2023.11.27

特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」

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特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」

会期 2023年10月11日(水)~12月3日(日)

東京国立博物館 平成館 特別展示室


日本美術の教科書」と呼ぶに相応しい作品の数々!
その通りの展覧会だと思いました。
トーハクの特別展ならではの充実度です。
国宝、重文が並びます。

4期にわたって展示替えがあります。
長尺の絵巻きなどは、順次展示替えが行われますので、一度にすべては観ることはできません。

この絵巻きは、あの展覧会で総覧できた、などと思いだしながら見てきました。

(画像はクリックで拡大表示になります)

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展覧会の構成は次の通りです。
序章 伝統と革新―やまと絵の変遷―
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国宝 日月四季山水図屏風 室町時代・15世紀 大阪・金剛寺蔵

第1章 やまと絵の成立―平安時代―
第1節 やまと絵の成立と王朝文芸
第2節 王朝貴族の美意識
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国宝 和漢朗詠集 巻下(太田切)部分 平安時代11世紀 東京・静嘉堂文庫美術館蔵
第3節 四大絵巻と院政期の絵巻
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国宝 源氏物語絵巻 夕霧(五島美術館蔵)部分 平安時代・12世紀 東京・五島美術館蔵


2章 やまと絵の新様―鎌倉時代―
第1節 写実と理想のかたち
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国宝 伝源頼朝像 鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺像 (11/5までの展示)
第2節 王朝追慕の美術
第3節 鎌倉絵巻の多様な展開
 
3章 やまと絵の成熟―南北朝・室町時代―
第1節 あきらめのかたち
第2節 南北朝・室町時代の文芸と美術
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重文 百鬼夜行絵巻 伝土佐光信筆 室町時代・16世紀 京都・真珠庵像
第3節 和漢の混交と融合
 
4章 宮廷絵所の系譜

終章 やまと絵と四季―受け継がれる王朝の美―
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重文 浜松図屏風(左隻)室町時代・15~16世紀 東京国立博物館蔵
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重文 浜松図屏風(右隻)室町時代・15~16世紀 東京国立博物館蔵


同時期に本館で開催されている、特集展示も重量感のある展示内容です、こちらも是非。
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近世のやまと絵-王朝美の伝統と継承-
本館 7室・8室・特別2室 :2023年9月5日(火) ~ 12月3日(日)
仏画のなかのやまと絵山水
本館 3室 :2023年9月20日(水)~12月3日(日)

トーハクに一日いるつもりでお出かけがおすすめです。


―HPの解説ー
平安時代前期に成立したやまと絵は、以後さまざまな変化を遂げながら連綿と描き継がれてきました。優美、繊細といったイメージで語られることの多いやまと絵ですが、それぞれの時代の最先端のモードを貪欲に取り込み、人びとを驚かせ続けてきた、極めて開明的で野心的な主題でもありました。伝統の継承、そして革新。常に新たな創造を志向する美的な営みこそが、やまと絵の本質と言うことができるでしょう。 本展は千年を超す歳月のなか、王朝美の精華を受け継ぎながらも、常に革新的であり続けてきたやまと絵を、特に平安時代から室町時代の優品を精選し、ご紹介するものです。これら「日本美術の教科書」と呼ぶに相応しい豪華な作品の数々により、やまと絵の壮大、かつ華麗な歴史を総覧し、振り返ります。

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2023.11.23

古伊賀 破格の焼き物 

古伊賀 破格の焼き物
土・炎・人ーー巧まずして生まれた造形

会期 2023年10月21日(土)~12月3日(日)

五島美術館

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(画像はクリックで拡大表示になります)

”やきものの景色を楽しむ”
この展覧会にぴったりの言葉かもしれません。
日本独特の美意識が形になって表現されています。

展覧会の構成です。
第一部 花生
古伊賀の花生は数が限られ、その豊かな造形や堂々たる風格から数寄者の間で珍重されている。
約28cmの高さ、轆轤で成形、ヘラや手で押さえて歪みを加え、線彫りなどで装飾を加えています。

第二部 水差
伊賀焼の水差が茶会記に登場するのは17世紀初頭になってからだそうです。

第三部 香合・茶入れ・茶碗・鉢・壺
小ぶりで荒々しい姿の香合がとても良かったので、解説をメモしてきました。
”伊賀焼の香合の作品は伽藍石香合である。廃寺の礎石を沓脱石や庭の飛び石に用いた「伽藍石」に類似することからこの名が付いた”

古伊賀茶入について・・
茶を喫するためのうつわである茶碗は、客の手や口に直接ふれるものである。伊賀焼の茶碗が非常に少ないのは、ごつごつした肌合いがこのような用途に適していないためであろうか。(キャプションから)
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伊賀茶碗 銘 霜枯 桃山時代~江戸時代・17世紀 表千家不審庵

第四部 出土資料
 

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伊賀耳付花生 銘 聖 個人蔵
鴻池家に伝来したもので、箱の蓋表に「聖」の銘があります。
腕を腰にあてたような耳の位置、
ヘラで彫った線が顔のように、
あたかもラジオ体操せる人体のようであると・・

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重要文化財 伊賀耳付水指 銘 破袋 桃山~江戸時代・17世紀
安土桃山時代の茶人、古田織部が豊臣家の家臣大野主馬に宛てた書状に、
「今後、これほどのものはないと思う」と絶賛している。
この美術館で何度か拝見しましたが、一度見たら忘れられない作品です。

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伊賀耳付水差 銘 鬼の首 桃山~江戸時代・17世紀 石水博物館
「鬼の首」は川喜多久太夫政令(半泥子1878-1963)による命名。
手に入れたその喜びを「鬼の首をとって帰るや五月晴れ」と外箱蓋裏に書きつけている。

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伊賀擂座瓢形水差 銘 呂洞賓 根津美術館蔵
銘の”呂洞賓”は中国の八仙人の一人。


ーチラシからー
「古伊賀」は、桃山時代から江戸時代にかけて、今の三重県伊賀市で焼かれたやきものです。歪んだ形と、碧緑色の「ビードロ釉」、赤く焼きあがった「火色」、灰色のゴツゴツした器肌の「焦げ」が魅力の焼き締め陶器。古伊賀を代表する花生・水指の名品から、窯跡や消費地出土資料まで約90点を集めて展観します。

