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2011.07.31

国立エルミタージュ美術館蔵 皇帝の愛したガラス

Erumigarasu
東京都庭園美術で9月25日まで開催。


このような作品展示にはいいですね、この美術館は。
ヨーロッパ各地で作られてきた多様なガラス作品の展示にと共に、 11世紀前半にはじまり、18世紀半ばに円熟期を迎えたロシアのガラス製造技術により作られた作品が展示されています。
華麗なエングレーヴィングによって紋章やモノグラムを彫刻したセルヴィス(晩餐会用食器セット)、金を用いたルビー・ガラスなどの色ガラスによる艶やかな作品等々のロシア貴族が愛した作品群をゆったりとした気持ちで...。


この企画展のHPから解説の引用です。

 ロシア・サンクトペテルブルグにある国立エルミタージュ美術館は、その類い希なる充実したコレクションによって、世界有数の美術館として知られています。同館の数ある作品群のなかでもとりわけ貴重とされるガラスコレクションは、14世紀から20世紀にわたる幅広い時代を網羅し、ヴェネツィアやボヘミア、イギリス、スペイン、フランスなど、ヨーロッパ各地で制作されたガラス芸術の多様性を、当時の最高峰レベルの作品を通じて概観することができます。これらのコレクションは、歴代のロシア皇帝や皇后、貴族が身近に置いていた作品群をはじめ、いずれも出自や来歴が明らかな優品ばかりでありながら、これまで国外に紹介されることはほとんどありませんでした。
 本展では、ロマノフ王朝によって収集・継承されてきた質の高い作品群に、エカテリーナ2世によって設立された帝室ガラス工場製の多様なガラス製品を加え、15世紀から20世紀に至るヨーロッパとロシアのガラス芸術の精華を、珠玉の190点によりご紹介します。


展覧会の構成は次の通りです。
1、ルネッサンスからバロックに時代へ
 1) 水の都の幻想-ヴェネツィア
 2)深い森 光と影-ボヘミア、ドイツ、フランス
 3) 南国の情熱 土の香り-スペイン
 
Erumigarasu0001sakazuki
神聖ローマ帝国の紋章を描いた大杯
ボヘミア  16世紀第4四半紀

2、ヨーロッパ諸国の華麗なる競演
 1)技巧と洗練-ヴェネツィア、イギリス、フランス、オーストリア、ボヘミア、ドイツ
 2)手仕事の宇宙-装飾品
 3)新しい夜明け-アール・ヌーヴォー、アール・デコ

Syokudai 
「ウェッジウッド様式」の磁器製台座を
もつ4本の蝋燭用枝付燭台
西ヨーロッパ 18世紀第4四半紀

3、ロマノフ王朝の威光

Set
「オルロフ・セット」より9点の品 
ロシア、帝室ガラス工場 
1790-1800年代


Erumigarasu0001gare
エミール・ガレ
《ヒキガエルとトンボを描いた花器》
フランス、ナンシー
1888年


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2011.07.27

没後100年 青木繁展―よみがえる神話と芸術

Aoki
ブリジストン美術館で9月4日まで開催。

39年振りだそうです。
書簡、素描等を多数展示、総点数240点の大回顧展です。
青木繁作品の展示があると知ると、出来るだけ、その展覧会に行っていましたが、この展覧会は総集編ですね。
青木繁ゆかりのブリジストン美術館ですからね、力が入っています。
石橋財団の創始者石橋正二郎は青木繁の作品からコレクションを始めたんでしたよね。

この展覧会の感想を書くのって難しい。

以下は、公式HP等を参考にしながらです。

第1章 画壇への登場─丹青によって男子たらん 1903年まで
画家を志し、中学を退校して上京、小山正太郎の画塾不同舎に入門、翌1900年には東京美術学校西洋画科に入学。在学中の1903年秋に開催された白馬会第8回展に神話に取材した作品群を出品し、白馬賞を受賞する。
(東京美術学校西洋画科教官には黒田清輝、藤島武二らがいた)
(西洋美術の研究も盛んに行う、作風にラファエル前派の影響がみられるとも)

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《輪転》1903年 石橋財団石橋美術館

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《黄泉比良坂》 1903年 東京藝術大学

第2章 豊饒の海─《海の幸》を中心に 1904年
1907年7月、東京美術学校を卒業した青木繁は、友人の画家・坂本繁二郎、森田恒友、恋人の福田たねと4人で房州布良を訪れ、1カ月半の滞在する。そして《海の幸》を描く。9月に白馬会第9回展に出品され、好評を得る。点描による外光表現の海景も描いています。この年が青木にとって生涯の絶頂期となる。

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《海の幸》 1904年、石橋財団石橋美術館

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《海景(布良の海)》 1904年、石橋財団ブリヂストン美術館

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丘に立つ三人 1904年石橋財団石橋美術館

第3章 描かれた神話─《わだつみのいろこの宮》まで 1904-07年
神話や聖書の物語に取材した作品を残した時期。特に日本神話が発想の大きな源となった。《大穴牟知命》(1905年)、《日本武尊》(1906年)、《わだつみのいろこの宮》(1907年)などの一連の作品を制作している。この時期、福田たねとの間に生まれた息子に「幸彦」と命名している。自信作《わだつみのいろこの宮》は1907年春の東京勧業博覧会に出品するも、思い入れ程の評価は得られなかった。

エピソード(画家の後裔(講談社文庫(絶版)放浪三代 石橋エイタローから)

