生誕100年 松本竣介展
この展覧会は、神奈川県立近代美術館葉山館で6月9日から7月22日まで開催されています。
会期末が近づいてきたので、慌てて行ってきたのですが、世田谷美術館にも巡回するんですね。
でも、間をおいて、また行くのも良いかと。
松本竣介といわれて、直ぐに思い浮かべる絵画といえば、かなりの方が、Y市の橋、ニコライ堂、工場、鉄橋、市街風景、このあたりの作品ではないでしょうか、所謂、無音の風景と称される作品群ですね。
開戦前夜から敗戦へと連なる8年間に描かれたものです。
13歳で聴覚を失った竣介は、兵役を免除されています。
画家に寄せられる時代の重圧に一生活者として、時代の情勢を見据えつつ、東京や横浜で何の変哲もない橋梁、川岸や工場を題材にスケッチを重ね、あの、何とも云えぬ詩情を湛えた作品を描き上げていきました。
そして、「立てる像」「画家の像」は、家族を思い、画家として、くじけそうになる自分自身への戒めと決意表明でもあるようです。
若き日、自分の個性を追求いながら、西欧の画家の手法も取り入れています。
ルオー、モジリアニ、嗣治、ミロ、クレー、ルソー、作品の前に立つと直ぐにその影響が観てとれる程です。
そんな時代から、所謂松本竣介の個性が際立つ作品、そして晩年の抽象化された表現の作品まで、10代から戦後間もなく36歳で人生を終えるまでの、絵画に加えノート、手帳、風景写真、家族あての手紙、本・雑誌の仕事等々松本竣介の人生と仕事、その全貌が展開されています。
この展覧会で新たに子供を描いた作品も大好きになりました。
初秋の頃 1928年 油彩・画布 岩手県立美術館
建物 1935年油彩・板に紙 神奈川県立近代美術館
街にて 1940年9月 油彩・板 下関市立美術館
画家の像 1941年8月 油彩・板 宮城県美術館
立てる像 1942年 油彩・画布 神奈川県立近代美術館
水を飲む子供 1943年頃 油彩・板 岩手県立美術館
リンゴ 1944年9月 油彩・板 株式会社小野画廊
Y市の橋 1943年 油彩・画布 東京国立近代美術館
建物1948年5月 油彩・画布 東京国立近代美術館
展覧会の構成は以下の通り。
展示の流れに、所々迷う事があったのが気になりました。
第Ⅰ章 前期
Ⅰ-1.初期作品
Ⅰ-2.都会:黒い線
Ⅰ-3.郊外:青い面
Ⅰ-4.街と人:モンタージュ
Ⅰ-5.構図
第Ⅱ章 後期:人物
Ⅱ-1.自画像
Ⅱ-2.画家の像
Ⅱ-3.女性像
Ⅱ-4.顔習作
Ⅱ-5.少年像
Ⅱ-6・童画
第Ⅲ章 後期:風景
Ⅲ-1.市街風景
Ⅲ-2.建物
Ⅲ-3.街路
Ⅲ-4.運河
Ⅲ-5.鉄橋
Ⅲ-6.工場
Ⅲ-7.Y市の橋
Ⅲ-8.ニコライ堂
Ⅲ-9.焼跡
第Ⅳ章 展開期
Ⅳ-1.人物像:褐色に黒
Ⅳ-2.新たな造形へ
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