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2023.11.19

号外 町田ゼルビア J2優勝 J1昇格 パレード

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(画像はクリックで拡大表示になります)

”町田ゼルビア J2優勝 J1昇格 パレード ”は、
11月18日(土)に行われました。

”ゼルビア”は、
町田市の樹であるケヤキの英語名のZELKOVA(ゼルコヴァ)と、町田市の花であるSALVIA(サルビア)を合わせた造語だそうです。

撮った写真・動画をまとめてみました。

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2023.11.16

石川真生 ー私に何ができるかー

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石川真生 ─私に何ができるか─

会期 2023年10月13日(金)~ 12月24日(日)

東京オペラシティー アートギャラリー


 HPにあるハンドアウトで予習していくのもいいかと・・・
会場でも配布されます。

展覧会の構成は以下の通りです。
本展は、一部の作品を除いて撮影可でした。(撮影条件あり)
(画像はクリックで拡大表示になります)

写真作品それぞれに番号がふられています。

1-11 赤花 アカバナー 沖縄の女1975-1977

12-17 沖縄芝居ー仲田幸子-行物語 1977-1992
19-19沖縄芝居ー名優たち 1989-1992
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20-24沖縄エレジー 1983-1986
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25-31Life in Phlly 1986
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32-37沖縄と自衛隊 1991-1995、2003- 
38-44基地を取り巻く人々 1989-
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45-51ヘリ基地に揺れるシマ 1996-
52-55私の家族 2001-2005
56-61日の丸を視る目 1933-2011
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62森花-夢の世界2012-2023

63-166大琉球写真絵巻 2014-
63-84 パート 1 Part 1  2014
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85-107 パート 8 Part 8 2020-2021
108-130 パート 9 Part 9 2021-2022
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131-166  パート 10 Part 10 2022-2023
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撮影した写真をまとめてみました。

 

―HPの解説ー
沖縄を拠点としながら精力的な制作活動を続ける写真家・石川真生(いしかわ まお 1953-)の初期からの主要な作品を始め、とりわけ2014年から取り組んでいる「大琉球写真絵巻」の新作を中心に展示し、石川真生の実像に迫る個展を開催します。
石川の作品は、2004年の横浜美術館でのグループ展「ノンセクト・ラディカル 現代の写真III」において、沖縄以外の美術館で初めて紹介されました。以来、国内外での数多くの展覧会を経て、2021年には沖縄県立博物館・美術館にて回顧展「石川真生:醜くも美しい人の一生、私は人間が好きだ。」が開催されました。本展は回顧展で示された成果も踏まえつつ、東京で初めての個展として開催します。
石川の写真は、国内外にパブリックコレクションがあり、その活動も広く知られているにもかかわらず、これまで発表された作品の流れを紹介する機会が多くありませんでした。本展では、初期の作品から最新作に至るまで、石川の作歴を概観することができると同時に、昨年沖縄の本土返還50周年を迎えるもなお、困難な状況に置かれている現代の沖縄という地政学的な最前線で撮影を続けている石川の活動をご覧いただく好機にもなります。
 

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2023.11.12

激動の時代 幕末明治の絵師たち

激動の時代 幕末明治の絵師たち

2023年10月11日(水)~12月3日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います。

サントリー美術館


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(画像はクリックで拡大表示になります)

江戸から明治へと移り変わる激動の19世紀、
今なお新鮮な驚きや力強さが感じられる幕末明治期の作品群を特集する展覧会です。


展覧会の構成は次の通りです。

第1章 幕末の江戸画壇
江戸時代の狩野派、その門下からは従来の狩野派とは異なる独創的な作品を描く絵師も現れました。
伝統的な仏画の画題に洋風の陰影法を用いて極彩色に描いた狩野一信の「五百羅漢図」(大本山増上寺)また、江戸画壇に大きな影響力をもった谷文晁(1763~1840)と、その一門の作品などを紹介しています。
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五百羅漢図 第二十一・二十二幅 狩野一信 百幅のうち六幅 嘉永7 ~文久3年(1854 ~ 63) 大本山増上寺
全100幅からなり10年の歳月を費やして描かれた一信畢生の大作。

第2章 幕末の洋風画
幕末の絵師たちは「西洋絵画をいかに受け入れたのか」
葛飾北斎(1760~1849)に学んだ洋風画家が安田雷洲(?~1859)は、緻密な銅版画を得意とし、独特の洋風表現をもつ肉筆画を描きました。安田雷洲を中心に幕末の洋風画を紹介しています。
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捕鯨図 安田雷洲 一幅 江戸時代 19世紀 歸空庵

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江戸近国風景 安田雷洲 八枚 江戸時代 19世紀 神戸市立博物館

第3章 幕末浮世絵の世界
北斎、広重、国芳といった巨匠からは多くの弟子が輩出され、特に歌川派は幕末浮世絵界の一大勢力となりました。
歌川国芳や歌川派の絵師たちに注目した、幕末の浮世絵の世界の作品とともに、横浜浮世絵と呼ばれる開港した横浜の西洋風俗などを主題にした作品が紹介されています。
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讃岐院眷属をして為朝をすくふ図 歌川国芳 大判錦絵三枚続 嘉永4年(1851)頃 神奈川県立歴史博物館
曲亭馬琴作『 椿説弓張月 』に取材した図。讃岐院(崇徳天皇)が遣わした天狗を巨大なわに鮫が嵐に襲われた源為朝を救う場面を描く。(キャプションから)

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両賊深山妖術競之図 歌川芳艶 大判錦絵三枚続 万延元年(1860) 千葉市美術館

