水呑弥三郎
水上勉は、小説「蓑笠の人」で飢饉ににみまわれた時代を背景に生きた同郷二人、水呑弥三郎と良寛の生涯を綴っています。
良寛に対する、角度を変えた見方を提示しています。
名主の子として生まれ、18歳で出家し、後に貧しい庵に住み、托鉢生活。子供との戯れ、書を記し、貞心尼と和歌を交わし......今なお高僧仰がれる良寛。
凶作の世に、行動を起こし、その事により、佐渡に流され過酷な人生を送らざるを得なかった名もなき水呑弥三郎。
すべてを失いながらも「親さま」を信じきって菩提寺で立亡した弥三郎。
「うらをみせおもてをみせて散るもみじ」最後の歌を残して逝った良寛。
おなじ蓑笠の人。
以下は、水呑弥三郎の言葉とされている。(同書から引用させていただきます)
「幼のうして無常をおぼえ、寺子屋にゆきて出家の道を志せとも水呑みは出家もご法度なりしため、爾後、出家は思いとどまりて、働きて生くることを心がけ、田をつくり、山を伐り、海に出て舟をいだすを道と心得ぬ。道はくらしの中にありて、学習の中になかりしことを知りたるのはのちのことなり、学習をもって道をもとむれば道はさらに遠のきて、掴めることなけれども、暮らしの中にあれば、道は足下なり。世の人、道を求めて出家するときくは不可解なりと」
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コメント
elmaさん、コメントを頂きありがとうございます。
この様な著作に出会うとドキッとします。
これも読書の楽しみですね。
ひろさちやは「観音行にいきた人」と表現していますが、一人の人物に対して、いろいろ見方があります。
まさに「うらをみせおもてをみせて散るもみじ」ですね。
投稿: elmaさんへ | 2006.10.22 02:49
おはようございます、makoさん。
>働きて生くることを心がけ、田をつくり、山を伐り、海に出て舟をいだすを道と心得ぬ。
ここに生きることの真実があるような気がします。「苦しいけれど、また、喜び」そんな生活を求めていきたいですね。この本を読んでみたいと思いました。
投稿: elma | 2006.10.21 05:40