母は毎年衣替えの頃になると、着物と一緒にその絵を虫干しした。
怖い絵だったとにかく怖い絵だった。
祖父がたえず気にかけながら、九州に帰っていくため父のもとに遺された作品「大穴牟知命」がこれである。だが、子供心には恐ろしいとしか感じなかった。
(中略)
夜中など頭のところに絵が立てかけてあるので、薄目を開けてみると、どう見ても「素晴らしい」とか、「高いもの」とか、「美しい」とかとは思えなかった、頭からかぶった布団の中から覗くと(中略)小さな暗い電球の先に鈍く反射して、ますます背筋がぞくっとして、明るくなるまで、小ようにも行けなかった。
「眠れないからむこうに向けて」
と、母にせがんだり、新聞紙を覆せてもらって寝たのを思い出す。
この「大穴牟知命」との対面こそが、祖父と私のはじめての出逢いといえよう。

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《大穴牟知命》 1905年、石橋美術館

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《わだつみのいろこの宮》 1907年、石橋美術館

第4章 九州放浪、そして死 1907-11年
1907年、父危篤の報を受けた青木繁は久留米に帰省します。父の死後、母、兄弟との問題や、栃木県に残した遺児に関する福田家との問題に翻弄される。中央画壇への復帰を画策するが、夢が実現することはなかった。、九州各地を放浪し、最後は福岡市の病院で亡くなります。

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《朝日(絶筆)》 1910年、小城高校同窓会黄城会(佐賀県立美術館寄託)

第5章 没後、伝説の形成から今日まで
死後、友人の坂本繁二郎らよって遺作展が開催され、またその翌年には画集が刊行される。Ⅰ948年には、河北倫明氏による最初のまとまった評伝が刊行され、青木作品の評価が高まる。この章では、青木の作品を残し広く世に知らせるために努めた人々に注目しています。

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2011.07.24

開館50周年子念「美を結ぶ。美を開く。」Ⅱ 不滅のシンボル 鳳凰と獅子

Houousisi
六本木・東京ミッドタウン ガレリア3階のサントリー美術館で7月24日まで開催されています。
今日が最終日ですね。
かなり前に観てきた展覧会ですが、書きかけてそのままにしていました。

考えてみれば、鳳凰と獅子、あまり意識せず、なんとな接してきましたが、このような形で焦点を当ててくれると今更ながら、そうなんだ、と。
「鳳凰は、優れた天使が世に現れる兆しとして、古代中国で生み出された空想の鳥」
「獅子は、日本に棲息しないライオンを原型とし、矢張り中国から唐獅子という半ば空想上の動物として伝わった」
そうなんですよね、我々は普段、定義づけなどあまり考えないで、鑑賞していますが、こういう形で具体的に分かり易く展示して見せてくれると、嬉しいですよね。中国への憧憬から宗教、儀礼や民族、芸能に取り込まれて、絵画や工芸の意匠として繰り返し使われ、そのイメージは、今に至るまで高貴なシンボルとして継承されてきたんですね。(HPの解説の一部を引用しています)

展示作品は多岐にわたり、よくもこれだけ集めてくれたものだと感心してしまいます。
入り口で阿形、吽形の狛犬がお出迎えで、嬉しいですね。
1950年の火災から、ただ一点、逃れた金閣寺の鳳凰が展示されていますが、三島由紀夫の小説を思い出したりで感慨深いものがありました。
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鳳凰(旧金閣所在 室町時代 鹿苑寺蔵)

国宝文殊菩薩渡海図(6月27日まで展示されていました)の展示期間に間に合ってよかったです。この作品は、その物語性と構成がすばらしく感激です。
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国宝 文殊菩薩渡海図(鎌倉時代 醍醐寺蔵)

銅鏡、絵画、彫像、器、神宝、茶道具、うち掛け、能舞台、時代地域、多岐に渡り集めたこの天覧会すばらしかった。
展覧会の構成は以下の通り。
第1章 暮らしの中の鳳凰と獅子―御輿・獅子舞・狛犬
第2章 古代における鳳凰と獅子―銅鏡や磚をめぐって
第3章 獅子舞と狛犬―正倉院の頃から始まる守護獣の歴史
第4章 仏教における獅子―文殊菩薩像を中心に
第5章 鳳凰降臨― 彫像や神宝にみる高貴なシンボル
第6章 よみがえる鳳凰― 東アジアにおける鳳凰図の展開
第7章 工芸にみる鳳凰と獅子― 唐物や茶道具を中心に
第8章 屏風に描かれた鳳凰と獅子―「唐獅子図屏風」から若冲まで
第9章 獅子の乱舞―芸能と獅子をめぐって
第10章 江戸文化にみる鳳凰と獅子―色絵陶磁器から水墨画まで
第11章 蘭学興隆から幕末へ―洋風画と浮世絵をめぐって
第12章 不滅のシンボル―人間と共に生きる鳳凰と獅子


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桐鳳凰図屏風(狩野探幽筆 六曲一双 江戸時代 17世紀 サトリー美術館蔵)


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獅子図(小田野直武 江戸時代 個人蔵)


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大獅子図(竹内栖鳳 四曲一隻 明治35年(1902) 藤田美術館蔵

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国宝 金銅獅子唐草文鉢(奈良時代 護国之寺蔵)

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2011.07.23

青木繁 福田たね 石渡幸彦(福田蘭童)

没後100年 青木繁展――よみがえる神話と芸術展を観にブリジストン美術館に行ってきました。
集大成となる大回顧展で、内容がとてもすばらしかった。
展覧会の感想は後ほど投稿できると思います.....

