今期芥川賞受賞作品を読んでみました-その2-朝吹真理子著 きことわ
朝吹姓で私の世代の方はピンと来たかもしれません。
サガンの「悲しみよこんにちは」の翻訳で私は記憶に残っています。
朝吹登水子さんは大叔母だそうです。
現役の大学院生とのこと、この類の小説の好き嫌いは別として、この文章の巧みさには、わけもなく嫉妬しますね。(この類の小説、私自身はチョット苦手なのですけれど)
今回受賞の二方は今後の活躍期待大ですね。
「きことわ」を絵画に例えると......
こんなイメージでどうでしょう......
エドゥアール・ヴュイヤール 《ベッドにて》
この小説、
永遠子は夢をみる
貴子は夢を見ない
という書き出しで始まります。
そして、
貴子は、生まれて初めて夢を見た
と終わりの場面で書いています。
夏の逗子の別荘地で貴子と母の春子、叔父の和雄。
その別荘の管理を任されていた淑子(永遠子の母)と永遠子。
貴子は八歳、永遠子が十五歳、夏の別荘の一日様子が描かれていく。
そして、25年後、和雄から淑子に「別荘を引き払うから....」と連絡が入る。
貴子が、恵比寿駅から湘南電車に乗って逗子に向かう。
貴子は、独身で、医師であった父親と二人暮らし。
怪我をしている淑子に代わって永遠子が手伝うことになる。
永遠子には百花という一人娘がいる。
永遠子が逗子の別荘を訪れると、背の高い女が「百足、百足」と言いながら玄関から飛び出してくる。
そんな再開からの、二人の数日が描かれていく、夢と現実、過去と現在が錯綜し、えも言われぬ情感を醸成して話は綴られていく。
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