第4章 激動期の絵師
江戸の地に生き、東京で活躍した絵師たち、近代歴史画の祖・菊池容斎(1788~1878)、血みどろ絵で知られる月岡芳年(1839~92)、あらゆる画題に挑み画鬼と称された河鍋暁斎(1831~89)、光線画で一世を風靡した小林清親(1847~1915)といった絵師の作品を特集。
併せて、文明開化、近代日本の中心となった東京を描いた開化錦絵を紹介しています。
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魁題百撰相 井上五郎兵衛 月岡芳年 大判錦絵 江戸~明治時代 19世紀 町田市立国際版画美術館
慶応4年(1868)の上野戦争に取材した揃物の一図。江戸時代、徳川家や同時代の事件に関する浮世絵は禁止されていたため、上野戦争にまつわる人物を歴史上の人物に仮託して描く本図は、戦国時代に山口を本拠とした大内家の家臣、井上五郎兵衛になぞらえた4,彰義隊の兵士を表したもの。(キャプションから)

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鍾馗ニ鬼図 河鍋暁斎 双幅 明治4 ~ 22年(1871 ~ 89) 板橋区立美術館


―HPの解説ー
江戸から明治へと移り変わる激動の19世紀、日本絵画の伝統を受け継ぎながら新たな表現へ挑戦した絵師たちが活躍しました。本展では幕末明治期に個性的な作品を描いた絵師や変革を遂げた画派の作品に着目します。
幕末明治期の絵画は、江戸と明治(近世と近代)という時代のはざまに埋もれ、かつては等閑視されることもあった分野です。しかし、近年の美術史では、江戸から明治へのつながりを重視するようになり、現在、幕末明治期は多士済々の絵師たちが腕を奮った時代として注目度が高まっています。
本展では、幕末明治期の江戸・東京を中心に活動した異色の絵師たちを紹介し、その作品の魅力に迫ります。天保の改革や黒船来航、流行り病、安政の大地震、倒幕運動といった混沌とした世相を物語るように、劇的で力強い描写、迫真的な表現、そして怪奇的な画風などが生まれました。また、本格的に流入する西洋美術を受容した洋風画法や伝統に新たな創意を加えた作品も描かれています。このような幕末絵画の特徴は、明治時代初期頃まで見受けられました。
社会情勢が大きく変化する現代も「激動の時代」と呼べるかもしれません。本展は、今なお新鮮な驚きや力強さが感じられる幕末明治期の作品群を特集する貴重な機会となります。激動の時代に生きた絵師たちの創造性をぜひご覧ください。

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2023.11.08

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ

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大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ

2023年11月 1日(水) ~ 2023年12月25日(月)

国立新美術館

大巻伸嗣はこれらの作品で、何を表現、伝えようとしているのか・・・
出品リストの解説に詳しいです。
”HPで予習”または”会場にある作品リスト”を読んでからの鑑賞がお勧めです。
脳の回転が鈍い自分にはなかなか難しい世界でもありました。

(画像はクリックで拡大表示になります)
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Gravity and Grace, 2023
ステンレス、LEDライト 700×Φ400cm 展示空間50×8×8 詩:関口涼子


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《Gravity and Graceーmoment 2023 》
フォトグラム、RCペーパー


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《Liminal Air TimeーSpace 真空のゆら。》2023
布、ファン、ライト 展示空間:24×41×8m 布:36.8×15m


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《Linear Fluctuation》2019-2021
水彩、紙


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《Drawing in the Dark》2023などの展示風景
 

 展示構成
1《Gravity and Grace》

2《Gravity and Grace ̶ moment 2023》

3 舞台美術、コラボレーション
3-1 舞台「Rain」のためのドローイング
3-2《Memorial Rebirth TAIWAN Road》のためのドローイング
3-3《Liminal Air Fluctuation̶Existence》のためのドローイング

4《Liminal Air Space ̶ Time 真空のゆらぎ》

5《Linear Fluctuation》

6《Rustle of Existence》

7ドローイング
7-1《影向の家》のためのドローイング
7-2《影向の家》のためのドローイング
7-3《Drawing in the Dark》
7-4《Drawing in the Dark (栗林公園)》
7-5《影向の家》のためのドローイング
7-6《無題》
7-7《無題》
7-8《無題》
7-9《ファントム・マウンテン》

 

―HPの解説ー
大巻伸嗣(1971年岐阜県生、神奈川県在住)は、「存在するとはいかなることか」という問いを掲げ、身体の感覚を揺さぶるような大規模なインスタレーションを創り出してきた現代美術家です。大巻は、そうしたスケールの大きな創作を、日本はもとより、アジアやヨーロッパなど世界各国で発表し、高い評価を得てきました。また、地域を活性化するアート・プロジェクトから舞台芸術まで、多くの人々と協働して空間を変容させるさまざまな現場でも比類のない資質を発揮しています。

大巻の空間に包み込まれた私たちは、この世界における我が身の存在に、新たな視点を投げかけることになります。空間に痕跡を残すことで自らの身体を実感し、また、闇に包まれたり、強烈な光に照らされたりすることで、身体だけでなく、意識や感覚に、内省的に向き合うことを促されるのです。

大巻は、現代社会がどのような歴史を経て今に至り、現在どのような問題を抱えているかを深く考察し、それをもとにインスタレーションの着想を得てきました。また、光と闇を重要な要素とする大巻の空間は、太陽のリズムとともに在るこの世界を象徴するかのような始原的な感覚を湛えています。この始原性とも関わるのが、大巻が好んで用いてきた繊細かつ濃厚な装飾的な造形です。人間は、自然を抽象化した文様を身近なものとすることで、自然に寄り添って生きてきたからです。大巻のインスタレーションは、現代社会に対する優れた批評である一方、人間に普遍的にそなわる根源的な造形志向を色濃く反映しているのです。

本展覧会は、国立新美術館で最大の、天井高8m、2000m²にも及ぶ展示室をダイナミックに使って開催されます。この広大な空間でなければ展示できないインスタレーションは、観客の身体的な感覚と強く響き合い、細分化した世界に生きる私たちが失った総合的な生の感覚を喚起することでしょう。展示には、映像や音響、そして詩も用いられるほか、会場内でのパフォーマンスも予定されています。大巻が創り出す、現代の総合芸術をお楽しみいただければ幸いです。

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2023.11.04

生誕100年 遠藤周作展 ミライを灯すことば

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生誕100年 遠藤周作展 ミライを灯すことば

会期 2023年10月21日(土)~12月24日(日)