 

 

以下は、数年前拙blogで紹介した文面ですが再度。

 

かくして母の居所を知った僕は大津の町をさまよい、生まれて初めて見る母をさがし当てた。それは修学旅行の帰りであった。そして母から涙ながらに渡された紙包みを玉手箱の思いで、おそるおそるひらいて見た。
それは臍帯を包んだ紙で、
明治三十八年八月二十九日誕辰
於茨城県真壁郡伊讃村川島
青木氏
第一子   幸彦(さちひこ)
と墨鮮やかな玉手箱の煙ならぬ親父の書いた墨付きを見た。その日は僕の師から免許された蘭童をもらった日で、急に老人になって了った日でもあった。

 

講談社文庫「画家の後裔」
父の墓を掘る-父青木繁の事ども-福田蘭童
から引用。

 

画像は展覧会図録から
Aojiga
男の顔(自画像) 1904年

 

Tane
女の顔 1904年

 

Sati0001
幸彦像 1907年

 

 

 

画家の後裔
青木繁 福田蘭童 石橋エイタロー
Gakakou

 

講談社文庫
昭和54年4月30日第一刷発行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2011.07.22

映画(DVD) ボローニャの夕暮れ

633404

変な言い方かもしれませんが、本当に映画らしい映画です。
鑑賞後も余韻が続きます、セピア調の映像も良いですし、配役も絶妙。


1938年のイタリア、ボローニャ、アパートに住む三人家族 。父ミケーレは高校の美術教師、美人の妻デリラと父と同じ高校に通う17歳の娘ジョヴァンナ。
父はボーイフレンドのいない娘ジョヴァンナを惨めに思い、励まし続ける。
そんなある日、ミケーレはジョヴァンナが校庭で人気者のダマストリと話しているのを目にする。ダマストリは進級できるかできないかの瀬戸際で、その判断はミケーレ次第だ。
ダマストリにミケーレは成績の事を持ち出して暗に、娘に親切にするよう持ち掛ける。ジョヴァンナは自分の思いが通じたと思い込むのだが.....母デリアは、ミケーレが画策したものだと疑う。
そんなある日、ジョヴァンナは同級生マルチェッラの誕生日パーティーに招待される。
ジョヴァンナは、同じアパートに住み家族どうしで親密な付き合いをしている警察官セルジョの計らいで新調したドレスを着て出かけていく。
帰りが遅いのを心配していると、電話がかかってきて、急いでミケーレがマルチェッラの家に行くと、ジョヴァンナは横になっていた。ダマストリが自分とだけ踊ってくれなければ嫌だと騒いだのだと聞かされる。
数日後、ミケーレは洗面所のタオルに血が付いているのを見て不思議に思い妻にも告げるが.....。
翌日、学校ではマルチェッラの行方が分からないと騒ぎになる。
やがてマルチェッラが体育館倉庫で他殺体で発見される。
捜査の段階で、体育館でダマストリとマルチェッラが会っていたとき、用具の後ろにジョヴァンナが隠れていたのが目撃されていた事が分かる。
事情聴取されたジョヴァンナは殺害を自供する。
裁判の段階で、弁護士は心神喪失が認められば、罪に問われないと....父ミケーレは、認めたくないが、結局心神喪失が認められて精神病院に入院する。
教師の職を追われたミケーレは、足しげく病院に通い、必死に娘の面倒をみる。
デリアは気持ちの整理がつかず、娘に会いに行けなかった。
戦争が激化し、親友の警察官セルジョは空襲で家族を失う、そして、ムッソリーニを支持して活動するようになる。
一方、ジョヴァンナの担当医師はミケーレに、ジョヴァンナが母親に対し劣等感を抱いていること、母親が他の男に恋していると思い込んでいることを話す。ミケーレはセルジョに、妻との関係を問い、デリアと一緒になってほしいと伝える。そして、一人でジョヴァンナのいる病院の近くに移り住む。
戦争が終わると、ムッソリーニを支持していたセルジョは拘束そして銃殺されてしまう。
24歳になったジョヴァンナは退院し、ミケーレと共にボローニャに戻る。
7年後、ジョヴァンナは父と映画館へ行き、男連れのデリアを見かけ、声をかけるが無視される。
ミケーレは慌てて娘を映画館から連れ出すと....デリアが出てきて.....。


製作年度: 2008年
上映時間: 104分

スタッフ
監督 プピ・アヴァティ
製作 アントニオ・アヴァティ
脚本 プピ・アヴァティ
アントニオ・アヴァティ
原案 プピ・アヴァティ
撮影 パスクァーレ・ラキーニ
美術 ジュリアーノ・パンヌティ

キャスト(役名)
シルヴィオ・オルランド(ミケーレ)
フランチェスカ・ネリ(デリア)
アルバ・ロルヴァケル(ジョヴァンナ)
エッジオ・グレッジオ(セルジョ)


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2011.07.20

映画(DVD) 夏時間の庭

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DVDが出始めのころ、一度借りてきたのですけれど、途中まで観て(何故か、あまり興味が続かなかった)返してしまった作品。
こういう事ってよくあります。
もう一度、今度は最後まで観ようと思って借りてきました。

かけがいのないもの、個人それぞれで違いますが、皆持っているに違いありません。
時と共に失うもの(失わざるを得ないもの)、郷愁をしみじみ感じさせてくれます。

フランスのオルセー美術館開館20周年を記念して製作されたこの映画には、一部を除いて、本物の美術品が使われている事でも話題になりました。

エレーヌはパリ郊外の小さな町ヴァルモンドワに独りで住んでいる。三人の子供とその家族が久しぶりに集まって、広大な庭でエレーヌの誕生日を祝っている。この大邸宅は三人の大叔父で画家のポール・ベルティエが生前使っていたものだ。
長男はパリに住む経済学者、長女アドリエンヌはニューヨークを中心に世界を飛び回るデザイナー、次男は中国で仕事をしている。
誕生祝いを楽しむ中、母エレーヌは長男を呼び邸宅に飾られ、また使っている美術品を、自分の死後売って欲しいと.....長男は縁起でもない話に苛立ちながら、子供たちに引き継いで、なにも売らないつもりだと言う。

