「ピカソはほんまに、天才か」
このフレーズ、拙blogで、何回か使いました。
私の好きな開高健の随筆集のタイトルです。
私の本棚から探し出して、ピカソ展、行き返りの電車の中で読み返しました。
以下に、一部を引用させて頂きます。
この人については、”青の時代”をのぞくと、あとはまったくなにも感染させてもらえなかった。 この人物は異星人並みの天才とされてその名声は不動のものと思われるけれど、残念ながら小生はついに一度も体温をかえてもらうことができなかった。批評文を読むとことごとく天文学単位のヴォキャブラリーを動員しての絶賛また絶賛である。それらを読むうちに、とうとうハーバート・リードが、”ピカソでいいのはせいぜい青の時代までである”と一刀両断してくれているのを発見して、著名美術家にも正直者はいるのだナとわかり、やっと一安心できた。
-中略-
これまでに何人かの日本人の画家や評論家に私的な会話の席で、むきつけに(しかし言葉は丁重を心がけて)、ほんとにピカソはいいと思うか、そう感じたことがあるか、もしそうなら技術なのか色価なのか、何がいいのかと、たずねたことがある。たいていの場合、眼を伏せるか、そらすかであって確信をこめた断言体で、イエスと答えかえしたのは一人もいなかった。
-中略-
導火線、起爆剤、触媒あきらかに彼はみごとにその役をやってのけたし、予知能力は絶大であったらしいが、本質的には一人のアジャン・ブロヴォカトール(煽動者)にすぎなかったのではあるまいか。それでなければあの未昇華の仰々しさやおしつけがましさの説明がつかないのではあるまいか。
『芸術新潮』三十五巻五号 昭和五十九年五月一日)
私と開高健との意見を同列に語るのは、神をも恐れぬ行為ですが、氏とは意見がよくあいます。
しかし、全てが一致では勿論ありません。
(青の時代、新古典主義の作品は、一定の評価をされていたようです)
私も、どちらかといえば分かりやすいこちらのほうが......
また、人の意見、感想は日が経てば変わるかもしれません。
今回の、ピカソ展を観たなら、氏はどのような感想を.....かないませんが。
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