町田市文学館ことばらんど


(以下、展示会場に掲示されている文章を参照しています)

私が洗礼を受けたのは先にも書いたように、自分の意思からでははなかったが、
その後、私にとってあの林にいた犬の眼が人間を見るイエスの眼に重なることがある。小鳥だってそうだ。私は十姉妹を飼ったことがあるが、その一羽が病気になり、私の手の中で息を引きとったことがあった。うすい白い膜が彼の眼を覆いはじめる時ーーそれは十字架で息を引きとったイエスの眼を私に連想させた。犬や小鳥はたんに犬や小鳥ではない。それは我々を包み我々を遠くから見守っていてくれる小さな投影なのだーー「犬と小鳥と」

展示会場には、さまざまな関連資料とともに”遠藤周作のこのような文章”が所狭しと並んでいます。

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チラシの表紙の絵は©横尾忠則
(この画像はクリックで拡大表示になります)

 

展示構成は次の通りです。

・小説家遠藤周作
【影に対して】
2020年、長崎市遠藤周作文学館で発見された小説「影にたいして」。
用いられた原稿用紙から町田市在住時代に執筆されたことが推察される。
「むかし幾度、彼は父と母のことを小説に書こうとしただろう。だが原稿用紙に筆を走らせながら、勝呂は父に対しては意地悪な、母に対しては甘い自分の眼からどうしても抜けきれぬのを感じて書き続けるのをあきらめた」


・テーマ 差別
【白い人】
フランス留学体験が元となり、留学から帰国後2年をかけて「白い人」を執筆。
「白い人」は、ナチス占領下のフランス、リヨンでゲシュタポの一員となった「私」が自らの生い立ち、容姿へのコンプレックス、加虐への目覚めを綴った手記。
芥川賞を受賞し、作家としての第一歩となった。


・テーマ 良心
【海と毒薬】ーー良心とは何か
「仕方がないからねえ。
あの時だってどうにも仕方がなかったのだが、これからだって自信がない。これからもおなじような境遇におかれたら、僕はやはり、アレをやっていまうかもしれない・・アレをね」


・テーマ 弱さ
【沈黙】
「私は戦争中から自分が弱いせいで、何度も踏絵を踏んできました。戦争が終わった後も、ずいぶん踏絵を踏んでいます。自分の人生の踏絵をいくつも踏み続けながら生きてきた。これからも踏絵を前に出されたら、踏んでしまうでしょう。私は自分が強者だとはとても思えない。いつだって弱者ですーー「人生にも踏絵があるのだから」


・神・時代
【侍】ーー王に会いに行った男
藩主の命によりローマ法王への親書を携えて、「侍」は海を渡った。
「あまたの国を歩いた。大きな海も横切った。それなのに結局、自分が戻ってきたのは土地が瘦せ、貧しい村しかないここだという実感が今更のように胸にこみあげてくる。それでいいのだと侍は思う。ひろい世界、あまたの国、大きな海。だが人間はどこでも変わりなかった。どこにも争いがあり、駆引きや術策が働いていた。(略)侍は自分が見たのは、あまたの土地、あまたの国、あまた町ではなく、結局は人間のどうにもならぬ宿業だと思った。そしてその人間の宿業の上にあのやせこけた醜い男が手足を釘づけにされて首を垂れていた」


・理想のひとーーガストン・森田ミツ
日本にやってきたフランス人のガストン。彼はナポレオンの末裔と称する青年です。弱虫でドジだけど、お人好しな〝おバカさん〟は、行く先々で珍事を巻き起こしていきます。
「沈黙」や「侍」に先立って発表された二つの中間小説「オバカさん」と「わたしが捨てた女」
ガストン、森田ミツ両者は、遠藤が理想とする人間像、イエス像となって後の作品にも登場する。


・遠藤周作と町田
町田市玉川学園の自宅を「狐狸庵」と名付け、1964年から過ごした20余年の間にテレビのインタビュー番組やCMにも出演してユーモアに富む言動で幅広い人々に親しまれました。(HPから)


・テーマ 怪物
【スキャンダル】ーーほほえむ怪物
「長年のあいだ勝呂は小説を書きながら、どんな人間の陋劣のなかにも救いの徴を見ることが出来ると思ってきた。どんな罪にも再生のエネルギーがひそかに鼓動をうっていると信じてきた。だからこそ照れながらも自分をクリスチャンだと信じることができた。だが今日からはこの醜悪を自分のものと認めざるをえない。醜悪のなかにも救いの徴を見つけなけらばならない」


・テーマ 人生
【深い河】
人生の悲哀や問を抱えてインドツアーに参加した美津子ら4人と、カトリック司祭でありながらヒンズー教徒のために生きる大津の人生が、母なる河ガンジスを舞台に交錯し、それぞれが自分なりの答えを見出していく。  
[磯部]一人ぼっちになった今、磯部は生活と人生とが根本的に違うことがやっとわかってきた。そして自分には生活のために交わった他人は多かったが、人生の中で本当にふれあった人間はたった二人、母と妻しいなかったことを認めざるをえなかった。(略)河は彼の叫びを受けとめたまま黙々と流れていく、だがその銀色の沈黙にはある力があった。


―HPの解説ー
生誕100年を迎えた作家・遠藤周作(1923-1996)。新資料の発見が相次ぎ、再注目されている日本を代表する作家の一人です。「日本人にとってのキリスト教」を文学テーマの基底に据え、重厚な純文学作品から歴史小説、エンターテインメント小説、戯曲まで多彩なジャンルの作品を生み出しました。そして、これらの作品において差別、罪の意識、個と権力、人間の弱さなどの心の暗部を描き出し、本当の自分とは何か、悪に救いはあるのか、人生とは、神、信仰とは何かを問い続けました。教え諭すのではなく共に悩み苦しみ、弱者に寄り添うことで多様性への寛容を示した遠藤文学は多くの読者を慰め、勇気づけています。また、もう一つの名・狐狸庵先生としてエッセイを次々と発表。町田市玉川学園の自宅を「狐狸庵」と名付け、1964年から過ごした20余年の間にテレビのインタビュー番組やCMにも出演してユーモアに富む言動で幅広い人々に親しまれました。遠藤は後年、二つの名を持ったことにより「人一倍、生きた」という充足感を得られたと語っています。
本展では、次世代に語り継ぐ文学として遠藤文学の再評価を試みます。代表作『白い人』『海と毒薬』『沈黙』『侍』『スキャンダル』『深い河』を、現代作家 山崎ナオコーラ、夏川草介、朝井まかて、阿部暁子氏らが新たな視点で読み解き、いま読むべき文学としての意義を提示します。社会的不安が蔓延し、孤立や孤独、生きづらさ感じる現代。遠藤文学の新たな地平から、生きることの意味、未来を灯すメッセージを読みとっていただければ幸いです。

