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2006.08.06

版画の青春

Hannganoseisyun_1


副題は、版画の青春―生命を描く、大正期『月(つく)映(はえ)』の時代―です。

三部構成になっています。
1、「月映」の作家 死を思う青年の心
2、抒情の風景画
3、官能の解放 女性と風俗表現

町田市国際版画美術館で9月24日まで開催されています。

第一部にコーナーでは、
大正の青春、版画の青春。
喜びや悲しみ、官能や狂気、愛や恋愛、希望、苦悩、恐怖を積極的に表現した作品が並んでいます。

私は、田中恭吉(たなか・きょうきち)の作品(詩と木版)に共感を覚えました。

Tanaka

田中恭吉(たなか・きょうきち) 冬蟲夏草(公刊『月(つく)映(はえ)』III) 1914年 15.7×13cm

以下に、詩の一部を紹介します。

傷みて なほも ほほえむ
芽なければ いとど かわゆし
こころよ こころよ しずまれ
しのびて しのびて しのびよ


きのふは われの死に顔
生きてあるは 今 のみ
それもはや 消え ゆく
ふしぎの うえに 照る月

同士藤森静雄の妹追悼号に寄稿した詩
現身の形骸(かたち)を捨てて
永遠の創始に入るを歎きたまうな


2、抒情の風景画 3、官能の解放 女性と風俗表現のコーナーでは
橋口五葉の作品(風景、美人画、共に木版)がとてもよかった。
その他、坂本繁二郎の日本風景版画 筑紫の部、伊藤深水の近江八景、新美人十二姿、岸田劉生の作品展示もあります。

意外な作品が観られるのも、この美術館に通う理由になっています。


以下は、HPの解説文を引用させていただきました。

版画の青春―生命を描く、大正期『月(つく)映(はえ)』の時代―  本展は大正期の版画を紹介し、その時代の表現の志向性、表現の内容などを再考察する展覧会です。  「版画の青春」とは版画家であり版画史研究家でもあった小野忠重が、自著のタイトルに付したことばです。小野はその中で、自身が青春時代に版画制作に没頭したことを追想しながら、若い時期の作品を指す「若がき」こそは創作版画の青春に他ならないと記述しています。このことばは小野をはじめ、多くの版画作家にとって、創作版画が青春時代の大切な記憶として刻まれていること、さらに版画家たちの「若がき」は、明治末に、水彩画などの複製として制作されていた版画を批判して登場して間もない、創作版画の初期に重なるという意味で、「版画の青春」と呼べるという意味に解釈できます。本展覧会のタイトルにも、これら二つの意味を込めました。  大正期は版画を含めて、白樺派が主張した個性主義の影響下に、喜びや悲しみ、官能や狂気、愛や恋愛、希望、苦悩、恐怖といった個人の内なる感情や葛藤を積極的にさらけ出す表現が流行した時代です。「生命」に根ざしたそれらの美術は、耽美的、象徴的、ロマン的な表現を生み出し、自然を模倣した明治の表現とは全く異なる、大正期特有の内面的表現世界をつくりだしました。『月映』は恩地孝四郎、田中恭吉、藤森静雄という画家志望の青年たちの熱い友情によって発行された版画誌で、死の病に倒れた友人への心情を赤裸々に表出したものなど、青年の純粋な気持ちを濃密に表現した木版画をおさめ、この点でも「版画の青春」というイメージと重なっています。  本展覧会では、この『月映』の版画を中心に、大正初期から関東大震災(大正12年)前までの、大正期らしい、主観的で個性的表現が見られる版画約160点と若干の資料を四つのコーナーによって紹介し、この時代の美術表現の特徴を浮き上らせます。90年ほど前の作品ですが、現代人が見ても共感する表現が見つかると思います。どうぞご鑑賞ください。

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コメント

elmaさん、コメントを頂き有難うございます。

あまり期待しないほうが良いかもしれません。
圧倒的な感銘を受ける作品には出会えないかもしれませんよ。

じっくり鑑賞すると、徐々に良さが見えてくるかもしれません。

詩と共に鑑賞すると良さが見えてくるかもしれませんね。

投稿: elmaさんへ | 2006.08.07 12:46

「こころよ こころよ しづまれ・・・」
の詩は、すてきですね。
私もこの展覧会は行こうと思っていたところです。近いうち、絶対行きます。

今年は、版画の魅力をたくさん知ることができました。
これまで、版画というと、北斎、棟方志巧ぐらいのイメージしかもっていなかったのですが、すばらしいものであることを知ることができました。特に「メゾチント」の魅力・・・。
町田市版画美術館の存在は大きいですね。

投稿: elma | 2006.08.07 04:39

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