生誕100年記念 瑛九展
この展覧会は埼玉県立近代美術館とうらわ美術館の共催で、9月10日~11月6日まで開催されています。
瑛九というとこの作品、というイメージがなかなか浮かんでこなかったのですが、この展覧会でしっかり確認できました。
主催者の気持ちのこもったとても良い展覧会です。
瑛九(本名・杉田秀夫)は眼科医の次男として生まれ文化的にも恵まれた環境に育ちます。14歳で東京の美術学校に入り、19歳で写真学校にも通います。
14歳で描いた「秋の日曜日」という油彩画が展示されていますが、その横には「赤い帽子」という竹下夢二の影響がもろに反映したような作品もあります。
瑛九は絵画の勉強をしながら10代のころから美術評論や写真評論を発表するかたわら、フォトグラムの制作を始めます。そして、印画紙に光で描くデッサンという意味でフォトデッサンと定義した作品を発表します。この頃から瑛九という名前を使い始めます。マン・レイ、モホイ=ナジのフォトグラム作品も参考展示されています。
やがて28歳頃からもう一度印象派からやり直すと言って油彩画に取り組みますが、その後の作風のめまぐるしい変遷は観ていて驚くばかりです。「誰からも影響されない精神の自由」といったように、時代の潮流に敏感に反応しながらも自分のオリジナリティーへと昇華させていく精神はその作品の素晴らしさに現れています。
印象派→フォービズム→キュビズム→シュルレアリズム→抽象そして、あの微細な色の点で心の風景を描く作品に辿りつきます。
迷った時期には、水墨画を描き、8年間にわたり独学で習得した多量の版画作品も残しています。
フォトグラム、フロッタージュ、オートマティズム、エアブラシ、油彩、ガラス絵、版画、水墨画、夫々の表現方法で同じテーマが繰り返し描かれたりもします。
若き日のエスペラントとしてのエピソードも含め瑛九大全集の趣、観ることが出来て大収穫の一日でした。
次のような事も言っています。
「長谷川三郎の作品が一番よくわかる」
三岸好太郎に対し「芸術上の親身をしみじみと感じる」
「古賀春江は好きな作家だ」
「クレーの詩情を楽しむ」
展示構成は以下の通りです。
Topic 1 文筆家・杉田秀夫から瑛九へ――――うらわ美術館
Topic 2 エスペラントと共に――――――――埼玉県立近代美術館
Topic 3 絵筆に託して―――――――――――うらわ美術館
Topic 4 日本回帰―――――――――――――うらわ美術館
Topic 5 思想と組織 ―――――――――――埼玉県立近代美術館
Topic 6 転位するイメージ―――――――――埼玉県立近代美術館
Topic 7 啓蒙と普及――――――――――――うらわ美術館
Topic 8 点へ・・・――――――――――――埼玉県立近代美術館
『眠りの理由』より フォト・デッサン 1936年
海 油彩 1911~1960年
空の目 油彩 1957年
旅人 リトグラフ 1957年
つばさ 油彩 1959年
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