  

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2023.10.31

10月花散歩 2023

今年の10月は、夏日が続きましたが、ようやく朝晩は薄着だと寒さを感じるようになってきました。

蕎麦畑を真っ白に染めた初旬の眺めも、すっかり実を着けて小麦色?
この景色も味わいのあるものだと思いました。

紅葉はこれからです。
野鳥が現れる機会は今月も少なくて、残念でした。

スマホで撮った写真・動画をまとめてみました。 



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2023.10.27

めぐりあう大津絵 八王子夢美術館

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めぐりあう大津絵
笠間日動美術館・小絲源太郎コレクションと
神戸女子大学古典芸能研究センター・志水文庫の大津絵

会期 2023/9/15(金)〜2023/11/5(日)

八王子夢美術館 

(画像はクリックで拡大表示になります)

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初期大津絵
《鬼の念仏》公益財団法人日動美術財団蔵
「鬼の念仏」は大津絵のなかでもとりわけ人気が高く、作例が多い図であり、初期から後期まで江戸時代を通して制作された。本図はそれ等の中でも初期大津絵の図像を見せる逸品のひとつである(キャプションから)

志水文庫の大津絵
《阿弥陀仏》神戸女子大学古典芸能研究センター蔵
阿弥陀仏の独尊図である。阿弥陀仏が立っている朱色の丸は蓮台、その下の白緑は雲を表す。来迎印を結んでいることとあわせて、これは阿弥陀来迎図の一種と言える(キャプションから)

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展覧会の構成は次の通りです。
大津絵の製作年代
前期大津絵:慶長年間頃(1596)~万時年間頃(1661)
初期大津絵:寛文年間頃(1661)~正徳年間頃(1715)
中期大津絵:享保年間頃(1716)~享和年間頃(1803)
後期大津絵:文化年間頃(1804)~明治以降(1868~)

第1部 笠間日動美術館・小絲源太郎コレクション
1-1 大津絵の逸品―初期大津絵
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大津絵《傘さす女》笠間日動美術館
戦前から広く知られた名品『傘さす女』、本作は梅原龍三郎の所蔵品として、岸田劉生や柳宗悦らが書籍や雑誌などで紹介したが、戦後以降所在が不明であった。おそらく梅原は昭和10年代に弟子であった益田義信に譲り、その後1955年以前に小絲の所蔵になったと推測する。(キャプションから)

1-2 大津絵全盛時代―初期から中期にかけて
1-3 富岡鉄斎旧蔵『古筆大津絵』
道歌入りの大津絵が収録された画巻、軸装された作品が展示されています。
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黒い雲の切れ間から、上半身を乗り出した赤鬼が錨を使って落とした太鼓を必死で拾い上げている。錨を結んだ紐は鬼の褌だというのだからなんともみっともない姿である。
かんじんのたいこを
とんとんおとしたる
かみなりどのの
なりのわるさよ

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猫とねずみが酒盛りをする図
ねずみは、天敵であるはずの猫を前にしながら、酒に酔ってすっかり気を許しているようだ。周囲には、酒を飲みすぎて身を亡ぼすといった内容の道歌がぎっしりと書かれている。
おそろしき
ものを
にやんとも
おもハざる
心から身をつゐに
とらるるゝ 

1-4 関連作品

第2部 神戸女子大学古典芸能研究センター 志水文庫の大津絵
志水文庫の大津絵はすべて宗教性の強い画題、すなわち仏画題の大津絵4点と神像画2点からなる。(キャプションから)
2-1 志水文庫の大津絵
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大津絵《大日如来》神戸女子大学古典芸能研究センター蔵

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大津絵《八幡神》神戸女子大学古典芸能研究センター蔵
仏教保護、護国の神として信仰を集めてきた八幡神を描く。八幡神を主題とする大津絵もまた残存数が少なく、志水文庫以外では旧町田市立博物館収蔵作品と日本民芸館が所蔵する作品の各一点が知られている。本展出品作を含む3点とも、山上で白馬に跨り、弓を手にして、矢を背負うという構図である。旧町田市立博物館と日本民芸館の八幡神は画風が似通っており、同一作者の手によるものとの指摘があるが、志水文庫の八幡神は、構図が同じでも描き手は異なる。(キャプションから)

2-2 大津絵と近世文芸
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大津絵十種《鬼の行水》久古田米僊 画 明治27年版 神戸女子大学古典芸能研究センター蔵

2-3 大津絵と近世演劇
2-4 多様化する大津絵


―HPの解説ー
大津絵は、滋賀県大津市の大谷・追分周辺で、江戸時代初期から旅人向けのお土産、護符として流通していた絵画です。その起源については諸説ありますが、一説によれば慶長年間に発生した本願寺の分立により、門前町からの立ち退きを命じられた絵仏師たちが追分の地に転居し、旅人相手に手頃な値段の仏画を販売したことがその始まりであると言われています。時代が降るにつれ、神社の絵馬に見られる図柄、あるいは風俗図など幅広い画題が取り入れられて世俗化していった大津絵は、同時代の絵画だけでなく、人形浄瑠璃や歌舞伎、浮世草子や合巻などの文学作品、そして道徳哲学の分野にも影響を与えるほど庶民の間に浸透していきます。また近現代に入ると、多くの文化人たちがその造形的な面白さに惹かれ、美術コレクションとしてさかんに蒐集されるようになるとともに、大津絵と日本の文化史との関係性について、様々な角度から活発に研究が進められるようになりました。

