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2012.02.25

生誕100年 藤牧義夫展 モダン都市の光と影

Fujimaki


この展覧会は神奈川県立近代美術館鎌倉館で1月21日から3月25日まで開催されています。

鎌倉方面に用事があったので、ついでにと言っては何ですが、行ってきました。

藤牧義夫(1911-1935?)は、創作版画の分野で1930年代に活動した木版画家です。1911年に群馬県館林に生まれ、少年期から絵の才能を示し、16歳で上京して働きながら独学で木版画を学びました。1932年に小野忠重ら22名によって結成された新版画集団に参加して頭角をあらわしますが、1935年に行方が分からなくなります。  藤牧は、関東大震災後に復興した1930年代の東京の風景を、上野や浅草などの町並みを中心に、独特の彫りによる木版画で表現しました。また、近世の伝統を継承しつつ、現代的な感覚で隅田川などに取材する長大な白描絵巻を描いています。藤牧義夫は、ごく短い制作活動ゆえに幻の版画家として一度は埋もれかけましたが、1978年の展覧会により再び注目を浴びました。  本展は、藤牧の生誕100年を記念して、失踪前に残された版画・素描・資料約200点で構成し、白描絵巻の全貌を紹介する映像展示など画期的な試みを加えて展観するものです。
美術館HP解説の引用です。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 東京に出るまで 1911(明治44)年~1927(昭和2)年
第2章 修業時代 1927(昭和2年)~1931(昭和6)年頃
第3章 新版画集団結成から《赤陽》まで 1932(昭和7年~1934(昭和9)年
第4章 白描絵巻以降 1934(昭和9)年~1935(昭和10)年
第5章 藤牧義夫関連文献

長年教職に就いていた父の死の翌年藤牧義夫は高等小学校を卒業します。さらに翌年、父の伝記を書いた自家製本「三岳全集第1巻」を完成します。この本が展示されていて、内容はディスプレーのスライドで観られます。その早熟さが分かります。

藤牧義夫の主題は上京してからの彼の生活の場であった上野や浅草を舞台とする都市風景、あるいは関東大震災から復興した新しい橋などの建築物また映画や演劇の空間に求められた。1934年第4回新版画集団展に出品した《赤陽》は上野広小路を描いたものだ。

ドイツ表現主義の影響があるともいわれますが、確かに、ケーテ・コルヴィッツの作品を想起してしまうような作品もありました。

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藤牧義夫《 朝(アドバルーン) 》1932年 
木版 
東京国立近代美術館蔵

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城沼の冬 1993年 木版 群馬県立館林美術館蔵

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藤牧義夫《 赤陽 》1934年 
木版、手彩色、一部コラージュ 
東京国立近代美術館蔵

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藤牧義夫《 つき 》(『新版画』第12号所収)1934年 
木版、手彩色 
神奈川県立近代美術館蔵


赤陽を製作した後手掛けた、白描絵巻が展示されています。前後期に分けての展示ですが
第5章の展示室大スクリーンで(映像で)全点見ることが出来ます。
巻物をまきながら観ている感じで絵が移動していきます。

面相筆の線のみで陰影をつけずに精緻に描かれたその作品はとても興味深く、かつ楽しめます。


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白描絵巻(隅田川絵巻)(昇華大学向島艇庫から三国神社まで)部分1934年 紙本墨画 東京都現代美術館

1934(昭和9)年の秋は藤牧義夫にとって一つの区切りとなった。6月に気管支カタルを患って夏には館林で静養し、やがてスケッチや水彩画を制作するなど回復の兆しが見えている。故郷館林では藤牧家も兄秀次の妻の実家新井家も日蓮宗の新興教団「国柱会」の熱心な信者であった。
帰郷した藤牧は国柱会が青年組織(精華会)を結成した9月9日・千葉県天津小湊の日蓮宗ゆかりの清澄寺を詣でている。
藤牧義夫も国柱会信者として期するものがあったと推察される。
白描絵巻が制作されたのはこの直後である。
まず、9月に隅田川下流、浜町公園から相生橋までの一帯を描く試みがなされたと推察され、続いて10月にかけて国柱会の本部江戸川区一之江の申考園を描いた《白描図絵巻(申考園)》が描かれる。
《白描図絵巻(絵巻隅田川)白鬚橋から西村勝三像周辺まで》とこれと画面がつながっている《白描絵巻(隅田川絵巻)(昇華大学向島艇庫から三国神社まで)》が制作されたのは(申考園)の後であり11月末に毎日隅田川方面に写生に赴いたと分かっている。

展覧会場の解説を引用しています。


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