猪瀬直樹著 東条英機 処刑の日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」
たまには本の話題でも。
今日は天皇誕生日ですね。
本の帯には、こう書かれています。
昭和23年12月23日午前0時1分30秒
皇太子明仁の誕生日になぜA級戦犯7人の死刑は執行されたのか?
プロローグで死刑執行の前日のGHQの担当官シーボルトの一日を追いかけています。その晩、そしていよいよ巣鴨での死刑執行までの、その段取りを7人の動静を、教誨師を含めて情景描写しています。
「なぜこれほど正確に、すなわち十二月二十三日零時一分三十秒に執行されなければならなかったのだろうか。念入りに予行演習をしなければ出来ない作業である」締めくくりの文章です。
一通の相談ごとの手紙が届きます。
祖母の日記が見つかり、その日記帳の記述は昭和23年12月7日で終わっています。
『ジミーの誕生日の件、心配です』と書かれて・・・
祖母はなにを心配していたのでしょうか。
相談者の祖母は子爵夫人。
そして相談者からその日記を預かることになります。
なぞ解きが始まります。
学習院の英語教師バイニング夫人は授業中に使う呼び名を全生徒につけました。皇太子明仁に付けた呼び名がジミーです。
昭和20年の関東大空襲の頃から23年の死刑執行の日までを過去と現在を往還しながら、その謎を追いかけていきます。相談者に、森ビル、根津美術館、岡本太郎美術館、骨董通り等で会って説明するという進行になっていて、こちらも過去、現在の背景を際立たせています。
戦争開始前の御前会議、そして開戦。政治家、軍人の動静、終戦の年、戦争責任、政治家、軍人の身の処し方、GHQ、マッカーサー、日本を収めるための天皇の処遇、東京裁判、憲法、皇室典範、皇太子明仁を巡る軍人、そして侍従たちの懸念。そして子爵夫人の生活、恋愛。
なるほど、なるほどの連続で読み応え有ります。
読み終えて、何よりも、今上天皇の戦後を思うと、その背負った重圧に何とも言えない気分になってきます。その慰霊行幸のお姿を思い返してしまいます。
梯久美子の解説も良いですよ。
猪瀬直樹氏は、子爵夫人の日記に残された謎を解き明かしながら、アメリカが日本に仕掛けた対日占領政策の大きな構図を浮かび上がらせていく。それによって、現代の日本と占領期の日本との間に漂う霧のような薄闇を払って行くのである。
目次
プロローグ
第一章 子爵夫人
第二章 奥日光の暗雲
第三章 アメリカ人
第四章 天皇の密約
第五章 四月二十九日の誕生日
第六章 退位せず
終章 十二月二十三日の十字架
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