本を読めと教えてくれたけど、本を捨てるなとは教えてくれなかった。
BOOK OFFのコマーシャルに使われているフレーズ。
ゴミ捨て場に積まれた、雨に濡れたアップになった本、題名は?
私の世代は、本をまたいでも、おふくろに叱られました。
本が雨ざらしなんて、本当に恐ろしい光景ですね。
答えは、夏目漱石の小説「心 」ですよね。
大正時代の小説。
不思議な小説といえなくもないストーリー展開ですよね。
内容は、先生と私、私と家族、先生の遺書に分けられますが。
導入部、鎌倉での日々の記述で、あれ?と思ってしまいますよね。
先生が何者なのか、人物像があいまいで、あの西洋人はその後一切登場しませんし.....。
矢張り、引き込まれていくのは、先生の遺書の部分ですね。
先生は何故、友人の死をあそこまで引きずって生きなければならないのか?
そして、死を選んだのか?
「私は馬鹿に生まれたせいか世の中の人間がみんないやに見えます」と漱石自ら述懐したように、大正時代と言う背景もあり、心の底に潜むわだかまりが書かせたものかもしれません。
先日観にいった岸田劉生の作品も主に大正時代に描かれたものですよね。
鵠沼、鎌倉に住んでいた時代もありましたね、その頃の村娘を描いた作品も展示されていました。
萬鉄五郎(晩年は茅ヶ崎)の画家としての人生も大正時代そのもの。
いろいろな作品、作家を連想してみると感慨深いものがありますね。
夏目漱石といえば江藤淳。
『漱石とその時代』は確か未完でしたね。
妻が病死した一年後、氏が自宅(鎌倉)浴室で自殺したとのニュースは驚きでした。
何故か、先生の遺書を連想するのは私だけでしょうか。
大正というこの時代、現在と一脈通じるものがあるのかもしれません。
再び破綻への道に、突き進まないことを願うばかりです。
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コメント
elmaさん、コメントを頂き有難うございます。
なんでも安易に手に入る時代、選択眼が必要になってきますよね。
TVのコンテンツにしても、本にしても排出し続けなければ企業として存在できないわけですからね。
最近出版されている本も、あまり読まなくなりました。
焼き直しのような本が多いですからね。
古典は外れがないと思っています。
極端に言ってしまえば、聖書一冊、仏典一冊を本当に読み込もうと思ったら、一生ものかもしれませんよね。
もったいない精神、大事にしたいですよね。
反省.....。
投稿: elmaさんへ | 2009.05.13 04:43
makoさん、こんばんは!
私は、この頃、ほとんどTVを見ないので「CM」については知らないのですが。この企業の「アイデア」は、ある意味当たったと思うのですが、大切な本(書籍)が安く買い叩かれています。古書店は、苦労しているでしょうね。
業界に殴りをかけ、資本の論理で、登場してきた簡易な古本屋さん。
ある時、私も本を持っていったことがあります。新刊書だったのですが、装丁が古めかしく「取り扱えない」というのです。(新刊書だったのですが)一律、○○円。捨てるのと同じです。その時以来、この買取制度は利用していません。ちょっと悲しい気がします。
古書を探す楽しみもありますよね。なかなか手に入らない本を手にしたときの喜び・・・そうはいっても忙しい私は、古書店を歩く時間もありません。
漱石の「心」は、若い頃、読みました(2回)。でも、今では覚えていません。江藤淳氏の話は、新聞記事で読んだほどです。「悲しいかな」・・・妻を失った一人身の老体には、耐えられなかったのでしょうね。
よく考える人には、「生きづらい」世の中、あきらめずに何が大切かを考えていきましょうね。単純に考えたほうが気楽かもしれませんね。
投稿: elma | 2009.05.11 21:39