そして、企画している大叔父の回顧展でまた集まる事を約束して、子供三人とその家族は、あわただしく帰っていく。
時は経ち、母エレーヌは回顧展の後、突然亡くなってしまう。

三兄妹は母の残した遺産、家と膨大な美術品の取り扱いと向き合うこととなる。長男フレデリックはそれらを手放すつもりはなかったが、アドリエンヌはアメリカ人の恋人ジェームスとの結婚を決め、ジェレミーも中国に住宅を購入して、生活の拠点を移すことにしたと告げる。もうあの家に家族が揃う事もなくなるだろうし、美術品も含めた膨大な遺産を相続するにはその相続税を収めることも容易ではないことが分かった。
三人は邸宅を売却、美術品をオルセー美術館に寄贈することで合意し、後日、美術館の職員たちが家から全てを持ち去っていく。

いよいよ、家を譲り渡すことになり、長男フレデリックの娘シルヴィーが大勢の友達を招いてパーティーを開く事になった。大勢の若者たちが、バイクのエンジン音を轟かせて集まり、大音量で音楽をながし踊り楽しむ。
シルヴィーはボーイフレンドと二人で仲間を離れ庭の奥へと走っていく.....祖母の思い出が詰まったこの庭と全てが亡くなっていくことに涙を流す。

製作年度: 2008年
上映時間: 102分

スタッフ
監督  オリヴィエ・アサイヤス
製作総指揮  クレール・ドルノア
プロデューサー  マラン・カルミッツ  ナタネール・カルミッツ  シャルル・ジリベール
脚本  オリヴィエ・アサイヤス
撮影  エリック・ゴーティエ
美術  フランソワ=ルノ・ラバルト


キャスト(役名)
ジュリエット・ビノシュ (アドリエンヌ)
シャルル・ベルリング (フレデリック)
ジェレミー・レニエ (ジェレミー)
エディット・スコブ (ヘレン)
ドミニク・レイモン (リサ)
ヴァレリー・ボヌントン (アンジェラ)
アリス・ド・ランクザン (シルヴィー)


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2011.07.19

ヘルマン・ヘッセ 庭仕事の愉しみ

何か最近、歳のせいでしょうか、庭という文字をみると反応してしまいます。
映画でもそうなんですけど、本屋に行ったら、見つけてしまいました。
ヘルマン・ヘッセ「庭仕事の愉しみです」


こちらではこのごろようやくひどく暑くなってきました。そしてほとんどの日に私のやれることといえば、毎日の庭仕事だけです。つい先頃、雷雨がひどい雹を降らして、ほとんどすべてのものを打ち砕いてしまいました。ですから、することなら充分にあるのです。トマトの株に水をやるときとか、一本の美しい草花の根本の土をやわらかくするときには、芸術家がしばし抱く「こんなことをして意味があるのか?」とか「こんなことがいったい許されるのだろうか?」といったようなあの呪わしい感情を持つことはありません。決して。それどころか、私たちは自分の行為に満足しています。そしてこういう満足感はときどき必要なんです。

(1935年初夏 アルフレート・クービンあての手紙より)
芸術家ならずとも、分かる様な気がするのですが....

Hesse0001
ヘッセの水彩画も良いですね。

Hesse
草思社文庫
2011年6月10日  第一刷発行
著者 ヘルマン・ヘッセ
編者 フォルカー・ミヒェルス
訳者 岡田朝雄
発行所 草思社

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2011.07.18

『京都国立博物館の試み「美の計測」~デジタルが生む新たな視座~』

Bikei
偶然出会った展覧会ですが、興味深々、新発見ありでとても楽しめました。
新宿コニカミノルタプラザギャラリーAで7月20日(水)まで開催。

このごろ、3次元デジタル計測による遺物、破損作品の再構成などの研究成果の発表を目にします。
この展覧会も非接触3次元デジタイザーを使って遺物表面の微細形状を計測しCG画像として再現しています。
鏡(三角縁神獣鏡(卑弥呼が中国、魏からもらったとの説のある))や銅鐸のCG画像や、そのVR(バーチャルリアリティー)映像などが展示されています。
更に、材質解析により、鏡表面の色みを再現し復元した鏡が展示されています。
この表面の色には、ちょと驚きです。
三角縁神獣鏡には、縁の厚い部分は1センチ以上あるのに最も薄い部分は1ミリ程度しかなく、高度な鋳造技術で作られていることが分かったそうです。
鋳型についても訊いてみましたが「まだ解明できていない」とのこと、いやいや面白いですね。

Bikei0001kagami
三角縁神獣鏡の現状写真と3次元計測データ(上)および三次元データ(下)

Bikei0001doutaku
「銅鐸」の3次元計測データによる断面画像(上・下)

Bikei0001koma
「獅子」の3次元計測データ(上・下)


