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2012.06.09

近代洋画の開拓者 高橋由一展

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この展覧会は東京藝術大学美術館で4月28日~6月24日まで開催されています。

高橋由一の墓は広尾の祥雲寺にあります。広尾の商店街からチョット入った場所です。
子供のころは、広尾縁日によく行きました、5の付く日に開催されていたと思います。広尾銀映座という映画館もありました。東 千代之介 中村錦之助の世界です。
ちなみに東 千代之介は東京藝術大学の卒業生です。
祥雲寺は私の姉の同級生の実家でもあります。(と姉が行っていました)
それがどうした、ですよね。

私が子供のころの教科書にも、重要文化財の《鮭》は載っていました、大昔です。
この美術館でも何度か見ています。
高橋由一の作品は、あちらこちらの美術館の常設展示等々でよく見かけます。
でも、回顧展という形での開催は東京では初めてなんですね。

作品を観て、分かるように決して素晴らしく上手い絵画が並んでいるわけではありません。
「どうなんだろう」と思ってしまう絵もあると思います。

武家に生まれた由一は体が弱かった事もあって、由一(幼少のころから画才があり、狩野派の絵師に学んでいた時期もあった)を育てた祖父に武術を捨て画学の道に進むことを許されます。
西洋画(石版画)に接した由一はその衝撃から洋画研究を決意、イギリス人ワーグマンに師事し、翌年にはパリ万博に出展します。
その後、明治時代に入り民部省の画学教官など官職を務めるが明治6年(1873年)には官職を辞して画塾「天絵舎」を創設します。美術館建設の計画までありました。
イタリア人画家アントニオ・フォンタネージに師事するのは由一49歳の時です。
本展にも、「明治9年、49歳でフォンタネージに師事して本格的な油絵技法を習得しました。」という解説がありました。
展覧会のタイトルに「近代洋画の開拓者」とあるように、幕末明治の洋画の先駆者高橋由一の「油絵という技術で新しい日本に貢献する」という意気込みを感じさせてくれる、由一の人生の回顧展でもあります。
後半部分は、東北風景等々を描いた石版画下絵などが大量展示されていました。

66歳の人生のうち40年間は江戸時代だったという事を頭に入れて鑑賞するのも良いかと...。


展示構成は以下の通りです。

プロローグ 由一、その画業と事業
写生帖、肖像写真などの展示もあり、高橋由一の全体像を概観します。


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丁髷姿の自画像 笠間日動美術館 1866‐67年頃 油彩・麻布


1、油画以前
墨画、水彩画等の展示です。
博物館漁譜、山水画、猫図、三偉人(リンカーン、ビスマルク、ガリバルデイ)、ヒポクラテス像等々。


2、人物画・歴史画
矢張りこの作品が目立ちます。

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花魁(重要文化財) 東京藝術大学 1872年 油彩・麻布

なかなか、モデルになってくれる花魁がいなかったそうです。
モデルになったのは「新吉原、稲本楼の小稲です。
完成作品を見た小稲は「わたしはこんな顔じゃありません」と泣いて怒ったそうです。

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日本武尊 東京藝術大学 1891年 油彩・麻布


3、名所風景画
初代歌川広重(1797‐1858年)の代表作《名所江戸百景》が2代目広重によって完結したとき由一は数え32歳でした。由一は北斎や広重の全盛期を少年・青年期を過ごしました。
その影響は随所にみられます。

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芝浦夕陽 金刀比羅宮 1877年 油彩・麻布


4、静物画
由一は明治9年、49歳でフォンタネージに師事して本格的な油絵技法を習得しました。

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鮭 山形美術館寄託 1878年頃 油彩・麻布

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鮭図 笠間日動美術館 1879‐80年 油彩・板 

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鮭(重要文化財) 東京藝術大学 1877年頃 油彩・紙

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甲冑図(武具配列図) 靖国神社遊就館 1877年 油彩・麻布 

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桜花図 金刀比羅宮 1879‐80年 油彩・麻布

5、東北風景画
近代国家への道を歩むようになると、各地で土木建築事業が盛んに行なわれ、日本の風景も変化していきます。県令による委託で描かれた由一による石版画は、下絵と写真からの作画により制作されています。政治と芸術」という観点からも大変興味深く、日本の風景画の中でも「未曾有の真景図譜」と言われている作品です。

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山形市街図  山形県 1881‐82

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