« 良かった展覧会2008 | トップページ | 新年のご挨拶 »

2008.12.31

湯浅誠著 反貧困 -「滑り台社会」からの脱出

Hannhinnkonnblog
岩波新書 2008年4月22日 第1刷発行

この類の投稿は極力遠慮してきたのですが、今年最後の投稿として、この本を選びました。
今年を、ある意味象徴していると思うからです。


今年、TVにも度々登場し、冷静な語り口で反貧困を訴えていた湯浅氏の著書。
具体的な事例、データを提示して現代の貧困を説明し、貧困層の増加による日本社会脆弱化への懸念。
そして反貧困による、強固な社会構築へ向けての具体的な、過去、現在、将来の取り組みを記述している。
ステレオタイプのTV、新聞だけでは本質は掴みづらいですよね。

本書の構成は以下の通り。

第Ⅰ部 貧困問題の現場から
 第一章 ある夫婦の暮らし
 第二章 すべりだい社会・日本
  1 三層のセイフティネット
  2 皺寄せを受ける人々
 第三章 貧困は自己責任なのか
  1 五重の排除
  2 自己責任論批判
  3 見えない”溜め”を見る
  4 貧困問題をスタートラインに
第Ⅱ部 「反貧困の現場から」
 第四章 「すべりだい社会」に歯止めを
  1 「市民活動」「社会領域」の復権をめざす
  2 起点としての<もやい>
 第五章 つながり始めた「反貧困」
  1 「貧困ビジネス」に抗して-エム・クルーユニオン
  2 互助の仕組みをつくる-反貧困たすけあいネトワーク  
  3 動き出した法律家たち
  4 ナショナル・ミニマムはどこに?-最低生活と最低賃金
終章 強い社会をめざして-反貧困のネットワークを

以下に、一部を引用させていただきます。

労働者派遣の問題は、中野麻美氏が『労働ダンピング』(岩波新書 2006年)で指摘しているように「労働者の商品化」にある。人材派遣業者(派遣元企業)から取引先(派遣先企業)は派遣された労働者は、派遣先企業に対しては基本的に労働者としての権利をもたない。派遣される労働者の賃金は、会社経理上「人件費」ではなく「資材調達費」などに分類されることが、その立場を象徴している。労働者を「人」としてではなく「商品」として取り扱うことを肯定したシステムが労働者派遣であり、そこで労働者は、倉庫に置かれた在庫物資と基本的に変わらない存在となる。その究極の姿が登録型日雇い派遣であり、彼/彼女らには、もはや”倉庫代”すら不要になった。

今年の一冊としてお勧めします。

こんな本も。
鎌田慧著 自動車絶望工場 ある季節工の日記 講談社文庫 昭和58年9月1日1刷発行
非正規雇用の歴史は今に始まったことではないですよね。
Jidousyazetuboublog


|

« 良かった展覧会2008 | トップページ | 新年のご挨拶 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 湯浅誠著 反貧困 -「滑り台社会」からの脱出:

» 湯浅誠「反貧困 これは『彼ら』の問題ではない」 [平和への結集ブログ]
 活憲政治セミナー第2回「湯浅誠さんと考える格差・貧困問題」の報告です。ブログなどで宣伝していただいた方、ありがとうございました。  正規労働者と非正規労働者の労働条件は分断した関係にはなく、一方の劣悪化が他方の劣悪化を招く。この構図には気付きにくい。貧...... [続きを読む]

受信: 2009.01.04 12:58

» 大佛次郎論壇賞、湯浅誠氏の『反貧困』に <反=社会>賞をケーダンレンが同時受賞 [試稿錯誤]
                                      大佛次郎論壇賞、湯浅誠氏の『反貧困』に http://www.asahi.com/culture/update/1213/TKY200812130197.html 第8回大佛次郎論壇賞(朝日新聞社主催)は、反貧困ネットワーク事務局長、湯浅誠氏(39)の『反貧困――「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書、税込み777円)に決まった。賞牌(しょうはい)と副賞200万円が贈られる。  ますます深刻さを増す、この国の「貧困... [続きを読む]

受信: 2009.01.05 12:35

« 良かった展覧会2008 | トップページ | 新年のご挨拶 »