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2011.07.17

空海からのおくりもの 高野山の書庫の扉をひらく

Topankuukai0001tirasi
この展覧会は印刷博物館(TOPPAN小石川ビル)で7月18日まで開催。

東京で初公開!
高野山伝来の書物・版画・版木で出版の源流をたどる旅
いま開かれる高野山の書庫の扉
以上、チラシのコピーですが、もう魅力的ですよね。

東京国立博物館で、20日から『空海と密教美術展』が開催されますが、繋がりでこちらも観ておこうかと思って、暑い中行ってきました。

日本の印刷文化の源流をたどるこの企画も面白いですよね。
中国、日本と繋がった仏教文化の伝承によるところが大きいんですね。


HPの解説です。

高野山(和歌山県伊都郡高野町)にある寺院6個所から、このたび秘宝計79点(国宝2点、重要文化財31点含む)をお借りし、公開いたします。数点をのぞき、高野山をまさに「下山」するのは、今回がはじめての資料ばかりです。
高野山は広く知られる通り、弘法大師空海が九世紀初頭に、真言密教修行のために開きました。山内の寺院では日々の勤行や密教研究のために書物を必要としてきました。特に鎌倉時代以降盛んになった高野山での出版は高野版と呼ばれ、弘法大師空海招来の密教経典や教書を中心に、数多く世に送りだされてきました。
高野山のように出版黎明期からの文化財を体系的に所蔵するところは稀です。今回の展覧会が、日本人にとって書物とはなにかを考える貴重な機会になれば幸いです。

展覧会の構成
第一部 それは山の正倉院だった-古代世界の至宝
弘法大師像(鎌倉時代)無量光と板彫両界曼荼羅が目を引きます。
そして、中国・朝鮮の木版印刷、奈良・京都での木版印刷で作られた経典の類が展示されています。

Topankuukai0002kukaizou
《弘法大師像》鎌倉時代 無量光院

Topankuukai0002ryoukai
《板彫両界曼荼羅(金剛界) 唐時代 金剛峯寺

  

第二部 蘇る文字と日本語-言葉に生命と理法を
空海の著作を中心に、『写本三教指帰』などの密教の普及に欠かせない書籍を展示。
このコーナーから版木が展示されていて、興味深々。

Topankuukai0003syo
『悉曇字記』1280年

第三部 描かれた空海-絵巻のなかの高野山
絵巻『高野大師行状図画』『両界曼荼羅』『不動曼荼羅』『破地獄曼荼羅』『大隋求曼荼羅』『都率曼荼羅』k
これらの版木が展示されています、いやー見に来てよかった。
,
Topankuukai0003hangi
重文 十三仏 江戸時代 金剛峯寺

Topankuukai0003kuu
「明星入口事」江戸時代 宝寿院

第四部 遺産を忘れない-江戸時代の印刷までも
高野版木活字一式、徳川家康に由来する伏見版活字、駿河版活字。『ひらがな観音経』の版木等が展示されていて、時代による活字文化変遷の一部が概観で来て、楽しい。

Topankuukai0004katuji
《高野版木活字》江戸時代初期 西禅院

どうかな、と思いながら行ってきたのですが、楽しかったですよ。
新しい知識を得られることは、どの様な分野においても楽しく、嬉しいものですよね。


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印刷博物館VRシアターで開催されている『両界曼荼羅の宇宙』も迫力あるスクリーンでとても楽しめました。
満席でしたよ。


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2011.07.15

礒江毅=グスタボ・イソエ マドリード・リアリズムの鬼才

Isoe
練馬区立美術館で10月2日まで開催。

これほど時代を超えた写実があろうか。礒江毅は夭折した。だが、絵は残った。--佐伯泰英(作家)

磯江毅(1954-2007)は大阪に生まれ、大阪市立工芸高校を卒業後18才単身でスペインに渡り、30年という長い間、油彩による写実絵画を探求してきました。
王立美術館でデッサンの基礎を学び、プラド美術館に通って、デューラーやフランドル派の画家たちの名画の模写に没頭しました。1970年代、新たなリアリズム表現を求める画家の活動の中心となったマドリッドでアントニオ・ロペス・ガルシアといった画家たちと交流しマドリッド・リアリズムの俊英画家秀グスタボ・イソエとして認められ、80年代にはその運動を担う一人として活躍していきます。

礒江の言葉です。
「リアリズム絵画とは、実体とはフィジカルなものだけど、徹底した描写によってメタフィジカルな世界が見えてくるのを待つ哲学です」

さらに礒江は、存在の実感を探求、深化するために、解剖学を学び直し、リアリティーの極限に挑み続けます。
1996年からは日本にもアトリエを構えて、大学教授として教育、日本の作家と交流し日本にリアリズム絵画を根付かせたいと活動を続けましたが、2007年に53才の若さで急逝します。

展覧会場には、礒江毅の重厚な世界が広がっていました。
存在と時間を丹念に描き込んだ、表現への恐ろしいほどの根気と執念をじっくりと、その作品で.....

Isoe0001fukai
深い眠り 1994 95

Isoe0001sinbun
新聞紙上の裸婦 1993 94

Isoe0001budou
静物(柘榴と葡萄とスプーン) 1994

Isoe0001nin
サンチェス・コタンの静物(盆の上のあざみとラディッシュ) 2000 01

Isoe0001uzura
静物(鶉)1996

Ari
アーリーレッド 2004

画像はチラシからの引用です。


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2011.07.13

ホキ美術館 開館記念第2弾 静物と風景画展

Hoki
この企画展は11月13日まで開催

ホキ美術館は世界でもまれな、写実絵画専門の美術館として2010年11月3日に開館しました。写実絵画の為に設計された、ピクチャーレールのない展示室、天井に埋め込まれたLEDとハロゲンの照明など、美術鑑賞に最高の設備を備えた最新鋭の美術館で...
(美術館に置いてあるパンフレットからの一部引用です)