本展では、昭和の洋画家・小絲源太郎氏(1887~1978)が蒐集した大津絵コレクションを展示します。また、演劇資料や仏教版画の蒐集がきっかけとなって大津絵に興味をもって研究した国文学者・信多純一氏(1931~2018)による大津絵とその関連資料のコレクションも展示。芸術家の視点からの蒐集品と、研究者としての視点からの蒐集品という、二つのコレクションがもつ個性を対比しつつ、時を越えて人々から愛される大津絵の魅力に迫ります。

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2023.10.23

浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」

 
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浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 
特別展「京都・南山城の仏像」

会期 2023年9月16日(土) ~ 2023年11月12日(日)

東京国立博物館 本館 特別5室


京都府の最南部にあり奈良県と隣接する南山城(みなみやましろ)には、古くから二つの古都の影響を受けて独自の仏教文化が花開きました。
京都府の南山城と呼ばれる地域に伝わる貴重な仏像を通して歴史や文化の奥深さをたどる展覧会です。

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(画像はクリックで拡大表示になります)



南山城にある古刹浄瑠璃寺、本堂に九体の阿弥陀如来座像があります。極楽往生の仕方は9段階あるといわれ、そのことになぞらえて造られました。今回110年ぶりの修理を終えたのを機に、そのうちの一体が展示されています。

国宝 阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀のうち) 木造、漆箔 京都・浄瑠璃寺
浄瑠璃寺本堂に安置される九体阿弥陀のうちの1体。平安時代中期以降に流行した穏やかな表現を基調としています。九体阿弥陀とは、9段階の極楽浄土になぞらえて作られた9体の阿弥陀如来像のことで、平安時代に主に貴族のあいだで流行しましたが、現存するのは浄瑠璃寺だけです。(キャプションから)

国宝 広目天立像(四天王のうち) 木造、彩色・截金 平安時代11~12世紀 京都・浄瑠璃寺
本堂の九体阿弥陀如来像の周囲に安置される四天王像のうち、西方を守る広目天です。誇張を抑えた温和な表現にくわえ全身に残る華麗な彩色や、金箔を細く切って貼付した截金から平安時代後期を代表する遺品と言えます。(キャプションから)

国宝 多聞天立像(四天王のうち) 木造、彩色・截金 平安時代11~12世紀 京都・浄瑠璃寺
本堂の九体阿弥陀如来像の周囲に安置される四天王像のうち北方を守る多聞天です。寄木作りの技法や表面仕上げは四天王像4体に共通ですが、多聞天のみ体幹部の構造や細部の表現がたと異なるため本来は単体の毘沙門天として造立された可能性もあります。(キャプションから)


重要文化財 十一面観音立像 木造 平安時代・9世紀 京都海住山寺
高さ3メートルにおよぶ巨象。奈良・東大寺の僧侶が創建した禅定寺の本尊で仏像の素材としては珍しいサクラで作られています。太い鼻筋に頬を張った瑞々しい顔立ち、浅く緩やかな彫は10世紀末の仏像の特徴で、和様彫刻へと歩みを進めた時代を代表する像です。(キャプションから)

重要文化財 阿弥陀如来立像 行快作 木造、漆箔・玉眼 鎌倉時代・嘉禄3年(1227) 京都・極楽寺
極楽浄土から往生するものを迎えに来る姿の阿弥陀如来像。作者は鎌倉時代の著名な仏師、快慶の弟子の行快です。整った顔立ちや細かい衣文線といった師の作風を受け継ぎながらも、鋭い眼差しや松葉状に分かれる衣文を多用する点に行快独自の作風が認められます。(キャプションから)

重要文化財 千手観音菩薩立像 木造 平安時代12世紀 京都・寿宝寺
千本の手で人々を救う千手観音。通常は42本に省略して作られますが千本に迫る多数の手を表した貴重な像です。鑿跡を残さず滑らかに仕上げた表面から木の質感がよく伝わり、バランスの良い体つきや柔らかな衣衣の表現などは、平安時代後期の作風を示します。(キャプションから)

重要文化財 十一面観音菩薩坐像 木造、漆箔・玉眼 鎌倉時代・13世紀 京都・現光寺
立った姿の観音菩薩像が多いなかで、珍しく座った姿をしているのは、観音菩薩の浄土である補陀落山(ふだらくせん)に居るるためと考えられています。腰を強く絞った天平彫刻のような肉体表現は鎌倉時代に奈良の地で活躍した慶派仏師たちによる古典彫刻の研究成果に通じます。(キャプションから)


―HPの解説ー
京都府の最南部、木津川流域は南山城(みなみやましろ)と呼ばれます。奈良時代には都が置かれ、その後も大寺院や中央貴族と深く関わるなど、独自の仏教文化が展開したこの地域には多くの貴重な仏像が伝わります。平安時代に九体阿弥陀(くたいあみだ、9段階の極楽往生に関わる9体の阿弥陀如来像)の造像が流行しましたが、九体寺とも呼ばれる浄瑠璃寺のものは現存する唯一の群像です。また、かつて恭仁京(くにきょう)があった瓶原(みかのはら)を山腹から望む海住山寺(かいじゅうせんじ)の檀像、東大寺の僧侶が創建した禅定寺(ぜんじょうじ)の巨大な本尊など、この地域ならではの魅力にあふれています。
本展では浄瑠璃寺九体阿弥陀の修理完成を記念し、南山城に伝わる数々の仏像を通じて、その歴史や文化の奥深さを辿ります。

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2023.10.19

楊洲周延 明治を描き尽くした浮世絵師

楊洲周延 明治を描き尽くした浮世絵師

会期 2023年10月7日(土)〜12月10日(日)
会期中、展示替えがあります。
前期 10月7日(土)〜11月5日(日)
後期 11月8日(水)〜12月10日(日)

町田市立国際版画美術館


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天保9年(1838)、高田藩(現・新潟県上越市)で生まれ楊洲周延は、歌川国芳や三代歌川豊国、豊原国周ら歌川派の絵師に師事しました。
幕末の戊辰戦争では、旧幕府軍に加わり江戸の高田藩士として上野戦争、函館戦争を戦いました。本格的に絵師としての活動を開始したのは40歳となる明治10年頃でした。
大正元年(1912)に亡くなった揚州周延。
約300点の作品で”明治を描きつくした浮世絵師”の全貌に迫ります。


