« 松の内も今日まで | トップページ | 映画 ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人 »

2013.01.08

生誕90周年記念 山下清展

Photo

この展覧会は日本橋三越本店新館7階ギャラリーで2012 年12月27日~2013年1月14日まで開催されています。

どちらかと言うと映画やテレビドラマでその人生、人となりが知られている山下清ですが、その画家としての作品を見直す絶好の機会ですよ。
但し、混んでます(私の行った日はですが)

山下清は大正11年浅草の生まれです。
翌年には関東大震災が起き、焼け出された家族は父親の故郷新潟に転居します。
転居後暫くして体調を崩した清は闘病三ヶ月後に回復しますが軽い言語障害と知的障害を受けてしまいます。
不幸は続くもので、清が10歳の時、父親が他界してしまいます。
後に母は再婚し山下姓を名乗りますが2年で破局となります。
小学校に通う清は、当時の社会的な無理解もあって学校内で孤立し、やがて傷害事件を起こしてしまいます。
母親は、決断し千葉県市川市の八幡学園に転校させます。

学園での清は何もやらせても、あまり興味を示さず、長続きしなかったようです。
園長先生は、そんな清に貼絵をやらせてみることにしました。
清には、並はずれた「観察力」と「記憶力」があり、貼絵にその能力がいかんなく発揮されることになります。
早稲田大学で行われた学園の発表会を見た画壇の巨匠達や美術界で話題となります。

清は元々「出来れば一日中何もしないでのんびり過ごせたらいい」と言う性格です。
昭和15年学園の生活が嫌になったのか、学園を飛び出して14年にわたる放浪の旅が始まります。戦争が怖くて、徴兵検査が怖くてという事もあったようです。放浪から家、学園に一時戻りまた出かけるという生活の中、21歳の時に母親に徴兵検査に連れて行かれますが、不合格となります。

そして、31歳の時、清の人生の一大転期が訪れます。
日本美術のパターンですね、逆輸入です。
米紙「ライフ」が天才少年として取り上げたのを、日本のマスコミがみて大騒ぎ「天才放浪画家山下清を探せ」というキャンペーン記事を全国配信しました。
もう清は有名人、気ままな放浪生活のなどできない環境になってしまいます。
大ブームが起き全国を巡回した展覧会は記録的な観客を動員します。
清の放浪は、展覧会の巡回先を訪れるという形の旅に変わります。


画家としての成熟期を迎えた清は、決まった時間に仕事を始め、決まった時間に終えるとい几帳面な制作生活を送ったようです。
貼り絵に加え、油彩、ペン画、水彩、陶磁器の絵付けと制作範囲を広げ、旅もヨーロッパへと足を延ばします。

清は、旅の中で制作は殆んどしませんでした。
並はずれた記憶力を持っていた清は何の躊躇もなく記憶した風景を作品に反映できたようです。
見事なペン画作品を見ても分かるように、書きなおしは一切ありません。
貼絵も然り、ものすごいスピードで、手でちぎった色紙を下絵の画面に貼っていきます、機械的にとも思わせます、時に遠目で構成の確認はしますが。

一般的な色紙ですから、色数は多くありません、ちぎったり、よったりした膨大なピースで画面を構成して行きます。
完成したその作品は見るものを驚嘆させる力を持っています。
作品の保存が難しいようですね。

展覧会の構成は以下の通りです。
第一章 少年期の山下清
「昆虫と清」「学園での出来事」
学園を飛び出して、放浪へ
「戦争そして放浪へ」「旅の思い出」
「放浪時代の日本風景」
放浪を辞める誓い
「大捜査そして放浪の終止符」
「画家としてのスタート、時の人・山下清」
第二章 日本ぶらいぶらり
「作品になった日本の風景」
「風景画に生かされた清の静物画」
芸術家としての挑戦
「独特の手法で描かれた油彩」
「円熟期に目覚めた陶磁器」
「マジックペンで描かれた点描の世界」
第三章 ヨーロッパぶらいぶらり
「ゴッホへのあこがれ」
「貼り絵になったヨーロッパ」
「ヨーロッパの水彩紀行」
最後の大作・東海道五十三次

Photo
「ともだち」 貼絵 1938(昭和13)年


0001
「桜島」 貼絵 1957(昭和29)年

00014
「菊」 油彩 1949(昭和24)年~1956(昭和31)年頃

00011
「ソニコンロケト」 貼絵 1959(昭和34)年頃

00012
「皇居前広場〈東京〉」 版画 制作年不詳

0001
「パリのノートルダム寺院」 水彩画 1961(昭和36)年

00013
「ロンドンのタワーブリッジ」 貼絵 1965(昭和40)年

|

« 松の内も今日まで | トップページ | 映画 ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 生誕90周年記念 山下清展:

« 松の内も今日まで | トップページ | 映画 ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人 »