やっと行ってきました。
千葉市美術館と掛け持ちで行ってきたのですけれど、我が家からは本当に遠い、電車で行ったものですから、乗り継ぎの時間も含めて、待つことの嫌いな私にはキツカッタ。
最寄りの外房線土気駅は初めておりました、そこから暑い中を徒歩ですからね~(バス、タクシー利用可)

さて、この美術館、ユニークな建築、展示方法と、収集作品の特質とが相まってとても楽しめますよ。
私が行った日は、団体客がバスで来ていて、此の方々が騒々しくて...(この日、展示室には監視員が一人もいなかった)
ギャラリ-2のフロアにあるCafeが満員で、その大きな話声がまた気になって.....一時半バスに集合だそうで、その後は静かになりましたけど。

今回の企画展、ギャラリー1で26の作家による写実絵画60点が展示されています。この企画展の為に五味文彦、大畑稔浩、藤原秀一、芳川誠が計9点描きおろしています。
その細密描写には圧倒されますが、観ていくうちに(見比べていくうちに)作者夫々の個性が楽しくなります。場の空気とモチーフに、流れてきた時間を感じさせてくれる作品が私は好きです。

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五味文彦《パンと檸檬》2010年

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山本大貫《Ray at3:00pm(cloudy)2010年

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藤原秀一《石見海岸》2011年

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安彦文平《自然への感謝》2009年

常設展には40作家160点の写実作品が展示されています。どちらかというと初めての私にとってはこちらの方が充実感を持って鑑賞できました。
ギャラリー2にはこの美術館最大のコレクション森本草介の作品ガ並びます、透き通るような空気が流れる作品はとても魅力的です。

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森本草介《牡丹》1997年

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森本草介《横になるポーズ》1998年

ギャラリー8「私の代表作」は館長が15人の作家に「私の代表作」というテーマで制作依頼した100合以上の大作が展示されていて、ご本人のお話もスピーカーから聞けるようになっています。

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生島 浩《5:55》2010年

兎に角、説明しきれ無い程、豊富な展示内容です。
千葉市立美術館の時間をを気にしながらギャラリー1から9まで、行ったり来たり何度も繰り返し見てきました。


画像はチラシからの引用です。


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2011.07.11

生誕130年 橋口五葉展

美術史家岩切信一郎氏監修により、油彩、水彩、素描、版画、絵葉書、装丁本、ポスターなどを400点展示した、まさに橋口五葉の全貌を時系列で見せてくれます。
千葉市美術館で、7月31日まで開催。

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チラシに使われている作品が黄薔薇。
「幻の黄薔薇あらわる」と書いてありますが、ご覧になった皆さんの感想は如何でしょうか?
いろいろな意味で興味ありですね。

この展覧会は、第二会場から観て、第一会場に戻り、更にもう一度第二会場というのも良いかもしれませんよ。
私家版木版による作品が展示されているコーナーのその作品には惚れ惚れですね。
五葉が描く女性の目元が良いですね。これらの作品を観るだけでも行く価値ありですよね。

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髪梳ける女

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化粧の女

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夏衣の女

以下、展覧会の構成に沿って。
I章 鹿児島から東京へ
 橋口五葉(1881-1921)は鹿児島市の生まれ。1899年に上京してはじめ白馬会絵画研究所に所属。橋本雅邦に日本画も学びますが、まもなく洋画に転じて東京美術学校へ進みました。
 1. 素描・水彩・パステル―イメージの集積
 2. 油彩画―白馬会の頃
II章 物語の時代
 洋画、日本画に拘ることなく、五葉なりの絵画世界を持っていて、物語内容の作品を描いたり、一点物のタブローよりも本の装丁、挿絵ポスターなどの生活に身近なところで楽しめるもの、あるいは版画などの多くの人が手に取りやすいものに本領を発揮いしている。また、ラファエル前派の影響が考えられる作品も登場する。
 1.日本画
 2. 浪漫主義
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  《孔雀と印度女》
III章 吾輩ハ五葉デアル
 近代日本のグラフィックデザインは橋口五葉に始まる。夏目漱石にとって「坊っちゃん」はデビュー作であり、25歳の五葉においても装丁のデビュー作。更に、三越呉服店主宰懸賞コンテストで応募した「西洋画図案此美人」が一等賞になり五葉の名を高めることになる。
 1. 『ホトトギス』の周辺
 2. 装幀本とその画稿
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  装丁《虞美人草》(夏目漱石著)
 3. 雑誌やポスターの仕事
Ⅳ章 耶馬渓を描く―新たな主題の発見
 「此美人」で多額の賞金を得た五葉はそれを軍資金に、大分に滞在し、耶馬渓の表情豊かな奇岩群や別府の温泉場、そして浴女たちを丹念に、数多くスケッチした。それらのスケッチは、画業後半のメイン・モティーフとなっていく。
 1. 耶馬渓・別府の風景
 2. 温泉場の女たち
 3. ポスター《此美人》と无声会の活動
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   《此美人》
V章 素描―裸婦たち
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   《女の顔》
Ⅵ章 新たなる浮世絵を求めて
 あまたな仕事を手掛けてきた五葉が最後にたどりついたのは、浮世絵版画だった。大正7年から大正9年にかけて私家版木版11点を完成させた。翌年病で41歳の若さで亡くなります。
 1. 《浴場の女》まで
 2.浮世絵研究
 3. 私家版木版の精華
 4. 没後の動き


 

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2011.07.09

映画(DVD) セラフィーヌの庭

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この映画、昨年予告を観て絶対見る、と決めていたのに....忘れていました。
何時もの事?
TUTAYAに行ったら一本だけ置いてありました。
もう、直ぐ借りてきて見ました。

