湯浅誠著 反貧困 -「滑り台社会」からの脱出
岩波新書 2008年4月22日 第1刷発行
この類の投稿は極力遠慮してきたのですが、今年最後の投稿として、この本を選びました。
今年を、ある意味象徴していると思うからです。
今年、TVにも度々登場し、冷静な語り口で反貧困を訴えていた湯浅氏の著書。
具体的な事例、データを提示して現代の貧困を説明し、貧困層の増加による日本社会脆弱化への懸念。
そして反貧困による、強固な社会構築へ向けての具体的な、過去、現在、将来の取り組みを記述している。
ステレオタイプのTV、新聞だけでは本質は掴みづらいですよね。
本書の構成は以下の通り。
第Ⅰ部 貧困問題の現場から
第一章 ある夫婦の暮らし
第二章 すべりだい社会・日本
1 三層のセイフティネット
2 皺寄せを受ける人々
第三章 貧困は自己責任なのか
1 五重の排除
2 自己責任論批判
3 見えない”溜め”を見る
4 貧困問題をスタートラインに
第Ⅱ部 「反貧困の現場から」
第四章 「すべりだい社会」に歯止めを
1 「市民活動」「社会領域」の復権をめざす
2 起点としての<もやい>
第五章 つながり始めた「反貧困」
1 「貧困ビジネス」に抗して-エム・クルーユニオン
2 互助の仕組みをつくる-反貧困たすけあいネトワーク
3 動き出した法律家たち
4 ナショナル・ミニマムはどこに?-最低生活と最低賃金
終章 強い社会をめざして-反貧困のネットワークを
以下に、一部を引用させていただきます。
労働者派遣の問題は、中野麻美氏が『労働ダンピング』(岩波新書 2006年)で指摘しているように「労働者の商品化」にある。人材派遣業者(派遣元企業)から取引先(派遣先企業)は派遣された労働者は、派遣先企業に対しては基本的に労働者としての権利をもたない。派遣される労働者の賃金は、会社経理上「人件費」ではなく「資材調達費」などに分類されることが、その立場を象徴している。労働者を「人」としてではなく「商品」として取り扱うことを肯定したシステムが労働者派遣であり、そこで労働者は、倉庫に置かれた在庫物資と基本的に変わらない存在となる。その究極の姿が登録型日雇い派遣であり、彼/彼女らには、もはや”倉庫代”すら不要になった。
今年の一冊としてお勧めします。
こんな本も。
≪鎌田慧著 自動車絶望工場 ある季節工の日記 講談社文庫 昭和58年9月1日1刷発行≫
非正規雇用の歴史は今に始まったことではないですよね。
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