« フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち | トップページ | 落っこちたら受け止めて »

2008.10.09

小説 死の棘

島尾敏雄 著
昭和56年発行
平成17年38刷

十数年来(少々オーバーかも)読もう読もうと気にかけていた本、やっと読みました。
ADSL不調のおかげ?かもしれません。
秋だからでしょうか?
むしょうに、本が読みたくなって。


読み始めたんのは良いのですが、何せ、視力があやしい年になった私にとって、この本はきつかった。
改行がほとんどないページが六百数十ページ。

そして、長男伸一の言う「カテイニジジョウ」が延々と書き続けられる。
数十ページ読んだ段階で、最後まで読みきれるだろうか....不安になってしまいました。


夫トシオの不実に心身を消耗した妻ミホは、とうとう心の平衡を崩してしまう。

あなたのきもちはどこにあるのかしら。どうなさるつもり?。あたしはあなたには不必要なんでしょ。だってそじゃないの。十年ものあいだ、そのように扱ってきたんじゃないの。あたしはもうがまんしませよ。もうなんと言われてもできません。十年間もがまんしつづけてきたのですから、爆発しちゃったの。もうからだがもちません。見てごらんなさい、こんなに骸骨のようにやせてしまって、あたしは生きてはいませんよ。生きてなどいるもんですか。

この本の6~7頁の文章を引用しました。

そこから一年数か月。
まさに火宅の生活が続きます。
もう、ミホの発作、とトシオの脅え、そして格闘が六百数十頁続きます。
劇的な、エンディングもなく、ただ、精神病院に入院するところでこの小説は終わります。

正直な話、何時、読み終わるか、このまま終わってしまったら、この小説って何の意味があるのだろうか、なんて考えながら、読み進めました。

そして、やがて、ミホという女性が、目に見えるようにイメージされてきます。
トシオが描きたかったミホは、どのようなものだったのか......答えは.....人それぞれでしょうね。

とりとめのない....頼りない....恐ろしい...愛しい。
言い表せない、一人の女性ミホの根源的な何かが....そのイメージが膨らんできます。

やはり、印象に残る小説には違いありません。

死の棘日記も出版されていますが、今は読む気がしません。

|

« フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち | トップページ | 落っこちたら受け止めて »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小説 死の棘:

« フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち | トップページ | 落っこちたら受け止めて »