展示構成の構成は以下の通りです。
一部の作品が撮影可です。(条件あり)
(画像はクリックで拡大表示になります)
HPの解説を参考にしています。

1章  高田藩士・橋本直義の時代―幕末~明治初年―
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豊原国周、楊洲周延 今様けんし 宮しま船中遊 明治 2 年(1869)9 月 町田市立国際版画美術館蔵

2章 浮世絵師・楊洲周延として立つ―明治8~10年頃―
明治10年(1877)、鹿児島で西南戦争が起こると、戦場の様子を臨場感あふれる描写で描き出しました。明治10年は、浮世絵師としてさらなる飛躍を遂げる地盤を固めた年となりました。
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楊洲周延 鹿児島記聞 延岡大武村激戦図 御届:明治10 年(1877)8 月13 日 町田市立国際版画美術館蔵

3章 画風の模索―明治11~16年―
周延は、自らの可能性を広げるように東京名所や美人、役者、時事など多様なテーマに取り組んでいきました。20231022
楊洲周延「青山仮皇居御能ノ図」御届:明治11年(1878)7月20日、町田市立国際版画美術館蔵


4章 美人画の絵師へ―明治17~19年―
この時期から周延は“美人画の絵師”としての活躍が顕著になります。

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楊洲周延 東絵昼夜競 伊賀の局 御届:明治 19 年(1886)1 月 国立歴史民俗博物館蔵

 

5章 二大テーマの誕生:開化と懐古―明治20~23年―
明治維新から約20年、女性たちの洋服や西洋風の髪型の導入が奨励されるようになり、周延の主要画題の一つとなったのが洋装の女性像でした。
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楊洲周延「飛鳥園遊覧之図」明治21年(1888)、町田市立国際版画美術館蔵

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揚州周延温故東の花 第七篇 将軍家於吹上而公事情操の図 町田市立国際版画美術館蔵


6章 広がる活動―明治24~26年―
明治20年代中頃の浮世絵界は、刊行数が減少する衰退期とされ、周延も例外ではなく、制作点数はあまり多くはありません。様々な表現上の試みを行ています。
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楊洲周延 二十四孝見立画合 十四 王裒 出版:明治 23 年(1890) 町田市立国際版画美術館蔵 

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楊洲周延 初春少女の戯 出版:[明治24年(1891)12月23日] 町田市立国際版画美術館蔵

 

7章 浮世絵をこえて―明治27~31年―
明治20年代後半以降、江戸城大奥の女性像は周延を象徴する画題となます。
「過去を描く」という姿勢がこの時期を貫く特徴となります。
一方で「今を描く」という視点も失っていません。『真美人(しんびじん)』は、現代に生きるさまざまな女性を描いた揃物です。 20231013
楊洲周延「時代かゞみ 慶長之頃」明治29年(1896)、町田市立国際版画美術館蔵

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楊洲周延 真美人 丗二 発行:明治30 年(1897)12 月25 日 町田市立国際版画美術館蔵

 

8章 浮世絵最後のきらめき―明治30~40年代―
明治37-38年(1904-05)の日露戦争で戦争錦絵に関する仕事を手がけた時期を最後に、周延はほぼ錦絵の制作を終えます。晩年には肉筆画の依頼にも多数応じ、かつて錦絵で得意としていた画題を応用した作例も残されています。
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楊洲周延 千代田之大奥 おたち退 発行:明治29 年(1896)3 月13 日 町田市立国際版画美術館蔵

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通期展示】楊洲周延「流鏑馬之図」明治43年(1910)、紙本金地着色、上越市立歴史博物館蔵


―HPの解説ー
天保9年(1838)、高田藩(現・新潟県上越市)江戸詰の藩士・橋本直恕の嫡男として誕生した楊洲周延は、若き日より歌川国芳や三代歌川豊国、豊原国周(とよはらくにちか)ら歌川派の絵師に師事し、画技を身につけました。しかし幕末の戊辰戦争では、江戸の高田藩士で結成された神木隊(しんぼくたい)として上野戦争に参戦。榎本武揚ら率いる旧幕府軍に加わり箱館戦争を戦うといった激動のときを過ごします。本格的に絵師としての活動を開始したのは40歳となる明治10年頃でした。刀を絵筆に持ち替えた周延は、優美な美人画から躍動感ある役者絵、戦争絵、歴史画、時事画題まで、まさに「明治」という時代を描き尽くします。

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2023.10.14

杉本博司 本歌取り 東下り

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杉本博司 本歌取り 東下り

会期 2023年9月16日(土)~11月12日(日) 
前期:9月16日(土)~10月15日(日) 後期:10月17日(火)~11月12日(日)
※会期中、一部展示替えあり

渋谷区立松濤美術館

本歌取りとは、本来、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌を作る手法のことです。作者は本歌と向き合い、理解を深めたうえで、本歌取りの決まりごとの中で本歌と比肩する、あるいはそれを超える歌を作ることが求められます。(HPから) 

本展は撮影可です。(条件あり)
(画像はクリックで拡大表示になります)

キャプションをじっくり読んでの鑑賞がお勧めです。
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狩野永徳筆 安土城図屏風 想像屏風風姫路城図 杉本博司 2022年 八曲一隻 ピグメントプリント 作家蔵
本作は、2022年の姫路市立美術館で開催された「杉本博司本歌取り一日本文化の伝統と飛翔」(2022年9月17日-11月6日)に際し制作された。杉本は、織田信長が狩野永徳に描かせ、ローマ教皇グレゴリウス十三世に献上した《安土城図屏風》を長年に亘って探しているという。安土城は天正4(1576)年に完成し、わずか6年で焼失した。同じく姫路の「本歌取り」展の際に撮影された「Noh Climax」の撮影場所である姫路城に早朝に足を踏み入れた杉本は、永徳の安土城図はこのような景色を描いたのではないかと想像した。安土城の築城から四半世紀も経たないうちに建て始められた姫路城は、おそらく同じスケール感で建てられたと考えた杉本は、《安士城図風》を思う縁として姫路城の姿を八曲屏風に仕立てた。(キャプションから)