自然の風景が綺麗に埋め込まれているし、セラフィーヌ役のヨランド・モローがとても良い。
何か...切なくなる映画。

製作年 2008年
製作国 フランス=ベルギー=ドイツ
配給 アルシネテラン
上映時間 126分

監督 マーティン・プロボスト
出演 ヨランド・モロー (セラフィーヌ)
ウルトリッヒ・トゥクール (ルーデ)
アンヌ・ベネント (アンヌ・マリー)

 1912年、フランス・パリ郊外の緑豊かなサンリス。学もなく身寄りもない、セラフィーヌは家政婦として働きながら、部屋にこもって黙々と絵を描いる。草木と話したり、自然が大切な相手。
ある日、彼女が家政婦として働く家に、ドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデとその妹アンヌ・マリーが間借り人として引っ越してくる。
 その家の女主人が、食事会を開き、ウーデも同席する、芸術愛好家たちの話にうんざりのウーデは、退席しようとした時、部屋の片隅に置かれたセラフィーヌの絵を観て興味を示す。
彼はセラフィーヌに家政婦などしていないで、描くことを強く勧める。
半信半疑のセラフィーヌにウーデは、援助を申し出る。
セラフィーヌは画材を自由に購入しながら、作品を次々に完成させてく。
しかし、1914年、第一次世界大戦が始まり、敵国の人となったウーデはフランスから逃避せざるを得なくなる。

終戦後1927年。ウーデはフランスに戻る。
セラフィーヌの事は忘れかけていた、そんなある日、新聞にサンリス市役所で展覧会が開かれるという記事を見つける。もしかしてと思って観に行くと、セラフィーヌの大作が展示されていた。ウーデは彼女のアパートを訪ね、進化した彼女の絵を褒め、再び援助を約束する。
彼女は、援助を当てに、広い部屋を借り、家財を買い集め、浪費を繰り返す。しかし、1929年、世界は大恐慌へ落ち入り、ウーデも資金繰りがうまくいかなくなり、浪費を繰り返すセラフィーヌを見かねて、援助の中止と個展の延期を伝える事になる。セラフィーヌは激しく動揺し、援助と個展の開催を執拗に迫るがウーデにはどうする事も出来なかった。セラフィーヌの心はしだいに壊れていく。そしてある日、彼女はある行動にでる....心壊れたセラフィーヌは療養所で生活することになる。ウーデは、作品が売れた事を伝えに病院を訪れるが、気持ちを繋げる事は、もう出来なくなっていた。そしてラストシーン.....この映像が秀逸。

セラフィーヌの絵画は日本では世田谷美術館に1点だけあるそうです。
映画公開を機に、昨年公開されたようですが、こちらも見逃してしまいました?記憶に無いだけなのかなー、残念。
良い映画ですよ。

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2011.07.06

フランスの詩と版画 ひびきあう魂の航跡

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町田市立国際版画美術館で8月7日まで開催。


フランス詩の素養の無さに歯がゆい思いで見てきました。
でも、版画自体楽しめますし、詩にインスピレーションを得て、どの様に挿絵にまた版画作品に反映したのか、思いを巡らしてみるのも面白いかと。
更にこの美術館は常設展示も充実してますよね。
同時開催されているのは、
シリーズ<現代の作家> 長谷川潔(67点展示)
素朴な美―フランスの民衆版画(50点)
こちらも楽しめますよ。


以下に、展示作品の概要を記してみました。
詩に寄せる思い、そして版画作家はどの様に作品に反映させた興味は尽きないのですが、観る人によって、感想はかなり異なるのかもしれませんね。
1、モーリス・ドニ『叡智』
  詩:ポール・ベルレーヌ
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  モーリス・ドニ『叡智』より1911年小口木版

2、『アルチュ-ル・ランボー』
  ※9人の美術家による版画作品
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  パブロ・ピカソ「アルチュ-ル・ランボー」1960年リトグラフ

3、マッタ
  『地獄の季節』
  詩:アルチュ-ル・ランボー
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  マッタ  『地獄の季節』 より「僕はさまざまな眩暈を定着した」1978年銅版

4、柄澤斎
  肖像Ⅳアルチュ-ル・ランボー

5、サルバドール・ダリ
  『マルドロールの歌』(全42点より)
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  サルバドール・ダリ『マルドロールの歌』より1934年、銅版

6、ハンス・ベルナール
  『ポエジー』

7、ベルナール・ビュフェ
  『マルドロールの歌』

8、柄澤斎
  肖像ⅩⅤⅢイジドール・デュカス

9、ジョルジュ・ルオー
  『受難』
  詩:アンドレ・シュアレス
  
10、ジョルジュ・ルオー
  『(悪の華)のため版刻された14図』
  詩:シャルル・ボードレール
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  ジョルジュ・ルオー「横向きの裸婦」『<悪の華>のために版刻された14図』 1966年刊 銅版


11、柄澤斎
  肖像Ⅶシャルル・ボードレール

12、ジャン・アルプ
  『囲われた太陽』より
  詩:ジャン・アルプ
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  ジャン・アルプ  『囲われた太陽』より1966年、木版

13、パトリック・コールフィールド『ジュール・ラフォルグの詩』
  詩:ジュール・ラフォルグ

14、マルク・シャガール
  「以心伝心」より
  詩:ルイ・アラゴン
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  マルク・シャガール「以心伝心」より1,976年銅版

