が、新たな飛躍をめざしてスタートを切る2013年春、この展覧会は版画のみならず、絵画や立体、書籍など、変化に富んださまざまなタイプの作品によって、見る者を遥かな世界へと誘うことをめざします。ヨーロッパの古い版画から現代美術まではばひろく<空想の建築群>を渉猟する得がたい機会となるにちがいありません。


 また本展開催にあわせ、特別展示として、出品作家の一人である野又穫(のまた・みのる)のドローイング展『ELEMENTS-あちら、こちら、かけら』を開催いたします。あわせて、ぜひご観覧ください。


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2013.04.15

マリオ・ジャコメッリ写真展

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この展覧会は東京写真美術館で3月23日〜5月12日まで開催されています。

白、それは虚無。 
黒、それは傷痕。

チラシに記されているフレーズですが・・・・。

この展覧会のキーワードは、ジャコメッリ自身の言葉そして友人、仕事仲間の言葉にあります。

「彼は写真家じゃないんだ、イメージの発明家なんだ」

「写真は絵画より、詩や文学に近い」
この展覧会の作品を見ていると、この言葉がすんなり頷けます。

そしてジャコメッリは語ります。
「もし私の人生の良かったことを挙げるなら、貧しかったことと、私が受けたすべての苦悩である」

ジョコメッリの「孤高の」といえる作品そのイメージは必見です。


HPの解説から


「黒」と「白」とを見事に操り、強烈なハイ・コントラストで「死」と「生」に立ち向かい、孤高の写真表現で現実(リアル)を抽象した120余点は、NHK新日曜美術館でも特別番組が制作されるなど、日本ではほとんど無名の海外作家の展覧会でありながら多くの来場者を迎え、大成功をおさめました。

 2回目にあたる本展覧会は、「ホスピス(死がやって来てお前の目を奪うだろう)」、「スカンノ」、「神学生たち(私にはこの顔を撫でてくれる手がない)」、「善き大地」などの代表作を中心に作品数を220余点と大幅に増やし、作家の本質へ切り込む構成となります。

 ジャコメッリは、1枚の素晴らしい写真で何かを語るのではなく、組み合わされた写真群で事物の本質へ迫ろうとする写真家です。そのような作家の営為の延長線上に今回の展覧会は位置づけられます。

 作品相互の関係が響きあうことにより、ジャコメッリ理解の深化をはかり、単なる回顧ではなく、現在尚写真表現の未来をも指し示しているジャコメッリの作家、人間双方の本質を明らかにする展覧会にご期待下さい。

展示作品は以下の通りです。

「初期作品」 1950-57
「死がやって来ておまえの目を奪うだろう」 1954-68 セニガッリア
「スカンノ」 1957-59  スカンノ
「ルルド」 1957-59  ルルド
「善き大地」  1964-66
「私にはこの顔を撫でてくれる手がない」 1961-63  セニガッリア
「シルビアへ」 1987  レカナーティ、セニガッリア
「男、女、愛」 1961-61  セニガッリア
「風景」 1960-2000  マルケの野
「帰還」 1960-2000  セニガッリア
「新しい移民たちの歌」 1985  カラブリア州
「私は誰でもない!」 1992-94 セニガッリア
「死がそうであるように」 1999  セニガッリア
「詩のために」 1980-90  セニガッリア

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「スカンノ」より


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「ルルド」より


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「自然についての認識」より

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「神学生たち」より

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2013.04.07

奇跡のクラーク・コレクション ―ルノワールとフランス絵画の傑作―

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この展覧会は三菱一号館美術館で2月9日〜5月26日まで開催されています。

この季節、美術館に行くか、新緑の里山を散策するかいつも迷ってしまいます。
そんなこともあって、この展覧会で私が一番気に入ったのがこの作品です。
まさにこんな風景の中を、一日歩いていたくなります。
モネは、決して恵まれていたとは言えない時代を過ごした?ジベルニューの町をどんな気持ちで歩き、眺めていたのでしょうか?


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クロード・モネ  ジベルニューの春
1890年 油彩・カンヴァス

「クラークはコレクション形成過程で外部の助言者や専門家の忠告に幻滅し、外部の専門家よりも自分自身の判断することを学んだ」そうです。
今この時点でも同様で、僭越ながら同感です。

チラシには、人生を美しく楽しく生きる幸せ。
と書いてありますが、この展覧会の中心はタイトルの通り数多くのルノワールの傑作展示にあります。

展覧会に行ったなら、まあ、そんなにせかせかと通り過ぎないで、ゆっくり椅子に腰かけて、絵画に囲まれた空間を楽しんではいかがでしょうか。

展覧会の構成は以下の通りです。
●印象はへの道  コローとバルビゾン派の画家たち
●光の画家  印象派の画家たち
●ドガ 古典と印象派をつなぐ画家
●印象派からポスト印象派へ

HPの解説

クラーク美術館(米国マサチューセッツ州ウィリアムズタウン)は、ルネサンス時代から19世紀末までの欧米の傑作を幅広く擁する美術館です。
そのコレクションは、最も有名なフランス絵画をはじめ、彫刻、絵画、素描、写真、さらには銀器や磁器を含む装飾美術まで多岐にわたります。
ニューヨーク・ボストンから車で約3時間。広大な森の中にあるこの美術館のコレクションについて、これまで日本ではほとんど知られていませんでした。2010年、同館の増改築工事に伴い、世界的にもとりわけ質の高い印象派を中心とした絵画の世界巡回展が初めて開催され、2013年2月、ついに日本に上陸します。ルノワール22点を筆頭に、コロー、ミレー、マネ、ピサロ、モネ・・・。まるで宝石箱のような、これまで目にしたことのない奇跡のフランス絵画73点が一堂に。
三菱一号館美術館で「人生を、美しく生きる幸せ。」に出会える幸運にどうぞご期待ください。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール  シャクヤク  1880年頃 油彩・カンヴァス

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ピエール=オーギュスト・ルノワール  劇場の桟敷席(音楽会にて)  1880年 油彩・カンヴァス


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ピエール=オーギュスト・ルノワール  金髪の浴女  1881年 油彩・カンヴァス


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ピエール=オーギュスト・ルノワール  鳥と少女(アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢)
1880年頃 油彩・カンヴァス

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ジャン=フランソワ・ミレー 羊飼いの少女 バルビゾンの平原 1862年 油彩、パネル

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ジャン=レオン・ジェローム 蛇使い  1879年  油彩、カンヴァス


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ジェームス・ティソ   菊   1874‐76年頃   油彩、カンヴァス

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クロード・モネ  エトルタの断崖  1885年   油彩、カンヴァス

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