カズオ・イシグロ著 わたしを離さないで
まだ読んでいない方の為、ストーリーの詳細は記せませんので.....
私の名前はキャシー・H。いま三十一歳で、介護人を十一年以上やってます。
この小説の冒頭部分です。
寄宿施設ヘールシャムで生まれ育った、親友トミー、ルースの介護人も努めたキャシーは、あと八か月、今年の終わりまでは勤めてくれと言われている。
物語は、遡って生まれ育ったヘールシャムでの生活が、親友キャシー、トミー、ルースを中心に丹念な筆致で回想されていきます。
保護官といわれる教師、図画工作に熱心な教育、定期的に訪れる謎めいたマダム、展示会の存在?そして作品がマダムに選ばれる喜び。淡々と描かれていくヘールシャムの生活に謎めいた挿話が埋め込まれていきます。
そんな中、ルーシー先生は、決意を込めて言います。
「あなた方は、教わっているようで実は教わっていません。それが問題です。形ばかり教わっていても、誰一人、本当に理解しているとは思えません。そういう現状をよしとしておられる方も一部いるようですが、わたしはいやです。あなた方には見苦しい人生を送ってほしくありません。そのためにも、正しく知っておいてほしい。
ーー中略ーー
あなた方は一つの目的のためにこの世に生み出されていて、将来は決定済みです。ですから、無益な空想はもうやめなかればなりません。間もなくヘールシャムを出ていき、遠からず、最初の提供を準備する日が来るでしょう。それを覚えておいてください。みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているかを知っておいてください」
そして、ルーシー先生はへルーシャムを去っていきます。
やがて、十八歳になると仲間たちはヘールシャムを出ていくことになります。
この小説の面白さが加速していきます。
どんどん先が読みたくなってきます。
いよいよ提供者としての彼らの生活が始まります、そしてなんとも冷徹な結末が....。
カズオ・イシグロは言います。
この小説の設定はメタファーとして選んだものだと...全ての人間の根幹にに当てはまる、人間の根幹を描く物語であると。
この小説は映画化されています(3月一般公開)
キーラ・ナイトレイがルース役で出演しています。
プライドと偏見のキーラ・ナイトレイがお気に入りなんですけど、どんなルースになっているか?チョット楽しみです。
予告編は見ましたけど本編、絶対見ないと...ですよね。
何れ、DVDで....忘れないように。
わたしを離さないで
著者 カズオ・イシグロ
訳者 土屋正雄
ハヤカワepi文庫(早川書房)
2008年8月25日発行
2011年4月10日13刷
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