15、エクトール・ソニエ
  『鏡』
  詩:ロベール・マルトー

16、山本正文
  『未完の薔薇園』
  詩:ミシェール・ビュトール

17、山本正文
  『夕暮れの道を横切る柵-二十九と一つの石』
  詩:イブ・ポンヌフア


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2011.07.04

長倉洋海写真展 北の島 南の島

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新宿のコニカミノルタプラザで7月20日まで開催。

長倉洋海は大好きな写真家で、展覧会がある度に出かけています。
何しろ、撮られた人々の表情がとても良いんですよね。
その表情と共に、写真には常に社会的背景が意識されています。
地球温暖化による、北の島(地球最北の町カナーク)対極に位置する南の島(赤道直下のピンガラマンキ環礁)を取材したこの写真展。人間が生きていく事とは、本来の”生活すること”の意味について考えさせてくれます。


長倉洋海さんのコメントです(HPからの引用です)

地球温暖化によって、北極と南極の氷が溶け、海面が上昇しているといわれています。北極圏には、狩猟民族イヌイットがいます。氷と雪の大地グリーンランドで、いまも犬ぞりを使って生活している彼らに会ってみたい。2008年5月、私は人間が住む地球最北の町カナークを目指しました。

2010年11月からは、学生時代に訪れたことのある赤道直下のカピンガマランキ環礁に向かいました。島は平均海抜1m。島が沈んでしまうかもしれない中で、人々は何を思い、どんな生活をしているのか知りたかったからです。飛行場のあるポンペイ島からカピンガマランキまでは780km。船が三ヶ月から六ヶ月に一度しかないと知り、私は小さなヨットをチャーターして、38年ぶりに島へ向かったのです。

以下の画像はチラシからです。
北の島
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南の島
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2011.07.03

共鳴する繊維-日本現代ファイバーアート展 

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この展覧会は多摩美術大学美術館で7月3日まで開催されています。(今日までですよね)

素材としての繊維を 如何にに美術表現として使うか、興味がありますよね。
この美術館、立地条件も関係しているのでしょうけど、空いてるんですよね、寂しいくらい。
公演がある日は、結構人が来ているんですけど。

あえて言わせて頂ければ、今回も楽しめましたよ。
52作家の作品が所狭しと並んでいます。
もう少し広い会場でゆっくり見られたらもっと良かったのにな、なんて思いました。
国立新美術館あたりでやっても、結構人が入るのではないかと思いましたよ。

繊維素材が、どんなフォルムを作り、空間表現を創造するのか作家の個性があふれていてとても面白い企画展でした。
30作家の作品が選抜されて、ニューヨークのジャパンソサエティーなどを巡回する予定だそうです。


出品作家一覧です。
上野 真知子/阿久津 光子/新井 淳一/荒川 朋子/石井 香久子/伊部 京子/弥永 保子/岩田 清美/牛尾 卓巳/大高 亨/岡野 優/岡本 直枝/小川 倫代/小野 文則/小野山 和代/片岡 葉子/菊池 加代子/草間 喆雄/久保田 繁雄/熊井 恭子/熊澤 明子/小泉 伸子/小林 尚美/小林 瑠璃/小山 欽也/齋藤 麗/佐伯 和子/鈴木 純子/須藤 玲子/関島 寿子/芹野 直子/徂徠 友香子/髙須賀 活良/高山 けい子/田中 孝明/田中 秀穂/谷川 鶴子/椿 操/富田 紀子/永井 ひとみ/中川 裕孝/長沢 桂一/中島 直美/中野 恵美子/仁尾 敬二/濱谷 明夫/藤本 哲夫/藤原 大/水谷 恵子/吉岡 敦子/若松 美佐子/わたなべ ひろこ
以下の画像はチラシからです。
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熊澤明子 デイジーテェイン

Tamabisenni0001kumai
熊井恭子 刻のかたち/Time

Tamabisenni0001serino
芹野直子 generating-8

Tamabisenni0001tanak
田中秀穂 VANISHING&EMERGING

Tamabisenni0001tubaki
椿 操 Work№81

Tamabisenni0001watanabe
わたなべ ひろこ 赤の鼓動/RED CLOTE’S BEAT


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2011.07.02

東日本大震災チャリティー損保ジャパンコレクション展

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この展覧会は7月3日まで開催されています。

チラシにも書いてありますが「アルプスの画家 セガンティーニ -光と山-」が開催中止(延期)になったための代替展覧会です。
三井記念美術館もそうでしたけど、代替展覧会、意外と面白いんですよね。

会期中の全観覧料は、損保ジャパン東郷青児美術館が行う東日本大震災チャリティーとして、文化庁が呼びかけている「被災文化財の援助と修復」の為に、交易財団法人文化財保護・芸術研究助成財団に寄付されます。
意義ある事ですよね。

2010年(昨年)八王子夢美術館で「東郷青児展 女性礼讃〜大正そして昭和を駆けたモダンボーイ〜」が開催されて久しぶりで東郷青児の油彩画を纏めてみてきました。
この展覧会では、油彩に加えて素描が沢山展示されています。由実かおるの素描なんかも展示されていて、世代的に接点があったんだな、なんて思って観てきました。

展覧会の構成は以下の通りです。
Ⅰ日本の近代作家
Ⅱ東郷青児(1897-1978)
 (油彩作品)
Sonnpotya0001yo
《赤い砂》1967年

 (素描作品)
Sonnpotya0001sobyo
《つまくれ》1960年

Ⅲ東郷青児コレクション
Sonnpotya0001fujin
有馬生馬《黒衣の女》1971年

Ⅳ大賞作家(具象)
Sonnpotya0001nomura
野村守夫《教会のある町》1971年

Ⅴ海外の作家(1)
 グランマ・モーゼス
Ⅵ海外の作家(2)
 ルノアール・セザンヌ・ゴッホ・ゴーギャン

海外作家はほぼ常設展示品ですよね。

 

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