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春日大社藤棚図屏風 杉本博司 2022年六曲一双 ピグメントプリント 作家蔵

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法師物語絵巻 室町時代(15世紀) 紙本彩色 小田原文化財団蔵

第一会場展示風景
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第2会場入り口
杉本文楽ほかの映像作品がみられます。
こちらも必見です。
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数理模型025クエン曲面:負の低曲率面 杉本博司 2023 ステンレス・スチール 作家蔵 

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宙景001 杉本博司 2023年 ピグメントプリント 杉本表具 作家蔵


松涛美術館の建築設計者、白井晟一の書も展示されています。
(杉本博司の表具です)
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潟嘆 白井晟一 昭和時代(20世紀後半) 杉本表具 紙本墨蹟 杉本博司蔵

第2会場展示風景
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スマホで撮った写真をまとめてみました。


―HPの解説ー
杉本博司(1948~)は、和歌の伝統技法「本歌取り」を日本文化の本質的営みと捉え自身の作品制作に援用し、2022年に姫路市立美術館でこのコンセプトのもとに「本歌取り」展として作品を集結させました。
本歌取りとは、本来、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌を作る手法のことです。作者は本歌と向き合い、理解を深めたうえで、本歌取りの決まりごとの中で本歌と比肩する、あるいはそれを超える歌を作ることが求められます。西国の姫路で始まった杉本の本歌取り展は、今回、東国である東京の地で新たな展開を迎えることから、「本歌取り 東下り」と題されました。本展を象徴する作品である《富士山図屏風》は、東国への旅中に、旅人が目にする雄大な富士山を描いた葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》を本歌とした新作で、本展で初公開となります。またこの他にも、書における臨書を基に、写真暗室内で印画紙の上に現像液又は定着液に浸した筆で書いた《Brush Impression》シリーズなど、本展は新作を中心に構成される一方、中国宋時代の画家である牧谿の水墨画技法を本歌取りとした《カリフォルニア・コンドル》など、杉本の本歌取りの代表的作品も併せて展示します。さらに、室町時代に描かれたと考えられる《法師物語絵巻》より「死に薬」を狂言「附子」の本歌と捉え、その他の8つの物語と共に一挙公開致します。
現代の作品が古典作品と同調と交錯を繰り返し、写真にとどまらず、書、工芸、建築、芸能をも包み込む杉本の世界とその進化の過程をご覧ください。


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2023.10.10

横濱ジャズプロムナード2023に行ってきました。

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諸事情で、10月8日(日)の午後短い時間でしたが楽しんできました。
コロナ禍前は毎年行っていましたが、
その後は今年が初めてでした。

ホール公演が大幅にが減少ですね。
公演も概ね、12時から17~18時の間でした。(有料ホール、ジャズクラブ公演は別)
何よりもフリーパス(缶バッチ購入で各会場入場)の販売がなくなりました。

今回の開催規模です。
今年で30周年となる今年、
国内外のプロからアマチュアまで参加するミュージシャンは、プロが39人、アマチュアが1684人、パレードに23人で、総勢1746人が演奏する。
ホールライブは、横浜赤レンガ倉庫関内ホール店、ストリートで演奏が楽しめる街角ライブは17会場で演奏が行われる。
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(画像はクリックで拡大表示になります)

それにしても、みなとみらい地区の変貌の速さ・・・
三連休中のイベント数の多さ、歩くのに疲れるほどの人混み。
レンガ倉庫地区では、ラグビーW杯パブリックビューイングも、

来年の横濱ジャズプロムナードのための予行演習にはなりましたが・・・・

傘をさすほどではないですが、
小雨模様だったので、あまり写真・動画は撮りませんでした。
少しの写真・動画ですが、まとめてみました。


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2023.10.07

うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展

うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展

会期 2023年7月22日(土)~10月9日(月・祝)

東京都美術館

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(画像はクリックで拡大表示になります)

―HPの解説ー
こどもから大人まで楽しめる、ちょっと怖くて懐かしい展覧会の「はじまり、はじまり」!
本展出品作家である荒木珠奈(1970年-)は、へんてこなかわいらしさとゾクッとする感覚が混ざり合った世界観が魅力の作家です。光と影、昔話、家や舟といった物語を想起させるようなモチーフを用いて、私たちの心の底にある懐かしい感覚や感情、記憶を揺さぶりながら、日常を越えた非日常の世界へと誘う作品を数多く発表してきました。
本展では、これまでに発表された詩情豊かな版画や参加型インスタレーションに加えて、本展のために新しく、開催地である「上野の記憶」に着想を得た大型のインスタレーション作品を制作。美術館の地下空間に、日常と非日常の境界を行き来するような不思議な体験を作り上げます。物語性あふれる作品がもたらす鑑賞体験を通じて、一人ひとりの日々の暮らしのかけがえのなさを見つめます。
会期中には、幅広い年齢を対象に、作家による造形ワークショップやアート・コミュニケータとの鑑賞プログラムなどを多数実施します。
この夏、東京都美術館の地下空間で、まるで絵本を1ページずつめくっていくように、日常と非日常の境界を行き来する不思議な旅をしてみませんか?

展覧会の構成は以下の通りです。
第1章 旅の「はじまり、はじまり」
第2章 柔らかな灯りに潜む闇
第3章 物語の世界、国境を超える蝶
第4章 うえののそこ(底)を巡る冒険

この展覧会は一部の作品を除いて撮影可です(条件あり)



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2023.10.04

9月花散歩 2023

今年の9月は猛暑日が続きました。
8月は、蓮・向日葵の大ぶりの花が夏を華やかに飾りましたが、

9月になると群生の蕎麦畑に白い花が咲き始め、今が満開。
秋の花も、少しずつ開花しています。

この暑さでなのか、野鳥たちは何処へ?
カワセミを夕方に2~3度見かけた程度で、散歩の楽しみが減ってしまいました。

9月にスマホで撮った写真と動画をまとめてみました。


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