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2017.08.30

第157回芥川賞受賞作「影裏」(沼田真祐著)を読んでみました。

201709

芥川賞受賞作が掲載されている文藝春秋はもう何十年も買っていますが・・・最近の受賞作は最後まで読むことが少なくなりました、数ページでリタイア。

受賞作ですから、最後まで読めば「なるほど~」とある程度の読後感は得られるには違いないのですが・・・
単に、読むことに根気がなくなっているのかな~

今回の受賞作「影裏」(沼田真祐著)は読み終えましたよ。
拙い感想文ですが以下に記してみます。

読書家でもないものにとって、小説は読み始めの導入部が重要ですね。
この小説は情景描写が(風景描写が)上手いですね。
景色が頭の中に浮かんできます。
こうなると物語の先々に興味が湧いてきます。

導入部はこうです。

 勢いよく夏草の茂る川沿いの小道。一歩踏み出すごとに尖った葉先がはね返してくる。かなり離れたところからでも、はっきりとそれとわかるくらいに太く、明快な円網をむすんだ蜘蛛の巣が丈高い草花のあいだに燦めいている。
 しばらく行くとその道が開けた。行く手の藪の暗がりに、水楢の灰色がかった樹肌が見える。
 もっとも水楢といっても、この川筋の右岸一帯にひろがる雑木林から、土手道に対し斜めに倒れ込んでいる倒木である。それが悪いことにはなかなか立派な大木なのだ。ここから先は、この幹をまたいで乗り越えなければ目的の場所までたどり着けない。
 近ごろではわたしは、それこそ暇さえあればここ生出川に釣りをしに出掛けることに決めている。

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今野は岩手県はじつに樹木が豊富な土地だと夏が来て改めて思う。


今野は親会社から、岩手の今の会社に異動してきていた。
この会社で物流課の日浅と知り合いになる。
日浅と二人で釣りに、山菜採りに、ドライブにと一緒によく遊んだ。
日本酒が好きで酒量も同程度。
日浅は幼いころに母親を亡くし、父親と暮らしていて、東京で大学生活を送った後郷里に戻っていた。

(釣り、川辺の状況が丹念に綴られた行きます)

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知り合ってから一年数か月が過ぎ、雪深い2月の朝、出勤途中に後から追いついた同僚に突然、日浅が退職したと知らされる。
自前の携帯を持たない日浅との連絡手立てを失った今野は、同行者を失い渓流釣りの解禁日が過ぎても出かける気になれずにくすぶっていた。

そんな日々を送るなか、「偶然この近辺回ってたもんでよ。挨拶がてらちょっと寄ってみた」と日浅が訪ねてくる。
あれから4か月が経っていた。
話を聞くと、なんと退社2日後に再就職をしていた。
「互助会」の勧誘の仕事で優秀な成績を収めているようだった。
会話は20分程度で終わり日浅は迎えに来た同僚の車に乗って帰っていった。

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今野は、日浅からお礼にと夜通しの釣行に誘われる。「こちらで全部用意するから手ぶらで来い」と。
場所は、日浅の顧客の持つ?川辺の掘っ立て小屋(バルコニー)
しかし、この日、神経質にいら立つ日浅に、今野は戸惑ってしまう。
この日ばかりは、酒を飲むことを今野は頑なに拒んだ。
意地になっていた。
日浅は後から来た顧客の男と酒を盛んに酌み交わす。

この日の朝には、妹からのメールが舞い込んだり、2年間付き合った性別適合手術(SRS)の施術をすると公言していた和哉から連絡が入ったりして、時間がとられる。

(このあたりで著者は今野の人となりを紹介しようと意図している?)

(お礼の意味は・・・)
8月の終わりに日浅は突然また現れたのだ。
「すまねえが、今野よ」
「互助会、入ってくんねえだろうか、一口足りねえんだ」
今野は日浅の指示通りに三枚の書類のそれぞれの箇所にそれぞれの必要事項を記入した。

今野は、日浅が十日前には切り出せずに、手ぶらで帰ったことに思いを馳せ自分の鈍さが呪わしかった。

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そしてあの震災が襲った。
盛岡は内陸にあり、おおきな被害はなかったのだが、家族や知人から、また思いもよらぬ同級生から安否の確認連絡が舞い込む。

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連休も明けて、辛い1日が終わり家に戻ろうと駐車場で車に乗ると、パートの西山さんに呼び止められた。
「これからちょっとだけ、お時間もらえないよね」

お互いの車を少し走らせてログハウス風のベーカリーに車を止めて店に入った。
「課長死んだかもしれないね」津波で・・・(課長は当時の日浅のあだ名)
「課長が互助会の仕事しているのって、今野さん知ってた?」
西山さんは、日浅に30万円貸していたというのだ・・・・・

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今野は日浅の消息を求めて、様々な土地を巡り歩くのだがその足取りは掴めない。
意を決して父親を訪ねることにする。
そして、父親との会話は意外な展開に・・・・

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偉そうに言わせてもらえば、よくかけた小説だと思いました!
情景描写は上手いし、ところどころに、意外性を持ったエピソードを 導入して次なる筋書きへの期待を抱かせて最後まで読ませてくれます。
ただ、この物語を書くにあたっての「どうしても伝えたかった」意図が何なのかは残念ながら見いだせなかった。

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