小説 死の棘
島尾敏雄 著
昭和56年発行
平成17年38刷
十数年来(少々オーバーかも)読もう読もうと気にかけていた本、やっと読みました。
ADSL不調のおかげ?かもしれません。
秋だからでしょうか?
むしょうに、本が読みたくなって。
読み始めたんのは良いのですが、何せ、視力があやしい年になった私にとって、この本はきつかった。
改行がほとんどないページが六百数十ページ。
そして、長男伸一の言う「カテイニジジョウ」が延々と書き続けられる。
数十ページ読んだ段階で、最後まで読みきれるだろうか....不安になってしまいました。
夫トシオの不実に心身を消耗した妻ミホは、とうとう心の平衡を崩してしまう。
あなたのきもちはどこにあるのかしら。どうなさるつもり?。あたしはあなたには不必要なんでしょ。だってそじゃないの。十年ものあいだ、そのように扱ってきたんじゃないの。あたしはもうがまんしませよ。もうなんと言われてもできません。十年間もがまんしつづけてきたのですから、爆発しちゃったの。もうからだがもちません。見てごらんなさい、こんなに骸骨のようにやせてしまって、あたしは生きてはいませんよ。生きてなどいるもんですか。
この本の6~7頁の文章を引用しました。
そこから一年数か月。
まさに火宅の生活が続きます。
もう、ミホの発作、とトシオの脅え、そして格闘が六百数十頁続きます。
劇的な、エンディングもなく、ただ、精神病院に入院するところでこの小説は終わります。
正直な話、何時、読み終わるか、このまま終わってしまったら、この小説って何の意味があるのだろうか、なんて考えながら、読み進めました。
そして、やがて、ミホという女性が、目に見えるようにイメージされてきます。
トシオが描きたかったミホは、どのようなものだったのか......答えは.....人それぞれでしょうね。
とりとめのない....頼りない....恐ろしい...愛しい。
言い表せない、一人の女性ミホの根源的な何かが....そのイメージが膨らんできます。
やはり、印象に残る小説には違いありません。
死の棘日記も出版されていますが、今は読む気がしません。
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